定年退職までに準備すべき老後資金はいくら必要? FPが解説

Q.そろそろ、老後資金の準備を始めたいと思います。退職するときまでに、いくらくらい準備する必要がありますか?(40代/男性/会社員)

老後の資金準備のイメージを考えてみる事が大切

まず、老後の資金準備のイメージから考えてみましょう。総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)―平成27年平均速報結果の概況―」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1ヶ月あたりの支出は約27.5万円です。

一方で、これをまかなう社会保障給付(公的年金等)は、同じ統計データによると月額約19.5万円。この差額の約月8万円を会社の企業年金や自分の貯蓄等でまかなっていくことになります。もちろん、これはあくまで平均的なデータで、自分がどんな老後を送りたいかで必要金額は変わりますので、なるべく早めに何歳まで働くかも含めて、どんな老後を送りたいか、どの程度生活費が必要かを考えておく必要がありますね。

ちなみに、老後の1ヶ月当たりの生活費は、今の支出を基準として、食費や被服費など項目ごとに老後に減る支出、増える支出をイメージしながらおよその金額を見積もると良いでしょう。

退職までに準備しておく費用はいくら?

では、具体的に退職するときまでにいくら準備しておけばいいのか、考え方を見てみます。

<Aさん夫婦の例>
・妻40歳(専業主婦)、夫40歳
・60歳で定年、退職金予定額:1,500万円(※1)
・住宅ローンは定年時で完済
・公的年金額 夫婦で23万円(65歳から支給)(※2)
・公的年金以外の収入はなし:60歳以降の予定生活費 28万円(※3)

(※1 退職金予定額はあくまで目安です。詳細はご自身の会社の規約等で確認してみることをお勧めします)
(※2 公的年金額の詳細は、ご自身に送られてくるねんきん定期便で概算を把握してみてください)
(※3 予定生活費は、現在の支出を参考にして算出してみてください)

まず、60~65歳までの無収入期間では1,680万円(28万円×60ヶ月)が必要です。 次に65歳以降の生活ですが、希望通りの老後を送るために65歳までにいくら準備しておく必要があるか計算します。毎月の収入が23万円、支出が28万円ですから、不足額は月額5万円。仮に65歳から余裕を持って25年間(※4)では、5万円×25年×12ヶ月=1,500万円を準備しておく必要があります。

(※4 平成27年時点の65歳の平均余命:女性24.31年、男性19.46年より算出)

つまり、このケースでは、1,680万円+1,500万円-退職金1,500万円=1,680万円を60歳までに準備しておくと安心、ということになりますね。

では、これを40~60歳までの現役時代20年間で用意するには、今から毎年いくら積み立てれば良いのでしょうか? (1%の複利運用で積み立てると仮定) ここでは、「減債基金係数」という係数を使って考えます。

1,680万円×0.0454=762,720円

つまり、毎月約63,560円もの積み立てを老後のためにする必要があることがわかります。

【減債基金係数】

年/利率 1% 2% 3% 4%
5年 0.1960 0.1922 0.1884 0.1846
10年 0.0956 0.0913 0.0872 0.0833
15年 0.0621 0.0578 0.0538 0.0499
20年 0.0454 0.0412 0.0372 0.0336

もし、今の時点でこの積立額が難しいのであれば、
(1)運用利率を上げる
(2)現在の家計収支の見直しを図って、積み立てられる金額を増やす
(3)老後の必要生活費を見直して目標金額を下げる
(4)60歳以降も働いて積立期間を延ばすと同時に、収入を増やす
(5)配偶者が働き収入を増やす(厚生年金に加入すれば公的年金も増加します)
などの対策を考える必要が出てきますね。

仮に、2%で運用できれば必要積立額は約57,000円に減りますし、60歳~65歳まで働いて、もし月額10万円程度でも収入があれば、そもそも退職時までに準備しておく必要がある金額が、1,680万円-10万円×12ヶ月×5年=1,080万円と劇的に変化します。

そのうえ、企業に勤めれば、厚生年金保険料を支払うため、将来の年金も増えます。

幸せの基準はそれぞれ異なりますし、ライフプランも年々変化しますので、なかなか予定通りにはならないかもしれません。
将来の安心をつかむためには、まず自分がどんな暮らしがしたいのかを明確にして、自分の理想の暮らしをするために必要なマネープランを立て、2~3年ごとに見直し、修正をしていくことが重要なポイントといえるでしょう。

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(最終更新日:2019.10.05)