生涯で最も大きな買い物と言えるのが住宅です。金額が大きいだけに、わずかな金利の差が、大きな返済負担の違いにつながります。金利を引き下げる方法としては、借り換えが思い浮かぶ人は多いと思いますが、借り換え以外にも金利を引き下げる方法があるのをご存知でしょうか。それが金利交渉です。ここでは借り換えと金利交渉との返済額削減効果を比較検証するとともに、金融機関との交渉の方法やタイミングについてご説明します。
住宅ローンの金利は交渉で引き下げることができる
住宅ローンの借り入れ、もしくは借り換えを決めたものの、「本当にこれでいいの?」と考えて私のところに相談にいらっしゃるお客さんがいます。
そんな時、私は必ず「金利の交渉をしましたか?」とお聞きするのですが、ほとんどのお客さんは一瞬、何を言われているのかわからないという表情をして、「そんなことができるのですか?」と言われます。
結論から申し上げれば、住宅ローンの金利交渉は可能です。むしろ、生涯で1,2の高額な買い物をするのですから交渉はやるべきだと言えるでしょう。
金利交渉は、「新たに借り入れする住宅ローン」「すでに借り入れしている住宅ローン」のどちらについても可能ですが、ここでは、後者についてご説明します。
優遇金利に注目する
住宅ローンの金利には、「基準金利」と「優遇金利」があります。基準金利とは文字通り、その金融機関の基準となる金利です。メーカーでいえば、「メーカー希望小売価格」に当たると言えばわかりやすいでしょうか。金融機関によっては、「店頭金利」と呼んでいるところもあります。
これに対して、優遇金利とは一言で言えば割引後の金利で、これが実際に融資を行なう時の金利となります。実は、金融機関が住宅ローンの貸し出しに積極的になっている現在、基準金利のまま融資をしているところはほとんどないと言ってもいいでしょう。ちなみに、優遇金利は適用金利とも呼ばれます。
優遇金利の引き下げ幅は、金融機関の判断によって異なりますが、一定の条件を満たせば1.5%程度、もしくはそれ以上に優遇されることもあります。たとえば、ある金融機関の場合、変動金利型の基準金利は2.475%ですが、優遇金利は0.625〜0.975%となっています(自己資金20%以上の場合)。
金融機関との金利交渉においては、この優遇金利を意識することが大切です。
現在融資を受けている金融機関で金利交渉をする
では、具体的にどのように交渉すればいいのでしょうか。
あまり難しく考える必要はありません。単刀直入に「金利を引き下げてほしい」と伝えてください。交渉の相手は、融資を受けた当時の担当者がいいのですが、金融機関は転勤が多いので、まずは住宅ローン担当の窓口に連絡をいれてみましょう。
実際の金利交渉は、上で述べたように優遇金利を意識する他、他行の金利も引き合いに出して行いましょう。
たとえば、A社で、3年前に全期間固定型の住宅ローンを2%で借りたとしましょう。
ところがA社では、現在、全期間固定型の優遇金利を1.05%に設定しています。その場合、現在の優遇金利である1.05%を適用してもらえるよう交渉するのです。
また、B社で借り換えをすれば、同じ全期間固定型を1.01%で借りられる場合には、「借り換えを考えている」ことを伝えた上で、同じ1.01%、もしくはそれよりも低い金利にしてもらえるよう交渉してみましょう。
金利の引き下げ交渉をする前に、他の金融機関で融資の事前審査を受けておけば、現在借り入れをしている金融機関にプレッシャーをかけることもできます。
金利の引き下げには再審査が必要
金利の引き下げには再審査が必要になります。そのため、これまで滞りなく返済をしていることはもちろんのこと、収入が減っていないか、転職して勤務先が変わっていないかといった確認が必要になります。そのため、健康保険証や源泉徴収票などの提出を求められるでしょう。
金利引き下げにあたっては、手数料がかかる場合もありますが、かかったとしも少額です。
ただし、固定金利を変動金利に変更するなど返済の条件を変える場合は、同じ金融機関内の借り換えの扱いとなり、所定の手数料が必要となる場合があります。金融機関に事前に確認しておきましょう。
借り換えと比較検討してみる
住宅ローンの金利を引き下げるためには、金融機関との金利引き下げ交渉と並んで、借り換えも有効な手段です。そこで、借り換えをした場合と、金利の引き下げをした場合とで、どちらがお得といえるかを検証する必要があるでしょう。
