近年、日本を訪問する外国人は増えており、なかには、日本で住宅を購入して暮らしたいと考える人が多くなりつつあります。しかしながら、そもそも外国人は日本で住宅を購入できるのでしょうか。また、外国人が日本の金融機関で住宅ローンを組むことはできるのでしょうか。ここでは、外国人が住宅ローンを組むための条件や、その審査内容などについてご説明します。
そもそも外国人は日本で家を買えるの?
近年、外国人観光客の増加が頻繁に話題になっています。事実として、外国人観光客の数は増え続けており、2019年には日本を訪れた外国人観光客は約3000万人を記録しました。
しかし、観光客だけが増えているわけではありません。出入国在留管理庁のデータによれば、日本に在留する外国人(就労や留学などで滞在している人、永住者など)の数も2020年には約290万人となりました。これほど多くの外国人が日本で生活していると、日本で家を購入して暮らしたいと考える人も多いでしょう。外国人は日本で家を買うことができるのでしょうか。
(参考記事:永住者ビザがなくても大丈夫⁉ 外国人が日本で住宅購入するには?)
実は国によって、外国人の不動産所有に対する規制は異なっています。たとえば、インドネシアでは外国人名義で不動産を購入することはできませんし、シンガポールやフィリピンでは、外国人は住居を購入することはできても土地を購入することはできません。
ですが、現代の日本では、外国人であっても日本人と同様に家を購入することができますし、土地の所有権も認められています。居住用であっても投資用であっても、購入の目的によって契約が制限されるようなこともありません。実際に、円安や東京オリンピック開催決定を背景に、多くの外国人が日本の不動産を購入したことをニュースなどで聞いてご存知の方もいるでしょう。
しかし、購入が認められていることと、実際に購入できるかどうかは別の話です。不動産を現金一括で購入できるだけの資金力があれば問題ありませんが、そうでなければローンを組んで購入資金を用意しなければなりません。そこで、外国人は住宅ローンを組むことができるのかという、もうひとつの問題が出てきます。
外国人は住宅ローンを組めるのか
実は現在のところ、日本の金融機関のほとんどは外国人が住宅ローンを組むための条件として、「永住権」を持っていることを挙げています。なかには、外国人専用の住宅ローンを扱っている金融機関もありますが、やはり永住権を持っている人を対象としているものがほとんどです。
ちなみに、私が多くのお客さまにおすすめしている全期間固定金利型の住宅ローンである【フラット35】も、外国人の場合は永住権を持っていることが借り入れの条件となっています。
(参考:外国籍の方でも申込みができる。 ARUHIフラットのメリットとは)
では、なぜ金融機関は永住権を借り入れの条件にしているのでしょうか。それは、住宅ローンが何千万円という非常に大きな金額を、30年とか35年といった長期に渡って貸し出す商品だからだと考えられます。
永住権を持っていない外国人の場合、今は日本で暮らしていても、数年後には帰国してしまうかもしれません。そうなると、住宅ローンの返済が滞る可能性が高く、金融機関は大きなリスクを抱えることになってしまいます。そうしたリスクを回避するため、ほとんどの金融機関は永住権を持っていることを条件としているのでしょう。
実際に、私が金融機関に勤める知り合いに問い合わせたところ、永住権を持たない外国人の場合、保証会社による保証がつけられないため住宅ローンの融資は行っていないという回答を受けました。
外国人向け住宅ローンはどんな審査があるのか
しかし、逆に言えば、永住権を持っている外国人であれば、日本人と同じ条件で住宅ローンを組むことができます。一般的な住宅ローンの場合、永住権以外に外国人にだけ特別に設けられている審査基準はありません。一部の金融機関が扱っている外国人専用の住宅ローンであっても、審査の内容は同じと考えていいでしょう。
審査内容の中心になるのは、「申し込み者が確実に返済をしていけるのかどうか」という点です。具体的には、年収に占める返済額がどれくらいあるかという「返済負担率」はもちろん、他の借入金の状況、勤続年数(3年以上が目安)や勤務形態、経営者や個人事業主であれば事業の内容(3期分の決算書や確定申告書は必須です)などが審査されます。
また、外国人専門住宅ローンなどの場合、申し込み条件の中に「税込み年収200万円以上」などと明記されている場合があります。
なお、日本語でのコミュニケーションが取れることを条件にしている金融機関も多いので、各金融機関のホームページなどで確認してみてください。
外国人でも借り換えは可能か
外国人であっても、日本人と同様に住宅ローンの借り換えは可能です。実際に、私のお客さまで借り換えをされた外国人の方がいらっしゃいます。
永住権がなくとも住宅ローンを借りるには?
ここまで見てきたように、永住権を持っていれば、外国人であっても日本人と同じように住宅ローンを組むことができます。
では、永住権を持っていなければ住宅ローンを組めないのかといえば、そうではありません。日本のいくつかの金融機関では、配偶者が日本人であること、頭金20%を用意できること、入国から5年以上が経過していること、といった条件を満たしていれば、永住権がなくとも住宅ローンの審査を受け付けています。具体的な条件や、ご自身がその条件に該当するかどうかについては、金融機関よって違いますので、直接問い合わせすることをおすすめします。
また、日本の金融機関が指定する条件を満たしていない場合であっても、母国の金融機関が日本に支店を持っていれば、そこに相談してみるというのも選択肢のひとつです。日本の金融機関とは審査基準なども異なるはずなので、やはり直接問い合わせしてみるといいでしょう。
ただし、どちらの場合も、日本の金融機関で通常の住宅ローンを借りるよりも金利が高くなる可能性があります。また、変動か固定かといった金利タイプを選べない場合もあるでしょう。永住権を持っていない場合、そうしたデメリットがあるかもしれないということは念頭に置いておいてください。
ちなみに、私の友人で永住権を持たずに日本で住宅を購入した外国人がいますが、彼の場合は、配偶者(妻)が日本人で、仕事を持ち安定した収入があったので、妻の名義で住宅ローンを組んでいます。この場合、審査さえ通ればまったく問題なく住宅ローンを組むことができますが、返済についてはそれぞれがどのように負担していくか、夫婦間でしっかり話し合いをしておく必要があるでしょう。
このように、永住権を持っていなくとも住宅ローンを借りることはできますが、日本に長く住むつもりがあって住宅購入を考えているのであれば、やはり永住権を持つことが最良の選択といえるでしょう。住宅ローンを組むことを真剣に考えているのであれば、永住権の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
(最終更新日:2023.07.28)