子どもの教育資金準備のために、学資保険に入るべき?

Q.娘が来年、幼稚園に入園します。教育資金の準備もしなくてはと思うのですが、学資保険に入るべきでしょうか?(30代前半/女性/専業主婦)

学資保険は本当に必要?

必ずしも学資保険を利用する必要はありませんが、教育資金の準備は、早くから始めたほうが家計に無理なく行えるでしょう。学資保険を利用する場合は、商品によって商品性や保険料が異なるので、保険料を試算した上で、比較検討されるとよいでしょう。

オール私立なら2,000万円? 教育資金準備は早めにスタートを

「教育資金」は、人生で最も多くのお金を必要とする支出のひとつです。下記の表1、表2のデータをもとに計算してみると、小学校~高校まですべて公立、大学は国立大に進学した場合でも700万円以上かかります。小学校~大学まですべて私立(大学は理系)だった場合には、2,000万円以上。さらに大学進学時に親元を離れて一人暮らしするなら、月10万円の仕送りをしたとして、10万円×12ヶ月×4年=480万円の予算も考えておかねばなりません。

<表1:学習費の総額>

  幼稚園 小学校 中学校 高等学校(全日制) 合計
公立  22万2,264円  32万1,708円  48万1,841円   40万9,979円 約144万円
私立  49万8,008円 153万5,789円  133万8,623円 99万5,295円 約437万円

※文部科学省「子どもの学習費調査」より。
「学習費」は平成26年度の年額。「学習費」には、「学校教育費(授業料、入学金、学用品等)、「学校給食費」「学校外活動費(習いごと、塾、スポーツ文化活動等)を含む。

<表2 :大学の初年度納付金>

  入学料 授業料 施設設備費 合計
国立大 ※1 28万2,000円 53万5,800円 - 81万7,800円
私立大文系 ※2 24万2,579円 74万6,123円 15万8,118円 114万6,819円
私立大理系 ※3 26万2,436円 104万8,763円 19万34円 150万1,233円

※1 文部科学省令による標準額。
※2 文部科学省「平成26年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査

ただ、教育資金はお子様の年齢によって進学時期(お金が必要になる時期)が決まってくるので、計画的に準備しやすい資金でもあります。大学進学を目前に控えて数百万円以上の教育資金を準備するのは大変ですが、月2、3万円ずつコツコツ…なら、始められませんか? もっとも費用のかかる大学進学時に向けて月2万円ずつ15年間貯めていけば、元本だけで360万円になります。少しずつでも早めにスタートするのが、教育資金を無理なく確実に貯めるコツです。

貯蓄と保障を兼ねた「学資保険」

検討されている「学資保険」は、一般に、被保険者をお子様、契約者が親という形で加入する保険で、大学進学時などに学資金や祝い金が受け取れる保険です。万一、契約者である親が亡くなった場合でも学資金は契約どおりに受け取れますが、それ以降の保険料支払いは免除されるしくみになっています。さらに、お子様の入院保障等をセットできるタイプもあります。
学資金や祝い金が受け取れる時期は、商品によってさまざまです。大学進学時期である17歳、18歳時に満期学資金を一時金で受け取るタイプのほか、大学在学中の4年間に渡って毎年学資金が受け取れるタイプ、小学校・中学校・高校の入学時にも祝い金が受け取れるタイプなどがあります。

なお、学資保険に限らず、多くの保険商品は中途解約して戻ってくるお金(解約返戻金)が払込保険料を割り込む場合が多くあります。したがって、保険料が家計に対して高すぎたり、大きな支出が予想されたりして中途解約する可能性があるなら、学資保険よりも、預貯金等で準備したほうがよいでしょう。

早く保険料を払い終えれば、返戻率は高くなる

学資保険の保険料は、契約者である親と、被保険者である子のそれぞれの年齢や性別で異なってきます。保険金額(受け取る学資金額)が同じであれば、年齢が高くなるほど保険料が高くなり、払った保険料に対する受け取れる保険金額の割合(返戻率)は低くなります。払込保険料には、死亡保障や医療保障(入院特約等が付加されている場合)に対する費用も含まれるので、保障部分が手厚いほど、返戻率は低くなります。商品や加入年齢等によっては、払込保険料総額よりも受け取れる学資金等の合計額のほうが少ない場合もあります。保険会社のホームページには、生年月日を入力して保険料の試算できるコーナーもあるので、試算されるとよいでしょう。

なお、一般に「まとまった金額を長く運用できる」ようにすれば学資保険の返戻率は高くなります。たとえば、多くの学資保険は17歳や18歳までが保険料払込期間となっていますが、保険料を全期前納したり、保険料払込期間が「12歳まで」「10年間」といったタイプを選択したりすれば、返戻率は高くなります。学資金・祝い金の受取り方も、何度も祝い金が受け取れるタイプよりも、まとめて満期学資金を受取るタイプのほうが、運用期間が長くなり、返戻率は高くなります。

保険で準備するなら、終身保険の活用も

保険で教育資金を準備するなら、学資保険でなく、親を契約者・被保険者として加入する終身保険を活用する方法もあります。終身保険は、一生涯の死亡保障を準備できる保険料が高めの保険ですが、保険料払込終了後に解約した場合には、まとまった金額の解約返戻金が受け取れます。この特徴を利用して、保険料払込期間をお子様の進学時期に合わせて15年といった短期間に設定しておき、進学時に解約すれば、解約返戻金を教育資金に充てることもできます。

比較検討は、同じモノサシを使って

教育資金の準備には、保険商品のほか、着実に資金を準備でき中途解約時にも元本割れしない預貯金の積み立て、価格は変動するが収益性の高い投資信託の積み立てなども考えられます。
それぞれの金融商品の特徴を理解した上で比較検討してみてください。一部は大学進学資金準備に学資保険を利用し、一部は積立貯蓄で貯めて急な資金需要にも備え、一部は投資信託積立で殖やすことを考えて…というように、組み合わせて利用されてもよいと思います。

なお、金融商品どうしで「いくら増えるか」を比べるときは、同じモノサシを使うように注意しましょう。広告等で同じように「%」で示されていても、学資保険などの「返戻率」(戻り率や給付率と言われることも)と、「利率」や「利回り」は、それぞれの数字の示す意味が違います。

<表3:利率・利回り・返戻率>

  金融商品の例 意味・計算式
利率 預貯金、債券等 元本に対して支払われる利子の割合を年(%)で表記したもの
利回り(年平均利回り) 預貯金、債券、投資信託等 運用期間中に受け取れる利子等の合計を1年あたりに換算したものの元本に対する割合
(収入合計÷運用年数)÷当初元本×100(%)
返戻率 学資保険、養老保険、個人年金保険、終身保険等 その保険から受け取れるお金(保険金、解約返戻金等)の払込保険料総額に対する割合
返戻金÷払込保険料総額×100(%)

たとえば、元本が190万円、17年後の収益+元本が200万円の金融商品の、17年後の返戻率は約105.2%、利回りは約0.31%になります。「105.2」のほうが「0.31」よりも、お得な印象を受けますよね。利回り等はシミュレーションできるHPもたくさんあります。金融商品と保険商品を比較する際には、試算し直して、おなじモノサシで比較してみてください。

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(最終更新日:2019.10.05)