住宅ローンは手取りの何割を目安に? 返済負担率と家計管理のポイント

マイホームを購入するときに利用される住宅ローンは、多くの人にとって「最大の借金」になります。総返済額や毎月の返済額をいくらに設定するのかなどを十分に検討して、返済計画を立てる必要があります。毎月の住宅ローン返済額は、手取りの何割程度を目安に考えると安心なのでしょうか。

この記事では、住宅ローン返済額を考えるベースとなる返済負担率や、年収と手取りの違いについて解説します。また、住宅ローン返済に関して押さえておくべき重要なポイントも紹介するので参考にしてください。

住宅ローンの返済額は返済負担率から考える

住宅ローンの返済額を考える際には、返済負担率を目安にするのが基本です。返済負担率とはどのようなもので、どれくらいを基準にするのがよいのか解説します。

返済負担率とは

毎月の住宅ローン返済額を求めるうえで基本となる返済負担率

返済負担率とは、一定期間の収入額に占めるローン返済額の割合のことです。「返済比率」とも呼ばれ、ローン返済額を収入額で割って算出します。年間のローン返済額を年収で割ったものを%で表すのが一般的です。なお、計算に用いる年収は税込のものです。

たとえば、年収500万円の人が毎月10万円のローン返済をしている場合、計算式は「(10万円×12ヶ月)÷500万円×100」となり、返済負担率は24%と計算できます。

返済負担率が低いと返済に比較的余裕があると考えられ、反対に高いとローン返済が家計を圧迫していると判断できます。

返済負担率は25%以下が目安
返済負担率が低いと返済に余裕がある状態と説明しましたが、実際にどれくらいの数値を基準にすればよいのでしょうか。

多くの金融機関が融資条件の一つとして返済負担率を用いており、【フラット35】では年収400万円以上で返済負担率35%以下を基準としています。ほかの金融機関でも返済負担率35〜40%を基準とするのが主流ですが、これは融資額の上限を示したものなので、実際にこれだけの返済負担率だと家計をかなり圧迫することが予想されるでしょう。

余裕を持って返済できる返済負担率は、一般に25%以下とされています。住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」では返済負担率の平均が23.1%となっており、一定の余裕をもって借り入れている人が多いと考えられます。

出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」

(参考)https://suumo.jp/yougo/h/hensaifutanritsu/

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年収と手取りは違う

年収と手取りの違いをふまえて返済負担率を考える

返済負担率の計算に用いる収入は「年収」であり、自分がそのまま自由に使える「手取り」とは異なります。年収と手取りの違いを詳しく見ていきましょう。

年収とは
まずは年収について見ていきます。年収とは、健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料、所得税・住民税などの税金が差し引かれる前の年間の総支給額のことです。「税込年収」「額面年収」とも呼ばれます。

会社員など給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」欄に記載されている金額が年収に該当します。年収は額面上の収入であり、全額が手元に振り込まれるわけではありません。たとえば、年収500万円の人が年間500万円を自由に使えるわけではないのです。

手取りとは
これに対し、年収から社会保険料や税金を差し引いたものを手取りといいます。手取り額こそ実際に手元に入ってくるお金です。自分が自由に使えるお金がいくらか確認するには、手取り額をチェックする必要があります。

給与所得者の手取りを計算するにあたって、年収から差し引かれる主な項目は次のとおりです。
⚫︎ 健康保険料
⚫︎ 介護保険料(40歳以上)
⚫︎ 厚生年金保険料
⚫︎ 雇用保険料
⚫︎ 所得税・住民税

通常の返済負担率は年収で計算しているため、上記の控除される費用項目は考慮されていません。返済負担率が低いからといって、必ずしも安心とは限らないのです。

例・年収500万円の手取り額は?
一例として、JOBSHILが公開している年収早見表より、年収500万円の人の手取り額目安を確認してみましょう。

出典:JOBSHIL「あなたの手取り年収はどれくらい?早見表で簡単チェック」

年収500万円の人の場合、手取り額の目安は391.1万円であり、年収額の21%程度が差し引かれている計算になります。年収や適用される控除の種類などによって割合は異なるものの、年収のおおむね75〜80%が手取り額の目安です。

