住宅ローン返済中に離婚したらどうなる? 対処法と選択肢を紹介

厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計」によると、今や結婚したカップルの3組に1組は離婚する時代になっています(※)。住宅ローンを組んで家族で暮らすマイホームを購入したものの、返済中に離婚するとどのような問題が生じるのでしょうか。

この記事では、離婚時に住宅ローンの残債がある場合に確認すべきことや処理の仕方などを解説します。

※出典:厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」

離婚時に住宅ローンが残っている場合に確認すること

離婚時に住宅ローンの残債がある場合、確認しておくべきことや対処すべきことがいくつかあります。

自宅の名義人

不動産の名義人は誰なのかをはっきりさせる

まず、自宅の土地・建物の名義人が誰になっているのかを確認しましょう。具体的には、世帯主の単独名義になっているのか、それとも夫婦の共有名義になっているのかをチェックする必要があります。

なぜなら、不動産を売却できるのは原則名義人だけだからです。離婚後に居住する人と名義人が異なっていると、売却が難しくなるリスクがあります。

自宅の名義人は登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されています。手元にない場合は、法務局で登記事項証明書を取得して確認しましょう。

住宅ローンの契約内容
上で説明した名義はあくまでも不動産登記に関するものです。併せて、ローンの契約者や契約内容の詳細を金銭貸借契約書で確認しておきましょう。

なかでも重要なのが、主たる債務者は誰なのか、連帯債務になっているのか、連帯保証人は誰なのかといった点です。

夫婦どちらかの単独名義で借りている場合もあれば、どちらかが主たる債務者で、もう一方が連帯保証人として返済義務を負う連帯保証型で契約しているケースもあります。夫婦で収入合算する連帯債務型や、夫婦で別々の住宅ローンを借り入れ、お互いに連帯債務となるペアローンを利用しているかもしれません。

離婚したとしても自動的に連帯債務や連帯保証人が解除されることはないため、対処を検討する必要があります。

住宅ローンの残債
離婚後にどちらが返済を続けるにしても、残債がいくらなのかはしっかりと確認しておきましょう。最新の残債は金融機関から送られてくる返済予定表、あるいは年1回送付される残高証明書で確かめることができます。

また、金融機関のWebサイト上で確認できる場合もあります。

そのままどちらかが住み続けるケースでは、(主たる)債務者ともう一方のどちらが住むのかによって対応が異なります。離婚を機に自宅を売却するケースでは、不動産仲介会社に自宅の査定を依頼して査定価格を確認しましょう。このあと詳しく解説しますが、残債と査定価格のどちらが高いかによって必要な対策が変わってきます。

自宅を売却するとき

自宅を売却して財産分与する際に気をつけること

離婚にあたって財産分与をする際、自宅を売却・現金化して分配するという選択肢もあります。この場合、まずは不動産仲介会社に自宅の査定を依頼しましょう。以下では、査定価格の状況ごとに対策の内容を紹介します。

アンダーローン
住宅ローンの残債が自宅の売却価格を下回っている状態のことを「アンダーローン」と呼びます。住宅ローンの残債がそれほど残っていない、自宅の資産価値が高いといったケースが該当します。

アンダーローンであれば、自宅の売却代金でローン残債を一括返済することが可能です。売却代金から残債および一括返済にかかる手数料などを差し引いた残額は利益になります。この利益を分ければ夫婦間での財産分与は完了です。

オーバーローン
一方、住宅ローンの残債が自宅の価格を上回っている状態を「オーバーローン」といいます。オーバーローンでは、自宅を売却しても売却代金が残債に満たないため、一括返済することができません。

残額がそれほど大きくなければ、貯金などの余剰資金を補填して返済することも考えられます。しかし、残債が大きいケースでは、一括返済が困難なケースもあるでしょう。住宅ローンを完済できないと債権者(金融機関)が設定している抵当権を抹消できないため、自宅を売却する選択肢がとれません。

