高架化が進む京王線沿線駅に注目! さらに便利で住みやすい街に進化中の8駅をチェック

京王電鉄京王線の笹塚駅から仙川駅間で連続立体交差事業および関連する側道の整備が行われています。これによって25ヶ所の踏切が除却されて踏切待ちが無くなり、鉄道で分断されていた地域の一体化が図られるとともに交通機関相互の乗り継ぎが円滑になるなど利便性は大きく向上します。

連続立体交差事業
工事中の沿線のあちこちに掲げられていたお知らせ。京王線の笹塚駅から仙川駅間で連続立体交差事業が行われています(筆者撮影)

約7.2キロメートルを高架化、25の踏切がなくなる

連続立体交差事業
連続立体交差事業が行われる範囲と除却される踏切についての解説図(出典:京王電鉄京王線(笹塚駅~仙川駅間)の連続立体交差事業及び関連する側道整備について。東京都建設局

連続立体交差事業は、東京都が事業主体となって道路の整備の一環として施行される都市計画事業。今回の事業は、新宿駅と京王八王子駅を結ぶ京王電鉄京王線の笹塚駅から仙川駅までの約7.2キロメートルを高架化するというもの。

高架化の4つの効果とは?

東京都によると、これによって

交通の円滑化 
踏切がなくなり、交通渋滞が解消されます
安全性の向上 
踏切事故がなくなり、道路と鉄道それぞれの安全性が向上します
地域の発展
これまで鉄道により分断されていた地域の一体化が図られます
本事業に合わせて、都市計画道路や駅前広場などが整備され、鉄道とバスなど交通機関相互の乗り継ぎが円滑になるなど、地域の発展に寄与します
利便性の向上
各駅にエレベーター・エスカレーターを設置することにより、誰もが快適に利用できる駅になります

とのこと。

除却される25ヶ所の踏切
除却される25ヶ所の踏切の詳細(出典:京王電鉄京王線(笹塚駅~仙川駅間)の連続立体交差事業及び関連する側道整備について。東京都建設局

具体的には25ヶ所の踏切が除却され、7本の都市計画道路が立体交差化されることになっています。

渋滞解消だけでなく、街全体がより便利に

千歳烏山駅
千歳烏山駅で踏切を待つ車列。どこの駅でも駅に通じる道は幅員が狭く、そこに車、人、自転車が交差し、時に危険なことも(筆者撮影)

今回、実際に工事が行われている京王線沿線を歩いてきたのですが、踏切では上下線が同時に来た後に、さらに下りを待つことになるなど待ち時間はかなり長く、駅近くでは踏切渋滞も発生していました。高架化でそうした待ち時間がなくなるだけで、沿線での暮らしはかなり楽になるのではないかと感じました。

駅のバリアフリー化、駅前広場設置も

千歳烏山駅
千歳烏山駅。一番奥に地下への階段があります(筆者撮影)

鉄道を利用するためには階段を下って地下通路を使い、さらにホームへ階段を上る必要がある駅も多くあります。古い駅舎はバリアフリーではなく、急いでいる時などにもこれは不便。高架化に加えて駅舎が新しくなるとずっと使いやすくなるはずです。

下高井戸駅
下高井戸駅近くの、駅の南北を結ぶ地下通路。高架化されれば、こうした上り下りは不要になります(筆者撮影)

駅以外で線路を渡るためには地下道を使わなくてはいけない場所もあり、それも高架化で解消されていくことになります。

現状はどの駅にも駅前広場らしい空間がなく、タクシーやバスを利用する時には少し離れたところまで行かざるを得ないのも不便なところ。今後の駅周辺の整備では駅前広場が作られる計画が多く、地域の利便性は大きくアップするでしょう。

国道20号
京王線の北側を走る国道20号(甲州街道)。このエリアではバス路線はこの道路を走行し、駅までは入ってきてはいないのが一般的です(筆者撮影)

京王線のこの区間では線路の北側に国道20号(甲州街道)が走っており、当該エリアのバス路線の多くは国道20号を走っています。駅までの道路の幅員が細いなどバスの乗り入れに課題があるためで、今回の高架化ではその点の整備も併せて行われることになっています。公共交通を利用しやすくなりますし、道路整備は防災その他にも寄与します。高架化は街のいろいろなものを変えるというわけです。

新しい駅舎デザインが決まっている駅も

千歳烏山駅
千歳烏山駅から少し東側の踏切部分。線路わきに高架が登場、将来の姿が垣間見えました(筆者撮影)

実際の工事は全体を8つの工区に分けて段階的に行われており、2024年7月現在、あちこちで高架が姿を現し始めていました。

千歳烏山駅駅舎のデザイン
新しい千歳烏山駅駅舎のデザイン。モダンな印象の駅舎になるようです(筆者撮影)

