逗子市は三浦半島の付け根にあり、相模湾に面した海・山の自然に恵まれた街です。JRで逗子駅から横浜駅へ30分、東京駅まで60分というアクセスの良さもあり、都心に通勤しながら身近に自然が楽しめる住宅地として発展しました。今回は、逗子市の魅力と住宅事情について紹介します。
富士山も一望できる景色の良い街・逗子
神奈川県の南東、三浦半島の付け根に位置する逗子市。東は横須賀市、北は横浜市、北西は鎌倉市、南は葉山町に接し、西は相模湾が広がっています。逗子海岸からは、冬の空気の澄んだ日には雄大な富士山が望め、披露山公園などの景勝地も多くあります。市域は、東西6.96キロメートル、南北4.46キロメートル、周囲21.20キロメートルで総面積は約17.28平方キロメートル。市の面積の約4割を山や林が占め、海と山に囲まれた自然豊かでコンパクトな街です。
JR横須賀線の逗子駅は1889年に開業。1930年には、湘南電気鉄道(現在の京浜急行電鉄)の湘南逗子駅(現在の逗子・葉山駅)が開業し、横浜方面への交通アクセスが充実しました。現在、逗子市にはJR横須賀線の逗子駅、東逗子駅、京急逗子線の逗子・葉山駅、神武寺駅があります。逗子駅、逗子・葉山駅ともに横浜駅へ30分程度です。
逗子市としての市制の始まりは1954年。市制施行時に約3万7,800人だった人口は、1971年には5万人超に。この年には、クルーザーやヨットなどが停泊できる逗子マリーナも開業しました。
2000年代以降は逗子文化プラザホール(2005年)、逗子市立図書館(2005年)や市民交流センター(2007年)が完成するなど、公益施設の整備も進んでいます。2015年には在日米軍の「池子住宅地区及び海軍補助施設」の一部の土地に逗子市との共同使用による、池子の森自然公園が開園しました。
JR横須賀線、京急逗子線の利用で、横浜駅まで30分、東京駅・渋谷駅まで60分で行けるというアクセスの良さから、ベッドタウンとして発展。「都心に通いつつ、海や山に親しめるまち」として逗子市に移り住む人も多いようです。
【逗子市のデータ】
総面積…17.28平方キロメートル
人口…5万5,864人(2024年3月1日時点)
世帯数…2万5,075世帯(2024年3月1日時点)
逗子市内に住み続けたい人は88% 暮らしやすさが魅力
逗子市の暮らしやすさは、逗子市のアンケート調査に表れています。令和4年度逗子のまちづくりに関するアンケート調査によれば、今住んでいる場所に住み続けたいと回答した人は、81.6%。逗子市内の他の場所に移りたいとした人が6.4%。多くの人が逗子市内に住み続けたいと考えています。
逗子市に愛着を感じるかの質問に対しては、「感じる」とした人が62.8%、「どちらかというと感じる」が28.6%。9割を超える人が逗子市に愛着を感じています。
逗子に愛着がある理由として「自然環境がよい」が80.2%、「住環境がよい」が50.7%に。「生まれ育ったまち、長年住んでいるまち」が37.8%となっています。逗子市の良いところとしては、「海がある、海が近い」がトップで84.1%。「山がある、山が近い」が71.4%に及びます。
その他、「公害がない」、「通勤・通学に便利」に続いて「まちのイメージがよい」、「まちの景観がよい」が評価されています。住環境が良好で景観が良いことが、逗子市の大きな魅力といえるでしょう。
逗子市の景観としてまず思い浮かぶのは、おだやかな逗子海岸から見た富士山。逗子海水浴場は「きれいで安全で誰もが楽しめる優しいビーチ」として、国際環境認証「ブルーフラッグ」を2022年に取得し、美しい海岸を残す取り組みが継続的に実施されています。
逗子海岸は、遠浅で波が比較的おだやかなのが特徴です。そのため、湘南海岸のようにサーフィンよりも、SUP(スタンドアップパドルボード)などを楽しむ人が多いようです。リビエラ逗子マリーナは日本有数のプライベートマリーナで、ヨットハーバーやレストランなどがあり海外リゾートを彷彿とさせる雰囲気。その近くにある小坪漁港には、新鮮な魚料理が楽しめる食堂もあります。
山の自然では、大崎公園や披露山公園、蘆花記念公園、南郷上ノ山公園などの景勝地が豊富にあります。第一運動公園や桜山中央公園、披露山公園などは、桜の名所としてお花見シーズンに多くの人が訪れます。池子の森自然公園には緑地エリアとスポーツエリアがあり、緑地エリアには池や子ども遊び広場、散策路など、スポーツエリアには野球場や400メートルトラック、テニスコートがあります。子どもたちが自然に触れあえる場が多いのは、逗子市に暮らす大きなメリットでしょう。
街並みを守る景観計画で歴史的たたずまいを保全
丘陵を源として蛇行して流れる川にはカモやサギなどが訪れ、豊かな自然が身近にあることを実感させてくれます。逗子の街を歩いて感じるのは、庭木や生垣などの緑が多いこと。もともと別荘地だった市街地には低層住宅が多く、松や植栽が目を楽しませてくれます。公園だけでなく街なかに自然が豊富にあるのも住環境が評価されている理由でしょう。
2006年に逗子市では、「逗子らしい美しいまちを育てる」ために「逗子市景観条例」を制定し「逗子市景観計画」を定めました。逗子の地形的・自然的な特徴を生かし、自然景観と人工景観の融合を目標とし、良好な景観形成の方針と基準を地区ごとに定めています。
