JRと京急本線が乗り入れる品川駅は、現在工事が進むリニア中央新幹線、隣接する山手線の新駅・高輪ゲートウェイ周辺の開発などでこの後の変化に大きな期待がかかるエリア。その南側、京急本線北品川駅周辺で、都内有数の規模という巨大な開発が予定されています。
変化し続けてきた品川駅周辺
最初に品川駅周辺の開発の歴史を見ておきましょう。都心部はどこも変化し続けてきていますが、品川駅はそのうちでも大きな変化をしてきた地域のひとつです。
江戸時代には東海道の宿場町として繁栄
品川は、江戸時代には江戸と京都を結ぶ東海道一番目の宿場町として繁栄してきた街。実際に宿場があったのは、現在、再開発の計画がある京急本線北品川駅から同線の青物横丁駅くらいまでですが、それ以降の大森海岸駅手前の鈴ヶ森あたりまでは道路名称として旧東海道という名が残されています。
その後、1872(明治5)年に新橋~横浜間に日本初の鉄道が敷かれることになり、品川駅もその時に作られています。当時の鉄道は海沿い、一部は海上を走っており、2019年に品川駅改良工事の際に当時作られた高輪築堤が発見されたのは記憶に新しいところ。現在は一部が史跡として指定されており、現在周囲で行われていく開発工事終了後には見られるようになることでしょう。
貨物ヤードを利用した開発で港南口が大変貌
その後、品川駅が大きく変わるのは1998年以降。この年、旧国鉄品川駅東口貨物ヤード跡地を利用し、大規模な複合商業ビル群である品川インターシティが誕生しています。
それ以前の品川駅東側、現在の港南口側は、工場や倉庫などが並ぶ、あまり人気のない場所でした。筆者の手元には1997年1月に発行された首都圏の地図がありますが、それによると品川駅の港南口側は東京都中央卸売市場食肉市場までは何も書かれていない空白地帯。その土地を利用してビルなどが続々誕生、街を変えてきたのです。
品川インターシティに続き、品川インターシティと品川セントラルガーデンを挟んで向かいあうオフィスビル群・品川グランドコモンズが誕生したのは2003年。
この年にはオフィスビル群の一番奥に地上43階建てのタワーマンションが建設され、最高31倍もの倍率で即日完売したのが話題にもなりました。その物件は現在も高値で取引、あるいは賃貸されています。
東海道新幹線駅の開業で駅周辺に商業施設が集積
2003年は、それ以上に品川駅を大きく変えるもうひとつの出来事もありました。東海道新幹線の品川駅の開業です。駅開業を受けて2004年にはアトレ品川、2005年にはエキナカ商業施設・エキュート品川、2010年にはエキュート品川サウスと、次々に駅ビル、エキナカが充実。現在のような一大商業エリアとなっていきます。
リニア中央新幹線を睨んで品川駅周辺で多数の開発計画
そして、その次の、現在進行形の話題のひとつが、一般にはリニア中央新幹線と呼ばれる、東京都から大阪市に至る新しい超高速の新幹線の整備計画路線です。中央新幹線の建設については昭和48(1973)年から計画自体はあり、方式、ルートその他で紆余曲折を経て2011年に整備計画が決定されています。
2014年には起工式が行われ、現在各地で工事が進められており、完成すれば最速で東京から大阪間を67分で結ぶとされています。始発駅となる品川駅の重要性がさらに高まることは言うまでもありません。
高輪ゲートウェイ駅、周辺の開発も進行中
それに合わせて品川駅周辺では国際交流拠点・品川の形成を目指し、さまざまな整備計画が動き始めています。
たとえば、2014年にはJR東日本が品川駅と田町駅の間に新駅・高輪ゲートウェイ駅を設置する計画を発表。2020年に暫定開業しました。
高輪ゲートウェイシティと名づけられた駅とその周辺エリアは、田町車両センターがあった場所。設備や車両留置箇所を見直した結果、創出された土地を駅及び周辺の再開発に充てるという計画で、2024年度末から徐々に開業していく予定とか。さまざまな施設の入った複合棟、文化創造棟、住宅棟や広場、歩行者デッキなどが作られる予定です。
このエリアは現時点では品川駅とは直接つながってはいませんが、今後、品川駅との間の区域が開発されていけば、品川駅北口の歩行者広場から歩いていけるようになります。品川駅を中心に北に延びる街が計画されているというわけです。
品川駅そのものの改良工事も多数、周辺エリアにも余波
それ以外にも、品川駅北口では改札新設や道路拡張、エレベータ増設によるバリアフリー化、商業施設の整備などが、国道15号・品川駅西口駅前広場では2027年度を目標に国道上空デッキなどが、京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業で現在2階にある品川駅が地平化することになっているなど、品川駅大改造といっても過言ではない計画が予定されています。