借り換えの場合、別の金融機関で新たな借り入れをすることになります。そのため、融資審査を受けなければなりませんし、事務手数料などの諸費用が必要です。また、現在、借り入れている住宅ローンの繰り上げ返済にかかる諸費用も必要となります。
こうした借り換えに必要な費用を含めて、実際にシミュレーションをして借り換えと、金利交渉の効果を比較してみましょう。
まず、借り入れの条件は以下の通りとします。
【借入期間】35年 【金利タイプ】全期間固定型
【金利】1.5% 【融資額】3,000万円
【毎月の返済額】91,855円(ボーナス月返済なし)
【返済総額】約3,857万円(うち利息分:約857万円)
今回は、借り入れから10年が経過した時点で、金利交渉を行った場合、借り換えを行った場合のそれぞれについて、比較してみましょう。
ちなみに、10年経過した時点での、借入残高は約2,300万円、残りの返済期間:は25年間となります。この状況で、交渉して金利が1.0%になった場合[1]、借り換えをして金利1.0%になった場合[2]、同じく借り換えで金利が1.35%になった場合[3]について比較しています
(図表)金利交渉した場合と借り換えした場合の比較
交渉 借り換えなし |
金利交渉した場合[1] | 借り換えした場合[2] | 借り換えした場合[3] | |
金利 | 1.5% | 1.0% | 1.0% | 1.35% |
毎月返済額 |
91,855円 |
86,680円 (8,175円) |
86,680円 (8,175円) |
90,373円 |
年間返済額 |
1,102,260円 |
1,040,160円 |
1,040,160円 |
1,084,476円 |
今後の総返済額 |
約2755万円 |
約2,600万円 |
約2,600万円 (約155万円) |
約2,711万円 (約44万円) |
諸費用 | なし | 必要な場合でも少額 | 約50万円(※) | 約50万円(※) |
効果 | - | ◎ | ○ | × |
(※)諸費用額は借入額によって変わります。また金融機関によっても異なりますが、ローン残高が約2,300万円の場合であれば、約50万円の諸費用がかかります。
また借り換え前に一括で保証料を支払っていた場合、保証料が一定額戻ってくる場合もあります。
融資を受けている金融機関と交渉して、金利を0.5%下げることができれば、約155万円の返済額軽減を図ることができます。
一方、借り換えの場合は、同じく金利が1.0%になれば、約155万円の返済額削減を図れますが、諸費用として約50万円が必要になるので、差し引き約105万円の軽減効果となります。
また、借り換えをしたとした場合でも、あまり金利を引き下げられなかった場合には、返済軽減額よりも借り換えの諸費用のほうが大きくなってしまう場合もあります。
諸費用の負担を考慮して、金利交渉と借り換えではどちらのメリットが大きいかシミュレーションしてみることをおすすめします。
交渉のタイミングはいつがおすすめか
交渉のタイミングとしては、期末にあたる3月と9月が狙い目といえるでしょう。金融機関には、住宅ローンの融資目標額があります。決算期に目標に達していないと問題になりますから、借り換えをされるくらいなら金利交渉に応じたほうがいいという判断をする可能性が高くなると考えられます。
また、金融機関によっては、この時期に販促のために金利優遇のキャンペーンを実施するところもありますので、チェックしてみてください。
金利交渉を成功させるには、融資を受けている金融機関の優遇金利を調べて、その水準まで引き下げることを目標にするのが一番の近道といえるでしょう。
同時に、先ほどもお話したように、他の金融機関で融資の事前審査を受けて、それを交渉の材料にするのも手です。それでも金利の引き下げに応じてもらえなかったら借り換えを実行しましょう。
また、希望の水準まで金利を引き下げてもらえなくても、借り換えをした時の諸費用を考慮すると、借り換えをする以上の効果が出る場合もありますので、効果をシミュレーションした上で交渉に臨むことをおすすめします。
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(最終更新日:2019.10.05)