駅によってはすでに新しい駅舎のデザインが決まってきており、既存駅構内に告知の紙が貼られていたりもしています。

世田谷区のまちづくり計画を主体に紹介

京王線は世田谷区と杉並区の区界近くを走っているため、杉並区、世田谷区はそれぞれに沿線の街づくりについて方針を定めており、下高井戸駅、桜上水駅、上北沢駅、芦花公園駅では両区がそれぞれに取り組むことになっています。

ただし、八幡山駅を除き、駅自体は世田谷区内にあるため、杉並区の施策は世田谷区との連携を基本とするもの。そこで、ここでは主に駅周辺の、世田谷区主体で進めているまちづくりの構想についてご紹介していきます。順番は千歳烏山駅から都心に向かって代田橋駅までです。

全8駅の、ここが変わる

千歳烏山駅には新規バス路線導入計画も

千歳烏山駅は特急、急行、区間急行、快速も停車する駅で、交通の利便性に加え、京王線を挟んで南北に商店街があることから生活の利便性も高い街です。

烏山寺町エリア
関東大震災後に浅草、築地などから移転してきた26もの寺が集まってきた烏山寺町エリア。絵になる風景に出会えます(筆者撮影)

駅から北側には国道20号を挟んで烏山寺町と呼ばれる歴史的な景観、緑の多いエリアもあって認知度の高い駅のひとつといえるでしょう。

今後のまちづくりでは、既存商店街への交通流入に配慮しながら駅の東側に交通広場を整備し、新規バス路線の導入等で交通結節機能の強化を図るとされています。駅前を中心に交通利便性はさらに高まりそうです。

烏山区民センター
千歳烏山駅北側にある烏山区民センター、烏山図書館。周囲には商店街が広がっています(筆者撮影)

同時に安全で快適な歩行者空間の整備、駅北側にある烏山区民センター、烏山図書館を含めた駅周辺の整備も進めるともされており、かなり大きく街が変わりそうです。

現状では駅周辺には放置自転車が多く、長らく問題とされてきました。そうした問題も一気に解決に向かうかもしれません。

芦花公園駅、駅周辺の商業施設再生が鍵

芦花公園駅前
芦花公園駅前。右側の千歳通り沿いに世田谷文学館があります(筆者撮影)

芦花公園駅は各駅停車のみが止まる駅。

駅名の通り、駅から10数分歩いたところに都立蘆花恒春園という、かつてこの地に暮らした文豪・徳富蘆花の住宅跡地とその周辺を利用した公園があります。開発が進む前の武蔵野の風景が残されているそうで、青々とした竹林など気持ちの良い空間が広がります。

世田谷文学館
駅のロータリーにあった世田谷文学館の告知。千歳通り沿いには団地やマンションなども多く建てられています(筆者撮影)

駅の前を通る千歳通り沿いには、世田谷区ゆかりの文学者の原稿、書簡、遺品などを展示している世田谷文学館があります。

広場側から駅を見たところ
広場側から駅を見たところ。コンパクトな広場があり、それを取り囲むようにスーパーなどがあります(筆者撮影)

この駅では南側に駅前広場がありますが、今後は駅北側にも歩行者が滞留できる空間を創出する構想があります。駅周辺の老朽化した建物の更新時期に合わせて共同化、協調化で商業施設の充実を図る計画もあります。

現状、駅の北側の商店街は空き地が目立つ状態ですが、そのあたりが改善されていくことを期待したいものです。

八幡山駅はすでに高架化終了

八幡山駅
国道20号方向から見た八幡山駅。商業施設は駅周辺に集中しています(筆者撮影)

八幡山駅は快速と各駅停車が止まる駅。駅自体はすでに高架化されており、高架下には駅のほか、物販店、飲食店などが入っています。

商業施設
高架下を利用した商業施設。スーパー、ドラッグストア、書店などのほか、飲食店、銀行ATMなどが入っており、日常生活に必要なものはそろいます(筆者撮影)

現状では高架下の活用についての計画は公表されていませんが、他の駅でも高架下が商業施設その他として使われるのであれば、街がにぎやかになりそうです。

この駅では周囲にある病院、住宅団地の建替えなどを利用して、駅の南側に駅前広場、東西方向の道路などの基盤整備を行う計画です。

都立松沢病院
緑豊かな都立松沢病院の敷地。京王線沿いに歩いていくと上北沢公園がありました(筆者撮影)

駅のすぐ近くには広大な都立松沢病院の敷地があり、緑の空間が広がります。同病院は精神科医療を幅広く提供する急性期病院で、敷地内には池や広場、公園などもあります。

上北沢駅では歩行者ネットワークの形成が課題

上北沢駅
上北沢駅。線路沿いの土地の多くは今後の開発に向けてほぼ更地になっており、現時点ではやや寂しい様子でした(筆者撮影)

上北沢駅は各駅停車が止まる駅。

駅南側
駅南側に伸びる桜並木。もともとは商店街だったのでしょうか、現在はクリニックなどが点在していました(筆者撮影)

駅南側には桜並木があり、今後のまちづくりではそれを活かした駅前環境の整備改善、既存商店街の商業環境の充実を図るとされています。駅北側に近隣住民が集えるオープンスペースの整備が計画されています。