駅周辺だけでなく、駅と国道15号を挟んだ品川駅西口地区(港区高輪三丁目地内)でも2棟の高層建築物を含む再開発計画があるなど、地域全体で建物更新の動きがあります。
品川駅南側、京急北品川駅で大規模な再開発計画
その流れに呼応するように新たに浮上したのが、品川駅からは南側にあたる京急本線北品川駅から東側にかけての広大な地域での再開発計画です。
北品川駅は京急品川駅の隣にある、現在は各駅停車しか止まらない駅。この駅以遠の旧東海道は、ところどころに歴史をしのばせる古い寺社、建物などが散見されるようになります。旧東海道自体、30年以上かけて修景されてきました。
品川浦を中心に3つの地区で開発
北品川駅から旧東海道を超えて、元々の海辺だった地域に下りたところに天王洲運河が入り込んだ舟だまりがありますが、開発の中心となるのはそのあたり。
江戸時代の品川周辺の海辺、品川浦は獲れた魚を江戸城に収める漁村「御菜肴八ヶ浦」のひとつとして豊富な水揚げを誇ったエリアでした。現在は漁業のためではなく、釣り好きな人のための遊漁船や屋形船などが停泊しています。その背後に見える品川インターシティや品川グランドコモンズとの対比は、東京の新旧の象徴ともいえる風景。しばしば、この地域を紹介する写真として取り上げられています。
開発計画はこの船だまりの北側、品川港南口の再開発エリアと道を挟んで向かい合う品川浦周辺北地区(約6ヘクタール)、舟だまりの南側にあたる品川浦周辺南地区(約4.0ヘクタール)、そして北品川駅寄りの品川浦周辺西地区(約3.5ヘクタール)が対象で、全体の地区面積は約13.5ヘクタール。
2024年1月に発表されたプレスリリースには日本を代表するような大手デベロッパー、建設会社13社が事業協力者として名を連ねており、「都内最大級」という言葉が書かれているほどです。
全体計画の対象は約92ヘクタール
この計画を推進する品川駅南地域の未来を創る推進協議会によると、対象となっているエリアは再開発エリアも含めて全体で約92ヘクタール。北品川一丁目から四丁目、東品川一丁目になります。
もちろん、全域を高層化するというものではありません。現在、再開発が予定されているエリアは高層建築物を建てる区画、複合市街地とする区画ですが、それ以外に品川浦の風情を残すゾーン、旧東海道沿いの歴史とにぎわいを残すゾーンも考えられています。エリアの南側を流れる目黒川沿いには、親水広場や船着き場など水に親しめる空間をという計画もあるようです。
つまり、地域一帯を現在ある歴史的、自然的な資源などを使いつつ、街を更新していこうという計画が進展しているというわけで、その第一段が品川浦周辺の再開発ということになります。
地域内には小規模住宅や古い都営住宅も
現時点での予定地は多少規模のあるマンションやビルなどもありはするものの、それ以外には路地に小規模な住宅なども。古い都営住宅なども含まれています。また、西地区には駅周辺、旧東海道も範囲内にあります。
どの区域にどのような建物が建つのかその他、詳細についてはこれから徐々に明らかになっていくはずですが、ただ、高層建築を建てるだけではないというところは他の再開発計画とは異なるところです。
北品川駅前には新たな駅前広場の整備計画
北品川駅は現時点では非常にコンパクトな駅で、駅を降りると目の前に国道15号が走っています。ですが、京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業が進展すれば駅周辺に土地ができることになります。それを見越してすでに北品川駅周辺では道路、駅前広場の整備計画が進んでいます。
それによると、北品川駅前には国道15号と旧東海道をつなぐような形で駅前広場が作られることになっており、現在の改札前の渋滞は解消されることになります。また、駅前広場には車両等の乗降場を配置するほか、イベント等も可能は歩行者広場も整備されることになるのだとか。品川方面から駅に向かう新しい道路も作られます。
歴史ある、水と緑にも恵まれた都心近くの街というだけで希少な北品川エリアですが、その良さを残しつつ、より暮らしやすくなるとしたら気になる人も多いはず。
品川駅からは品川セントラルガーデンを抜ければすぐの立地でもあり、十分品川徒歩圏でもあります。一度実際に歩いてアプローチ、街の魅力を住む観点でチェックしてみてはどうでしょう。
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