共働きが増える中、夫婦で住宅ローンを組む方も増えています。2人の年収で借りたほうが借入額を増やせる、金利の優遇が大きくなる可能性がある、2人で住宅ローン控除を受けられるなどのメリットがあるからです。しかし、ひとたび離婚となると想像もしなかった事態になることも…。夫婦で組んだら知っておきたい離婚後の住宅ローンについてお伝えします。
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夫婦の住宅ローンは連帯債務かペアローン
夫婦で住宅ローンを組む場合、1つの債務を2人で返済する「連帯債務」と、それぞれが1本ずつローンを組み互いに連帯保証人となる「ペアローン」の2つのタイプがあります。
【連帯債務の場合】
連帯債務の代表的な商品は全期間固定金利の【フラット35】です。1つのローン対して夫婦2人で返済義務を負います。例えば、夫の収入に妻の収入を合算してローンを組む場合、夫が主債務者、妻が連帯債務者となり、そのローン全体の返済義務が生じます。
【夫婦ペアローンの場合】
夫婦それぞれが1本ずつローンを組み、それぞれが相手のローンの連帯保証人となります。連帯保証人とはローンを借りている人の返済が滞った時、債務者に代わって返済の義務を負う人です。ペアローンは本人が返済できない場合に、連帯保証人である相手に返済義務が生じます。
夫婦仲良く暮らしているときは、お互いに協力して返済を続けていけば問題ありませんが、ひとたび離婚となると大変です。一方が自宅を出て行ったとしても連帯債務であれ、ペアローンであれ、返済の義務はなくなりません。住宅ローンは自分が「住むこと」が条件であるため、出て行った方のローンは住宅ローンの条件を満たさなくなり、「金利が高いローンへの条件変更」や、「一括返済」を求められるリスクがあります。
また、2人でローンを組んでいる場合、土地や建物が共有名義となっている場合がほとんどです。別れた相手の同意がなければ売却も、ローンの条件変更や借り換えもできなくなってしまいます。
ローンも持分も夫婦名義・・・。離婚した場合はどうしたらいいの?
では、離婚後の住宅ローンはどう対応したらよいのでしょう。Aさんのケースで考えてみましょう。
<条件>
Aさん40歳 会社員
妻 35歳 会社員
子ども 5歳と3歳
Aさん2,000万円 妻1,000万円をペアローンで以下の条件で借り入れていた場合
Aさんの住宅ローン | 総借入額3,000万円 | 妻の住宅ローン |
2,000万円 | それぞれの借入金額 | 1,000万円 |
3分の2 | 持分 | 3分の1 |
1,000万円 | 連帯保証分(相手の債務) | 2,000万円 |
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●夫が家を出て妻と子どもが住み続ける場合
子どもの生活環境を変えずに生活を続けることができるため、実際には妻と子どもが住み続けることも多いようです。この場合の解決方法を3つ考えてみました。
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1.夫婦それぞれがローンを払い続け、名義はそのまま
自宅の名義もローンの名義もそのままに、夫婦が今までと同じように返済を続けるパターンです。Aさんが滞りなく返済を続けてくれれば問題がないようにも見えます。しかし、Aさんはお子さんの養育費を支払い続けながら自分自身の生活をしていかなくてはなりません。もし、新たな家庭を持った場合など、二重の住居費と養育費がかかることもあり、返済が滞る可能性も高くなります。ひとたび返済が滞ると様々な問題が見えてきます。
Aさんの返済が滞った場合、連帯保証人である妻に返済義務が生じます。妻は1人の収入で2人分の返済を続けなくてはなりません。延滞が続くと保証会社から督促を受け、最悪の場合は自宅を差し押さえられ競売になる可能性もあります。
また、先ほどお伝えしたとおり、住宅ローンは「自分が住むための住宅を購入する資金」を調達するための商品ですので、家を出てしまったAさんのローンは住宅ローンの条件に当てはまらなくなり、もっと高い金利のローンに変更を余儀なくされたり、金融機関によっては一括返済を求められるリスクもあります。
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2.妻がAさんの名義分を買い取る
年収によっては返済額の負担割合がオーバーし借り入れができなかったり、出産後仕事を辞めていたり、パートや派遣などに働き方を変えていた場合は、新たなローンを組むことはむずかしくなります。
また、収入に問題がなかったとしても、離婚による持分の売買は、適正な評価や審査基準がむずかしく、金融機関によっては応じてくれない場合もあります。
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3.妻がAさんのローン分も含めて他の金融機関に借り換えをする
妻が2人分のローンの残高を借り換えて妻1人でローンを組む方法です。借り換えには審査がありますので、妻の年収や働き方によっては借り換えができない場合があります。
また、ローンの返済が進んでいる場合、借り換えをしても夫がすでに返済した分のローンの名義分が残ってしまいます。借り換え時に夫のローンの名義分を現金で買い取ることが必要になる場合もあります。
それぞれの解決方法をみてきましたが、妻と子どもが自宅に住み続けるには、妻の働き方や年収、預貯金の額がポイントとなります。
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●売却する場合
それでは家を売却する場合はどうでしょう?おさえてきたい主なポイントは2つです。
1.売却できないこともある
ローンも持分も2人の名義であるため、2人の意思が一致しないと売却することができません。離婚して顔も見たくない状況であったとすれば、売却の手続きのために顔を合わせるのも大変なことです。弁護士等を代理人としてやり取りをすることもできますが、費用がかかります。
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2.オーバーローンになる可能性も
自宅の価値よりもローンの残高が多い場合は注意しなければなりません。100%ローンで新築住宅を購入し、比較的すぐに売却しようとすると、売却価格の方がローン残高を下回ることがあるので、売却価格ではローンの完済ができないこともあります。このような場合、残ったローン残高を現金で支払わないと、金融機関から売却を認めてもらえません。
夫婦2人のローンは2人で返していくことを前提に借りるローンです。離婚したら1人の収入で2人分の返済をする、という覚悟の上で借りるべきでしょう。
特に現在はマイナス金利の影響で住宅ローンの金利が史上最低金利を続けています。つい、頭金がなくても購入してしまったほうがお得、という考えになりがちです。しかし、夫婦目いっぱいのローンを組んで離婚となった時、2人とも資金に余裕がないと、どちらかが住み続けるにしても、売却するにしても、スッキリした解決方法がないのが現実です。
夫婦2人で借りるローンこそ、ゆとりのある返済計画が大切なのです。