住宅ローンは借入金額が多く、返済期間が長くなるケースがほとんどで、途中で返済が難しくなってしまう人もいます。
これから住宅ローンを組む人のなかには、支払不能になったらどうなるのか不安を感じる人もいるでしょう。また、現在住宅ローンの支払いが厳しく困っているという人もいるかもしれません。
そこで、今回は住宅ローンの支払いができなくなるとどうなるのか、対処法などを解説します。
住宅ローンが払えなくなることはある?
住宅価格は数千万円にのぼるため、多くは購入時に住宅ローンを利用します。そのなかには、支払いが困難になってしまうこともゼロではありません。
住宅ローン破綻の危険性は意外にも高く、今後3人に1人が住宅ローン破綻をすると予測する人もいるぐらいです。
賃貸であれば、生活レベルに合わせて住み替えるという選択肢がありますが、住宅ローンの返済は待ってくれません。そうならないためにも、住宅ローンを契約する際には現在の収支だけではなく将来の可能性を見据えたうえで、返済計画を立てる必要があります。
住宅ローンが払えなくなる要因
住宅ローンを申し込むときは、ほとんどの人が無理のない範囲で支払いができるように返済計画を立てるはずです。それにもかかわらず、住宅ローンを払えなくなってしまうケースがあります。なぜ計画どおりに返済ができなくなってしまったのか、住宅ローンが払えなくなる原因を解説します。
金利上昇
住宅ローンの金利には大きく分けると「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。
固定金利(全期間固定金利型)は、住宅ローン完済時まで契約時の金利が適用されるもので総返済額が変わりません。一部商品には、10年間だけ金利が変わらないなどいった固定金利期間選択型も存在します。それに対して、変動金利は一定期間ごとに金利が見直されるタイプで、市場金利の影響を受けます。そのため、変動金利の場合は、金利の上下に連動して総返済額が変わってきます。
収入の減少
固定金利で返済額を一定にしていたとしても、長い返済期間のなかで収入が減少する可能性もあります。病気や怪我で離職を余儀なくされるかもしれません。また、自身は健康であっても、介護や育児などで働ける時間が大幅に減ってしまうケースもあるでしょう。
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けたときのように、社会情勢が突然変わる事態もあり得ます。突然の収入減は誰にでも起こり得るので、さまざまな影響を想定しておくことも重要です。
団体信用生命保険(団信)が使えない
住宅ローン加入者を対象とした生命保険として団体信用生命保険(団信)というものがあります。団信は契約者が死亡したり高度障害状態になったりしたときに、保険金で住宅ローンが完済される仕組みです。そのため、「団信に入っていれば病気や怪我になっても安心」と考える人もいますが、実は病気や怪我をして収入が減っても団信が使えないケースがあります。
団信でカバーできるのは、死亡や高度障害状態です。高度障害には該当しない病気や怪我で働けなくなった場合、収入がないのに団信が使えないこともあります。
住宅ローンが払えないとどうなる?
あらゆる可能性を想定して返済計画を立てていたとしても、返済不能に陥ることがあるかもしれません。もし、住宅ローンが払えないとどうなるのか、段階的に解説します。
金融機関から督促状や催促状がくる
一時的に住宅ローンの支払いが遅れてしまっても、できるだけ早く入金すれば問題ありません。ですが、支払いを滞納して1〜2ヶ月経過すると、まず催促状や督促状が送られてきます。場合によっては、電話で催促されることもあります。
督促状や電話などで催促されると恐怖を感じ、連絡を無視してしまう人もいるかもしれません。しかし、金融機関との信頼関係を壊さないためにも、きちんと連絡を取り、現在の状況等を相談するようにしましょう。
競売の手続きが始まる
書面や電話での催促を受けても返済ができないと、最終的には競売になります。競売とは、裁判所が住宅を強制的に売却し、売却額を債務の支払いにあてることです。
しかし、催促の連絡を無視するとすぐに競売にかけられるというわけではありません。まずは、このまま返済がなければ保証会社による代位弁済が始まるという通知が送られます。代位弁済が行われると、債権は保証会社に渡り、残債の一括返済が求められます。そうなると、住宅ローンの支払いのように、毎月小額を返済し続けることはできません。
一括返済ができなければ保証会社が裁判所に申し立て、競売が始まります。しかし、一般的に競売は、債権者(金融機関)と所有者の同意のもとで行われる任意売却より低い金額になります。そのため、競売にかけられる前に何らかの対策を講じることが大切です。
住宅ローンが払えなくなった場合の対処方法
住宅ローンが払えなくなると、最終的には競売にかけられることになりますが、できるならこのまま住み続けたい思う人も多いでしょう。そこで、住宅ローンが払えない場合でも自宅に住み続けられる3つの方法を紹介します。
リースバックを利用する
リースバックとは、住宅を売却したうえで、その住宅を借りる金融取引の手法です。住宅はリースバックを行う会社が買い取るため、売却によってまとまった資金が手に入り、この資金で残債を返済できます。あとは、リースバック会社に毎月の賃料を支払い、同じ住宅に住み続けられるという仕組みです。
リースバックは自宅を手放すため、固定資産税やマンションの管理費・修繕積立金を支払わなくて済むこともメリットです。ただし、家賃や支払い期間などは契約内容によって異なるため、リースバック契約を結ぶときはしっかりと内容を確認しましょう。
早めに条件の見直しや借り換えをする
場合によっては、条件の見直しや住宅ローンの借り換えが可能なケースもあります。ただ、これは滞納状態になる前にすることです。督促状が届いた時点で、返済条件の見直しができるかどうか金融機関に相談しましょう。返済期間を伸ばして、月々の負担を軽くできるかもしれません。
また、より金利が低い商品があるときは借り換えも検討しましょう。ただし、借り換えには諸費用がかかるため、それらも含めて返済額が減るかどうか十分に検討する必要があります。
個人再生をする
個人再生は債務整理の一つで、借金が大幅に減額される手続きです。住宅ローン以外にも多くの借り入れを抱えている人に向いた手続きです。
住宅ローンに対して個人再生を行うと、原則自宅は失います。しかし、「住宅資金特別条項」を適用すれば、住宅ローンを個人再生の対象から外すことができます。自己破産をすると「住宅資金特別条項」は利用できませんが、個人再生であれば、返済をしながらこれまでと同じように自宅に住み続けることができます。
まとめ
返済計画を立てても、長い返済期間の間に予想外のことが起きることもあり、住宅ローンは誰でも払えなくなる可能性があります。しかし、住宅ローンが払えなくなったとしても、同じ住宅に住み続ける方法はあります。返済条件の見直しや借り換えの相談も可能であり、リースバックや個人再生という方法も選択肢の一つです。
これから住宅ローンを組もうと考える人も、住宅ローンの返済が苦しいという人も、まずは金融機関に相談してみましょう。