手取りで返済負担率を考えると30%

年収ではなく、実際に手元に残る手取り額で無理のない住宅ローン返済額をシミュレーションしてみましょう。先述した年収500万円で想定すると、返済負担率25%で年間ローン返済額は125万円です。ボーナス払いなしの場合、毎月の返済額は10万4,166円となります。

年収500万円の年間手取り額目安は391.1万円なので、手取り額に占めるローン返済額の割合を計算すると以下のとおりです。

125(万円)÷391.1(万円)×100=31.96(%)

上記より、毎月のローン返済額が手取り月額の30%程度になるよう住宅ローンを組めば、無理なく返済できると考えられます。

住宅ローン返済額を考えるポイント

収入をベースに適切な住宅ローン返済額の割合を見てきましたが、適正な返済額を決めるにはほかにも考慮すべき重要なポイントがあります。住宅ローン返済額を考えるにあたっては、各項目を踏まえて総合的に判断するとよいでしょう。

頭金の考え方

頭金を控えめにして手元に資金を残す考え方もある

住宅を購入する際、取得費用の一部を自己資金でまかなうのが主流です。支払いの一部にあてる自己資金のことを頭金と呼びます。

頭金を多く用意すれば住宅ローンの借入額を少なくできるため、将来の返済額も低く抑えられます。ただ、日本では長らく超低金利状態が継続している状況です。むしろ低金利で最大限住宅ローンを借り入れてしまい、手元資金は資産運用に回して資産拡大を図るという考え方もあります。

2022年5月に三井住友トラスト・資産のミライ研究所が公表した「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」によると、頭金ゼロで住宅を購入した人の割合は全体で24.3%。年代別では30代がもっとも割合が高く、頭金ゼロの割合は38.6%にも達しました。30代では頭金ゼロまたは1割くらいという人が全体の2/3近くを占めており、低金利の住宅ローンを最大限活用する傾向が見てとれます。

出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「令和の“住まい”と住宅ローン事情」

返済期間は長いほど有利
近年、40年・50年といった超長期で返済できる住宅ローンも登場していますが、通常の住宅ローンの返済期間は最長35年に設定されています。返済期間が長くなるほど月々の返済額は少なくて済むため、毎月の返済負担は軽くなるでしょう。

返済期間が長くなると支払利息が膨らむため、短期での借り入れに比べて返済総額は大きくなります。それでも先述の考え方と同様、短期で借り入れたときとの毎月返済額の差分を資産運用に回すというのも有効です。差分以上の利回りを達成できれば、短期で返済するよりも資産を拡大できる可能性があります。

ただし、変動金利を選択している場合、今後の金利変動で返済額が高くなるリスクがあるため注意が必要です。

住宅ローン控除利用は必須
住宅ローン返済による経済的な負担を緩和するためには、住宅ローン控除の活用が欠かせません。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、借入期間10年以上の住宅ローンを組んで住宅を取得した場合、年末の住宅ローン残高×0.7%相当額が所得税から控除される減税制度です。

要件を満たしていれば、新築住宅の場合は最大13年間、中古住宅でも最大10年間控除が受けられるため、大きな節税効果が見込めます。ただし、勤務先の源泉徴収を受けている給与所得者でも住宅ローン控除申請には初年のみ確定申告が必須となるため、手続きを忘れないよう注意しましょう。

なお、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅を購入した場合については、省エネ基準を満たしていることが新たに控除要件となっています。

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まとめ

住宅ローンの返済負担を測る指標として広く用いられるのが返済負担率です。しかし、収入の基準を税込年収・手取り額どちらにしたとしても、返済負担率はあくまで目安に過ぎません。

実際の負担感は、家族の人数や支出額、ライフイベントなどによって大きく異なってきます。返済負担率が低いからといって油断していると、将来の思わぬ支出で負担が重くなるリスクもあるでしょう。

住宅ローンの借り入れは家計を見直すチャンスととらえ、適切に家計管理する習慣を身につけることが大切です。

(最終更新日:2024.04.19)
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