家を売却する場合、住宅ローン残高や抵当権などはどうなるの?

住宅ローンは何千万円もの金額を30年、35年といった長い期間をかけて返済していくものです。そのため、返済中に住み替えや離婚といった理由から、家を売却する必要に迫られることもあるでしょう。ですが、そもそも住宅ローンが残ったままの家を売却できるのでしょうか。住宅ローンの残高や抵当権はどうなるのでしょうか。住宅ローンが残った家を売却する際に知っておくべきことをご説明します。

住宅ローンが残っていても家は売れる

自宅を売却しようと思ったとき、気になるのは「残った住宅ローンはどうなるのか」ということではないでしょうか。ほとんどの人が、自宅を購入する際には金融機関から住宅ローンを借り入れていることと思います。自宅を現金で購入した、何十年も住み続けてローンの返済が完了した、繰り上げ返済をして返済を終えた…など、住宅ローンが残っていない方であれば問題ないのですが、ローンの支払いが残っている場合は、その状態で売却できるのか悩んでしまう方もいらっしゃるでしょう。
結論としては、住宅ローンが残った状態で自宅を売却することは可能ですし、何も特別なことではありません。むしろ住宅ローンの支払いが残っているまま売却することの方が、今は普通だと言えます。一般的に住宅ローンは数千万円という金額を、最長35年という長期で借り入れるものなので、住み替えや離婚といった様々な理由から返済の途中で自宅を売却することがあっても何も不思議なことではないからです。
ただし、住宅ローンの残った家を売却するには、条件があります。それは、“住宅ローンを全額返済すること”です。「ローンが残っていても売却できると言ったのに、話が違うのでは?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。でも、安心してください。一体、どういうことなのか、これからご説明していきましょう。

売却するためには「抵当権」の抹消が必要

まず、キーワードとなるのが「抵当権」という言葉です。不動産を購入するために住宅ローンを組むと、金融機関はその不動産に抵当権を設定します。抵当権とは、住宅ローンを貸し出す時に家や土地などに設定する担保権のことです。簡単に言ってしまえば、住宅ローンを借り入れた人が、万が一ローンを返済できなくなったときには、借金のカタにその不動産を取り上げることができる権利のことです。実際、返済が滞ったときには、その不動産は競売にかけられ、その売却代金はローンの返済に当てられることとなります。
仮に、住宅ローンが残ったまま自宅を売却すれば、抵当権は残ったままです。もし、あなたが買主だったとしたら、前の持ち主の抵当権が残ったままの家に住みたいと思うでしょうか? きっと答えはNOだと思います。なぜなら、前の持ち主がローンの支払いを滞納してしまったら、その家は担保として取り上げられてしまうからです。
それに、前の持ち主の抵当権が残ったままでは、買主がその家を担保にして自分の住宅ローンを借りることができなくなってしまいます。少し難しい言い方になりますが、一般的に銀行は住宅ローンを融資する際、対象となる不動産に第1位の抵当権を設定することを条件としています。つまり、すでに抵当権が設定された不動産を担保にして住宅ローンを借りることはできないのです。
そこで実際には、不動産を売却する際に売主と買主との間で取り交わす売買契約書には、「売主は、本物件の所有権等移転の時期までに、抵当権等の担保権及び賃借権等の用益権その他買主の権利行使を阻害する一切の負担を消除する」(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会の標準売買契約書より抜粋)といった一文が入っているのが一般的です。
これは簡単に言えば、「金融機関から住宅ローンを借りた際に設定された抵当権は、買主に引き渡すまでに抹消させなければなりませんよ」ということです。そのため、売主は買主に引き渡す時点までに設定されている抵当権を抹消しなければなりません。そして、抵当権を抹消するためには、借りている住宅ローンを全額返済する必要があるのです。

抵当権を抹消するには住宅ローン完済が必要

では、住宅ローンを全額返済するにはどうしたらいいのでしょうか。一般的な取引では、自宅の売却代金を住宅ローン返済に当てることになります。例えば、住宅ローンが3,000万円残った自宅を4,000万円で売却できた場合を考えてみましょう。この場合、売却で得た4,000万円のうち3,000万円を住宅ローンを借りている金融機関に返済し、その日のうちに抵当権抹消の登記を行います(この手続きは一般的に司法書士へ依頼します)。
そして、買主が住宅ローンを借りてその不動産を買った場合は、やはり同日中に新たな抵当権をその不動産に設定します。余談になりますが、ここではこの登記の順番が大切で、不動産の決済当日は、①売主の抵当権を抹消、②売主から買主へ所有権を移転、③買主の借りた銀行名義で抵当権を設定、という順番で手続きが行われます。