逗子市役所などが立地する逗子駅周辺地区では、逗子市の顔となるにぎわいのある景観形成を誘導。屋上広告物の設置を禁止し、壁面利用の広告物にも制限を設けるなどの良好な景観形成を促しています。
逗子湾に面した歴史的景観保全地区では、海浜の保養別荘地としての歴史的たたずまいを保全。低層の庭園都市的住環境・景観の維持向上を目指しています。たとえば、地区ごとに建物の高さや最低敷地面積を指定。最低敷地面積を165平方メートル(A・B地区)・140平方メートル(C地区)とすることでゆとりある敷地を確保。色彩や外構なども景観の保全を促しています。
逗子駅から逗子海岸に向かって歩くと、歴史的景観保全地区に指定された住宅街が広がります。あちらこちらに緑が広がり、別荘地として栄えてきた逗子の様子が垣間見られます。街並みは住宅価値の大きな要素の一つであり、景観の配慮・保全に取り組んでいる逗子の街並みは注目に値するでしょう。
丘陵地の多い逗子市では、市街化区域が48.1%に対し市街化調整区域が51.9%。市街化区域内の用途地域は、第一種低層住居専用地域が60.3%を占めるなど住居系用途が9割超を占めます。いっぽう、準工業地域は0.2%、工業地域はありません(2019年3月31日時点)。先のアンケート調査結果で逗子市の良いところとして「公害がない」が3位に挙げられていますが、逗子には臨海部によくある工場がなく良好な住環境をもたらしています。
次に、逗子市の住宅事情について見てみましょう。
披露山など高台の高級住宅地も マンションは限られ、戸建て分譲が中心
高台の丘陵地の開発による分譲地が多くあり、逗子アーデンヒルなど美しい街並みの住宅地も点在します。こうした地域のアクセスには自家用車のほか、バスが利用されています。
逗子市が誇る高級住宅街が、披露山庭園住宅地です。相模湾を挟んで富士山や江ノ島などの眺望が広がる緑豊かな住環境。敷地面積1,000平方メートル超の邸宅といったゆとりある敷地面積で区画割りされ、8メートルの高さ制限など美しい街並みを継承するために建築協定が定められています。広い敷地を持つ邸宅がならび、中古住宅の販売価格は数億円に上ります。披露山公園や大崎公園など、憩いのスポットが身近にあるのも魅力です。
逗子駅周辺では新築戸建ての分譲が活発ですが、駅徒歩圏の新築戸建て分譲は少なく、多くは小坪などのバス便エリアです。立地による幅も大きく、駅徒歩圏であれば6,000万円台から7,000万円台。バス便エリアであれば、3,000万円台で手が届く新築戸建てが分譲されています。
新築マンションは供給が限られ、2024年3月時点での分譲物件は1物件のみ。中古流通は一定数あるものの築年数の浅いマンションは少なく、逗子マリーナなどのリゾート物件では築40年を超えるようなマンションが目立ちます。中古マンションの選択肢は多くないことに留意しましょう。
続いて、逗子駅周辺の魅力をさらに紹介します。
逗子市でおすすめのエリアは逗子駅周辺
逗子市で最もおすすめの場所は、逗子駅の周辺エリアです。大型商業施設はありませんが、スズキヤ逗子駅前店やオーケー逗子店などのスーパーマーケットがあり、複数ある商店街には、鮮魚店や和菓子、洋菓子のお店など多彩なお店がそろっています。コンパクトな街だけに、顔の見える買い物ができるのは逗子で暮らすメリットでしょう。
2023年に創立120周年を迎えた逗子開成中学校・高等学校が立地するなど、文教エリアとしての趣もあります。逗子海岸も近く、自然のなかで子育てをのびのびとできるのは、逗子駅周辺で暮らす魅力でしょう。
逗子・葉山駅と逗子駅は、約400メートル程度の距離で2路線が利用可能。通勤・通学時にどちらかの鉄道が止まっても横浜、東京方面へ移動できて便利です。逗子インターチェンジを利用すれば車でのアクセスも良好。葉山も近く、逗子駅を起点にリゾート性あふれる暮らしがかなえられるでしょう。
逗子駅徒歩圏となると、中古マンションの流通は限られます。新築戸建ても流通が多くないので、中古戸建てもあわせて検討することをおすすめします。立地によって4,000万円台から8,000万円台と価格差は大きいですが、予算に応じて見学してはいかがでしょうか。
津波災害、土砂災害のリスクに注意
逗子市の暮らしで留意したい点は、津波災害のリスクです。逗子市では、津波ハザードマップを公開していますが、相模トラフ沿いの海溝型地震の場合、逗子地区の最大津波の高さは10.4メートルに。逗子海岸に面した広範囲が浸水エリアとなり、小坪地区では最大津波はさらに高くなります。
逗子市発行の土砂災害等ハザードマップによれば、丘陵地の広範囲なエリアが土砂災害警戒区域および土砂災害特別警戒区域に指定されています。海・山に囲まれている場所だけに、こうしたリスクがあることは留意しましょう。
逗子の開放的でのどかな暮らしは、海や山の自然の賜物です。住民の定住意向が強いのは、ほかの地域に代えがたい魅力があるからでしょう。避暑地・別荘地の歴史を継承しつつ、豊かな自然に恵まれ通勤利便性にも優れた逗子の暮らし。富士山がよく見える季節に、訪ねてみてはいかがでしょうか。
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