3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭の拠点となる香川県高松市。現在、その玄関口であるJR高松駅周辺が2025年の関西万博に向けて現在各所で新築ラッシュとなっています。再開発が進む高松のウォーターフロントと中心市街地の様子をレポートします。
高松市のウォーターフロント「サンポート高松」とは
JR高松駅周辺に広がるサンポート高松と呼ばれるエリアは、海陸交通のターミナルから、ホテル、イベントなどが行われる広場、プロムナードなどで構成される香川の玄関口とも言えるエリアです。
かつてはJRの連絡船やホーバークラフトが出入りしていた高松港の半分を埋め立てるという大規模な再開発が1990年代に行われたことで、現在のような人々の憩いの場としてのウォーターフロントエリアになりました。
2000年にはJR高松駅新駅舎・旅客ターミナルビルが完成。ブライダルチャペルやレストランを備えたホテルが建ち、それまで交通拠点として機能していた駅前広場が、にぎわいの場に生まれ変わりました。
サンポート高松の中核を担う再開発ビルとして2004年に完成したのが「高松シンボルタワー」です。オフィス、商業施設、会議室、アート展やコンサートなど様々な催しが行われるイベントホールなどを擁する複合商業施設で、香川県民へのICT教育やDX化の普及に関する施設や、コワーキングスペース、人と企業のイノベーション創出の施設などもあります。また、ビル内にある「かがわ国際会議場」は、2023年9月に開催されたG7香川・高松都市大臣会合の会場にもなりました。ビルには合同庁舎が隣接するなど四国における政治経済の拠点エリアともいえます。
再開発の中心、JR高松駅周辺に新しい施設が次々建設中
現在、さらに再開発は拡充しています。まずは、JR高松駅北側で2024年3月のオープンに向けて開発を進めている高松駅ビル「TAKAMATSU ORNE(タカマツ オルネ)」。西日本では「いる」という言葉を「おる」といい、四国でも「おるね」は広く使われている言葉(方言)です。言葉の響きがやわらかく、どこか懐かしく、親しみやすく、四国らしいと感じてもらえることから「ORNE(オルネ)」の名称としました。建物は、地上4階の商業棟と4層5段の駐車場棟からなる施設。北側に設置する屋外広場は、シンボリックな大屋根と、人工芝、ウッドデッキで構成され、イベント開催など駅前交流拠点として活用できる予定です。現在、高松の有名和菓子店や土産店、スーパー、シェアラウンジ等の出店が決まっており、最終的には約70店舗の出店を予定しています。観光客だけでなく地域に住む人々にとってますます便利になりそうです。
西側には徳島文理大学の新キャンパス棟も建設中で、若者でにぎわうエリアとして期待を集めています。
もう一つ、2025年3月に開館予定で注目を集めている施設が、高松シンボルタワーの北側に建設中の香川県立体育館「あなぶきアリーナ」です。イベントの形態に合わせて最大1万人の収容が可能。地域の大会から国際大会まで幅広い室内競技が可能で、MICE(会議や展示会)などの多様な役割を果たしていきます。中四国最大級のアリーナとして、今後はアーティストのアリーナツアーに香川県が会場として選ばれる可能性も高いでしょう。海を臨むように建つアリーナは、瀬戸内国際芸術祭を機にオープンした豊島美術館を設計したSANNAによるデザインで、島めぐりの拠点エリアにふさわしい景観を生みそうです。
駅から高松港へ徒歩数分。気軽に島めぐりができる
JR高松駅前広場から高松港へは、道路を横断する必要のない屋根付きの直結通路で繋がっています。高松港からは、瀬戸内国際芸術祭の会場でもある直島や小豆島、豊島といった島々に行くフェリーや高速船が就航しています。ここ数年で、リニューアルした船体やインバウンドに対応した案内板・アナウンスなどサービスが充実し、快適な船旅が楽しめるようになりました。平日の高松港は、周辺で働く人たちの憩いのスポットとなり、天気の良い日のランチタイムには、プロムナードに並んだベンチでお弁当を食べたり赤灯台付近までウォーキングをしたりと、海辺のまちを楽しむ人々の姿が見られます。
現在、高松港には5万トン級の旅客船が寄港できますが、2023年春に旅客船係留施設を延長する港湾計画変更案をまとめたことにより、今後、11万トン級の大型クルーズ船まで受け入れが可能になる予定です。
ローカル電車ことでんで、市街地へ
サンポート高松エリアから中心市街地へは、ローカル電車、高松琴平電気鉄道(通称:ことでん)の高松築港駅から2駅で行けます。高松築港駅は、隣接する玉藻公園(旧高松城)のお堀沿いに線路が走る、全国でも珍しい駅です。旧高松城は、お堀に瀬戸内海の海水が流れ込む水城(みずじろ)として知られており、ホームで電車を待つ間にお堀を見下ろすと、鯉ではなく鯛が泳ぐ様子が見られるかもしれません。
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商店街に分譲マンション建築ラッシュ
ことでんで高松築港駅から2駅目の瓦町駅周辺は、飲食店や各種ショップが集中しているエリアで、南北に続く高松市の商店街は、構想からおよそ20年の月日をかけて2010年頃に大規模な再開発が行われました。人が暮らす商店街の実現のため、マンションやスーパー、クリニックを誘致し、車がなくても便利に暮らせる商店街として生まれ変わりました。その再開発の後期にあたる2012年にオープンした商業施設「丸亀町グリーン」では、1階の広場でクリスマスマーケットやバレンタインフェアといったイベントが頻繁に行われています。
当時すべての商店街がリニューアルしたわけではなく、丸亀町グリーンから南のエリアにあたる南新町商店街と常磐街は手つかずのままでしたが、2023年に入り続々と分譲マンションが建設されています。アーケード沿いに建つマンションからは、ドラッグストア、スーパー、クリニック、讃岐うどん店、大きな公園まですべて徒歩で行ける距離にあります。
サンポート高松から商店街にかけての高松市中心部エリアは、カーフリーデーを設けるなどさまざまな社会実験を行っています。地方ならではの車社会のイメージを覆しこれからの時代にフィットした環境配慮型都市になるための取り組みが進んでいます。