上北沢駅
上北沢駅の新宿寄りの踏切。駅近くにはスーパー、ドラッグストアやスポーツクラブなどが点在していました(筆者撮影)

隣接駅まで鉄道沿いを安心して通行できる歩行者ネットワークを形成するともされています。

桜上水駅でも新規バス路線導入の検討が

桜上水駅
桜上水駅。右側に高架が建設されています。元々は検車区などがあった駅なので駅の敷地も広く、複数のホームがあります(筆者撮影)

桜上水駅は急行、区間急行、快速と各駅停車が止まる駅。鉄道の便が良い割に、現状はあまり乗降客数は多くはなく、静かなたたずまいが印象的です。

駅から北側に少し歩くと杉並区で、その先には甲州街道が東西に走っています。街道沿いにはスーパーやディスカウントストア、ファストフード店などが並びます。

世田谷区では駅北側に駅前広場を整備。新規バス路線導入の促進、公共交通不便地域の解消や南北交通の強化を図るなどの施策を考えているようです。

2路線利用可能な下高井戸駅の変化は?

下高井戸駅
下高井戸駅。電車の右側に見えているのが京王線と東急世田谷線の下高井戸駅。手前の更地はかつて下高井戸駅前市場があった場所です(筆者撮影)

下高井戸駅は快速と各駅停車が止まる駅。加えて下高井戸駅には東急世田谷線が乗り入れています。同線は途中で小田急小田原線と交差、最終的には東急田園都市線三軒茶屋駅に乗り入れており、世田谷区内の南北を結ぶ希少な路線です。

東急世田谷線
東急世田谷線。沿線に招き猫で有名な豪徳寺があり、猫をモチーフにした車両も走っています(筆者撮影)

下高井戸駅と桜上水駅の間くらいに日本大学文理学部、日本大学櫻丘高校があり、若い人たちが多いのも特徴です。

駅北側は線路から少し離れると杉並区になっており、逆に桜上水駅との間では線路の南側に杉並区が張り出しているところもあります。

商店街
駅前市場はなくなりましたが、周辺には商店街が広がっており、新旧の店が軒を連ねています(筆者撮影)

駅周辺には商店街が広がっており、現在、駅北側で空き地になっているところには戦後の闇市由来の下高井戸駅前市場がありました。跡地は世田谷区が広場として整備する予定で、世田谷区によると歩行者広場となっています。

もうひとつ、駅北側には駅前広場の計画もあり、そちらには現在は甲州街道沿いを通る杉並区のコミュニティバスすぎ丸が乗り入れられるようにという意図もあるようです。

交通利便性向上に期待、明大前駅

明大前駅は特急、急行、区間急行、快速と各駅停車に加えて京王ライナー、高尾山に向かう土曜日、休日運行のMt.TAKAO号が止まる駅であり、かつ京王井の頭線との交差駅。

明治大学和泉キャンパス
国道20号沿いにある明治大学和泉キャンパス。駅からは首都高速の高架下を潜って向かうことになります(筆者撮影)

近くに明治大学和泉キャンパスがあることから、乗降客数も多く、駅周辺には飲食店などが集まっています。

駅前
駅前には空間はあるものの、あまり広場という感じはありません(筆者撮影)

現状でも駅北側、中央口の前には空地があるものの、広場というほどには整備されておらず、そのあたりが今後の課題。

世田谷区交通まちづくり基本計画では明大前から世田谷区役所、等々力へのバスルート創設が盛り込まれており、それ以外のバスルートの延伸なども含めると明大前の交通利便性は今後向上することになりそうです。

代田橋駅からのみどりのネットワークを構築

代田橋駅
代田橋駅。駅ビルは現在解体中。地下に下りてホームに向かうことになります(筆者撮影)
駅近くの商店街
駅近くの商店街。昔から変わっていないだろう店などもあり、レトロな雰囲気。ただし、道幅は狭く、少し入ると路地も(筆者撮影)

代田橋駅は各駅停車のみが止まる駅で、駅も、駅周辺の商店街も現状は非常にコンパクト。まちづくりの課題としては駅周辺の商業施設の充実、駅へのアクセスの向上、駐輪場の整備などが挙げられています。

玉川上水緑道
玉川上水緑道。緑道内に再生計画に関する告知がありました。今後、よりきれいに整備されていくようです(筆者撮影)

近くには和田堀給水場や玉川上水緑道など緑の空間があるため、そうした資源を生かしながらのまちづくりが模索されています。

以上、京王線で進められている高架化とそれに伴って変わるであろう駅周辺の様子を世田谷区の資料から解説しました。今の段階ではどの駅の周辺も交通利便性や歩行者の安全性その他にやや難があるという状況ですが、これが変わっていければ街の印象も変わってくるでしょう。都営新宿線とも乗り入れる都心直通の路線でもあり、今後の変化が楽しみです。

~こんな記事も読まれています~