住宅ローン本審査承認後の融資実行取り消しはあるのか? 住宅ローン特約の注意点もあわせて解説

住宅ローンでは、事前審査・本審査と2回の審査が行われるのが一般的です。これらの審査を経て、融資可能か否かが判定されます。ですが、本審査を通過した後に融資実行が取り消されるということはあるのでしょうか。

今回は、本審査通過後の融資実行取り消しの可能性について解説します。

本審査承認後の融資実行取り消しは原則ない

住宅を購入する際に利用される住宅ローンは、数あるローンの中でも高額な借り入れとなるものであり、返済期間も長期にわたります。融資を行う側の金融機関も貸し倒れは避けたいため、ローン申込者の返済能力の審査は慎重にならざるを得ません。申込者が借りた元本と利息をきちんと返済できるかどうか、あらゆる角度から確認を行います。

事前審査・本審査と、2度にわたって審査を行うのはそのためです。厳格な本審査に通過した後になって融資の実行を取り消すことは、原則としてはありえないといえます。

住宅ローン事前審査から融資実行までの流れ

そもそも、住宅ローン審査はどのように行われるのでしょうか。ここでは、住宅ローン契約における事前審査から融資実行までのおおまかな流れと、それにかかる期間について解説します。

事前審査
事前審査は、物件を探す前に購入可能額を把握するために行うケースもありますが、物件の購入を申し込んだ後に行うのが一般的です。

利用したい住宅ローン商品を決めたら、金融機関に事前審査を申し込みます。事前審査は「仮審査」とも言われ、これを通過しなければ本審査には進めません。

事前審査には、本人確認書類や収入を証明する書類のほか物件に関する書類が必要です。事前にどのような書類が必要なのかを調べて、準備しておきましょう。

事前審査にかかる時間は金融機関によって異なりますが、一般的に3日~4日、長くても1週間程度といわれています。また、Webで事前審査が完結し、最短即日で回答を得られる金融機関もあります。

本審査

不動産売買契約の後に本審査を行う

事前審査を通過すると不動産売買契約を締結し、住宅ローンの本審査と正式な申し込みに進むのが一般的です。

本審査では、事前審査よりもさらに細かい項目までチェックされます。本人の年齢・収入・勤務先・健康状態・物件の担保評価などから、融資をしても大丈夫か、融資を行うならいくらまでかを審査します。

決定した内容は、金融機関の担当者から申込者に伝えられ、申込者が融資の内容に合意すれば、住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)が締結されます。

本審査では必要な書類が増えるほか、物件に関する書類では不動産売買契約書や工事請負契約書、重要事項説明書なども提出しなければなりません。

本審査にかかる時間も金融機関によって異なり、1週間程度で回答が出るところもあれば、2~3週間程度かかることもあります。

融資実行
融資は物件の引渡しと同じ日に実行されるのが一般的です。また、あわせて登記の手続きも行います。登記手続きは司法書士に依頼するケースが多く、登録免許税のほかに司法書士への報酬も必要になります。

本審査の結果には有効期限が設定されているのが一般的なので、物件引渡し・融資実行のスケジュール調整をしっかり行いましょう。

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融資実行が取り消しになるケース

審査に通過した後に融資実行が取り消しになるケースは、通常では考えにくいものではあります。ただし、以下のケースに該当すると、金融機関が融資実行を取り消す可能性があります。

信用情報を傷付ける行為
本審査を通過した後、クレジットカードなどの支払いが滞ったり、ほかのローンの返済を忘れていたりなど、信用情報に傷が付く行為を行ったことが金融機関に発覚した場合には、融資の実行を取り消されるおそれがあるので注意しましょう。

ただし、本審査に通ってから融資実行までの期間はそれほど長くはないため、このような事態が起こることは稀です。ほかの借金返済の滞納が61日以上続いて事故情報が信用情報機関に記録されたり、何らかの理由で債務整理を行ったりした場合などにも、融資の実行が取り消されることもありえます。

新たな借り入れ
金融機関が審査によって融資の実行そして融資額を決める際には、「返済負担率(返済比率)」を用います。

返済負担率とは、各種ローンの年間の返済額合計が年収に占める割合のことです。返済額には、住宅ローン以外の借り入れも含まれます。

金融機関が決定した融資額が審査基準で定める返済負担率の上限ギリギリだった場合、審査通過後に新規の借り入れを行うと、返済負担率の上限を超えてしまい、住宅ローンの融資実行が取り消される可能性があります。

収入が減少する転職や離職

収入が減少する転職・離職は要注意

ローンの審査は、審査開始時点の申込者の属性に基づいて行われます。属性とは、その人の年収や勤務先、勤続年数や健康状態などです。

本審査通過後に転職や離職を行い、収入が減少したり、無収入になったりしたとすると、属性が大きく異なることになります。この事実が金融機関に発覚すると、融資の実行が取り消されるリスクが考えられます。

融資実行取り消しになると不動産売買契約が解除となる

もし、住宅ローンの融資実行が取り消されると、購入した不動産の代金を支払うことができず、不動産売買契約を解除しなければなりません。場合によっては、違約金が発生するおそれもあるので注意しましょう。

住宅ローン特約を忘れずに

住宅ローン特約を付ける

不動産売買契約を結ぶ際には、「住宅ローン特約」を付けるのが一般的です。住宅ローン特約とは、買主が住宅ローン融資を受けられなかったとき、違約金の負担をすることなく手付金が返還され、無条件で契約を解除できるオプションです。

不動産売買契約では、契約で決められた期日までに売主に対して購入代金を支払う必要があり、それが不可能なときは契約解除となります。こうした契約解除では、手付金は返還されず、違約金も発生してしまいます。

住宅ローン特約が付加されていれば、違約金は発生せず、売主はそれまでに買主から受け取った手付金を返還しなければなりません。

ただし、住宅ローン特約には期限が定められています。契約締結の際には、不動産売買契約書や重要事項説明書を必ず確認しておきましょう。

解除条件型と解除権留保型
住宅ローン特約には「解除条件型」と「解除権留保型」の2種類があります。

解除条件型では、金融機関が融資実行不可としたとき自動的に不動産売買契約が解除になります。一方、解除権留保型の場合は、買主が申し出ないかぎり、不動産売買契約は解除されません。

また、解除条件型では、ほかの金融機関で住宅ローンを組むときには不動産売買契約を再度締結しなければなりません。解除権留保型の場合は不動産売買契約を解約しないまま、ほかの金融機関の住宅ローンに申し込むことができます。

住宅ローン特約を付加する際には、どちらの型なのかを必ず確認しておきましょう。

まとめ

住宅ローンの本審査では綿密な審査が行われるため、通過後の融資実行取り消しは原則として行われません。しかし、状況によっては取り消されるケースもゼロではないので、注意が必要です。

また、不動産売買契約を締結する際には住宅ローン特約を付加するのを忘れないようにし、特約の内容についても詳細まで確認しておきましょう。

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(最終更新日:2024.04.19)
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