オーバーローンでも自宅売却を希望する場合は、「任意売却」が有効な選択肢となります。任意売却とは、売却代金で残債を完済できない物件について、債権者の同意を得たうえで売却する方法のことです。任意売却での販売価格は市場価格と大きく変わらず、債権者との協議次第では、事情を汲んで残債の月々の返済額を調整してもらえる可能性もあります。

また、自宅を売却したうえで賃貸借契約を締結するリースバックと組み合わせれば、自宅にそのまま住み続けることも可能です。この場合、毎月の家賃が発生する点は注意しましょう。

住み続けるとき

離婚後も夫婦のどちらかがそのまま住み続ける場合、住宅ローンはどのように処理すればよいのでしょうか。

ローン契約者が住み続ける場合

旧配偶者が連帯保証人になっている場合は注意が必要

夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを契約していて(単独債務)、債務者自身がそのまま自宅に住み続けることは何も問題がありません。

注意が必要なのは、主債務者の旧配偶者が連帯保証人となっているケースです。連帯保証債務は離婚後も引き継がれるため、仮に連帯保証人が自宅から引っ越したとしても、債務だけは残ることになります。もし主債務者が返済不能に陥れば、連帯保証人も返済を求められる可能性があるでしょう。

旧配偶者を連帯保証人から外すには、主債務者の親族などを代わりの連帯保証人にするよう金融機関に相談する必要があります。ただ、代わりの連帯保証人を認めるかどうかは金融機関の判断です。もとの連帯保証人の収入状況も考慮して融資を決定している以上、連帯保証人の切り替えを認めてもらうのはハードルが高いかもしれません。

ローン契約者ではない者が住み続ける場合

夫婦のうちローン契約者(債務者)ではない人が自宅に住み続ける場合、不動産の名義変更とともに住宅ローンの名義変更も必要になります。しかし、金融機関が名義変更を認める可能性はゼロに近いでしょう。

なぜなら、金融機関は債務者の収入状況・勤務先・勤続年数・借入時と完済時の年齢・健康状態など、個人属性を厳密に審査して融資を決定しているからです。夫婦のもう一方も同等の安定収入があるなら認められる可能性はあるものの、ハードルは極めて高いといわざるを得ません。また、ローン契約において、不動産の名義変更も金融機関の事前承認が必要となっているケースが多いため注意しましょう。

名義変更は行わず、債務者でない者が事実上金銭を支払いながら住み続けるという方法もあります。これだと自宅の名義は債務者のままなので、何の対策もしなければローン完済時に債務者の所有物になってしまいます。

これを避けるためには、「ローン完済時、不動産は債務者の旧配偶者の名義とする」ことを記した公正証書を残しておくと安心です。

連帯債務を単独債務にする場合
夫婦の収入合算による借り入れやペアローンによって、夫婦2人での連帯債務で住宅ローンを組んでいる場合、本来であれば住み続ける者だけの単独債務に切り替えたいところです。

しかし、金融機関は合算した収入から返済能力を判断して融資を決定しています。夫婦どちらかの単独債務になれば合算収入を大きく下回ります。返済能力の低下により、金融機関が債権回収不能になるリスクが高まるため、単独債務への切り替えを認めてもらうのは困難です。

もとの配偶者以外で属性のしっかりした人を連帯債務者として立てられれば、金融機関としても交渉する余地が生まれる可能性はあります。ただ、先述のとおり連帯債務者を認めるかどうかは金融機関次第のため、必ずしも同意が得られるとは限りません。

まとめ

ここまで見てきたように、離婚すると住宅ローンの処理はとても難しいものになります。結婚するときや夫婦でマイホームを購入したときには、誰も離婚することなど想定していないでしょう。しかし、現実には結婚した3組に1組が離婚しており、住宅ローン返済中の離婚はどの夫婦にも起こり得る事態といえます。

夫婦円満でマイホームに住み続けられるのが理想ですが、今回紹介した内容を参考に「いざ」というときに備えておくことも大切です。

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