売却にかかる費用を知っておこう

厳密には、自宅を売却する場合には諸費用がかかるため、売却代金から諸費用を引いた残りの額が、残っている住宅ローンの額を上回るかどうかで、売却代金でローンを完済できるかどうかが決まります。そこで、売却にかかる費用を知っておきましょう。
(1)仲介手数料
自宅の売却では不動産会社に仲介を依頼することが一般的です。売買が成立し、売買代金の受け取りをした後、仲介をした不動産会社に仲介手数料を支払います。仲介手数料は、400万円以上の物件であれば、通常、物件価格の3%+6万円(税別)を支払います。
(2)抵当権抹消登記費用
自分が借りていた住宅ローンで設定された抵当権を抹消する際、その抵当権抹消登記を行いますが、その費用が必要になります。一般的には司法書士にその手続きを依頼しますが、費用としては数万円程度になります。
(3)金融機関への早期返済手数料等
借りていた住宅ローンに特約条項がある場合に発生する費用です。例えば、住宅ローンを借りてから5年以内に融資の一部または全部を返済する場合、返済する金額に対して1~2%の手数料が発生するといった特約が付されている場合があり、その特約に該当する場合には費用が発生します。また、こうした特約がなくても一括返済の手数料が発生する場合もあります。金融機関によって対応が異なりますので、ご自身が契約している金融機関に問い合わせてみてください。
一方、売却時に買主から受け取るお金もあります。それは、固定資産税・都市計画税の精算金です。不動産にかかる固定資産税や都市計画税は、税法上、その年の1月1日時点の所有者が1年分を支払うことになっています。ですが、実際の取引では、買主に所有権が移転した日(決済日)以降の固定資産税や都市計画税については、日割り計算をして買主が売主に支払うことが慣例になっています。

抵当権を抹消するには住宅ローン完済が必要

では、住宅ローンを全額返済するにはどうしたらいいのでしょうか。一般的な取引では、自宅の売却代金を住宅ローン返済に当てることになります。例えば、住宅ローンが3,000万円残った自宅を4,000万円で売却できた場合を考えてみましょう。この場合、売却で得た4,000万円のうち3,000万円を住宅ローンを借りている金融機関に返済し、その日のうちに抵当権抹消の登記を行います(この手続きは一般的に司法書士へ依頼します)。
そして、買主が住宅ローンを借りてその不動産を買った場合は、やはり同日中に新たな抵当権をその不動産に設定します。余談になりますが、ここではこの登記の順番が大切で、不動産の決済当日は、①売主の抵当権を抹消、②売主から買主へ所有権を移転、③買主の借りた銀行名義で抵当権を設定、という順番で手続きが行われます。

売却代金でローンを返しきれない場合は?

売却代金からこれらの諸費用を差し引いた金額が、手元に残る売却代金になります。では、この売却代金が住宅ローンの金額を下回ってしまう場合、つまり売却代金で住宅ローンを支払いきれない場合はどうすればいいのでしょうか。
例えば、3,000万円の住宅ローンに対して、手元に残る売却代金が2,800万円だった場合、差額の200万円については、預貯金などの自己資金で返済しなければなりません。それができない場合にはどこかから借り入れて不足分にあてることになります。親や親類、勤務先などからお金を借りることができれば安心ですが、それができない場合について考えてみましょう。
まず、自宅を買い替えるケースであれば、「買い替えローン」(「住み替えローン」という名称の場合もあります)を利用するという方法があります。これは、新たに購入する不動産の住宅ローンに、残った住宅ローンの金額を上乗せして借り入れることができる商品です。買い替えローンが利用できるかどうかは、売買のタイミングの問題も絡んでくるので、金融機関に相談してみてください。
もし、買い替えローンが利用できない場合、もしくは離婚による売却など買い替えの予定がない場合は、銀行やノンバンクなどから無担保融資を借りて補てんするしかなくなります。無担保融資を受けられるかどうかは、個人の信用によりますが、住宅ローンを組めるだけの信用がある人であれば、問題なく借りられると思われます。とはいえ、無担保融資は金利が高いため、長期の借り入れには適さない上、その後の生活費を圧迫することも考えられます。できるだけ無担保融資の利用は避けたいところです。
そのため、自宅を売却する際には、まずは査定を受けるなどして、どれくらいの価格で売却できるのかを把握しておきましょう。もし売却代金では住宅ローンが完済できないようであれば、不足する金額をどうやって確保するのか、その目途を立ててから売却すべきでしょう。また、どうしても売却しなければならない事情がある場合はしかたありませんが、そうでなければ売却しないで済む方法も同時に検討してみることをおすすめします。

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(最終更新日:2019.10.05)
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