住宅ローン返済が苦しいとき特定調停は役に立つのか メリット・デメリットを解説

急な収入減や病気などで、住宅ローンの返済が難しくなることがあります。住宅ローンの返済をしないままにしていると、最終的に担保となっている自宅を競売にかけられ、住む家を失うことになりかねません。

住宅ローンなど借金の返済が苦しくなったときの対策として「債務整理」の一つである「特定調停」があります。

今回は、特定調停の概要とメリット・デメリットについて解説します。

特定調停とは

特定調停とは、返済の義務がある人(債務者)が家庭裁判所に申し立て、お金を貸している人(債権者)との話し合いを仲介してもらい、新しい返済条件について話し合う機会を持つ仕組みです。

債権者としても、できるだけ継続的に返済してもらいたいと思っている場合が多いため、毎月の返済額の減額などに応じてくれる可能性があります。

特定調停の流れ

特定調停の流れ

ここでは、特定調停がどのような流れで進められるのかについて解説します。

調停を申し立てる
特定調停を利用するには、債務者が自分で簡易裁判所に申し立てることになります。債権者(金融機関)の本社もしくは支店がある住所の裁判所で手続きを行うので、場合によっては遠くへ出向かなければなりません。

申し立ての際には、印鑑、印紙代のほか、郵送用の切手代が必要です。また、財産の状況がわかる明細書、関係権利者一覧表などの書類を持参しましょう。

申し立てを受けた簡易裁判所は、債権者に通知書を送付します。このときから金融機関等は、債務者に対して返済を要求することができません。

期日通知書が届く
申し立てを受けた裁判所は、調停準備日を決め、「期日通知書」と呼ばれる呼出状を申立人である債務者に送ります。

届いた期日通知書に書かれている日にちに赴くのが難しい場合は、裁判所に連絡をし、再度日程を調整してもらいます。

地方に住んでいたり、会社勤めでなかなか日程を合せにくかったりするケースも考えられますが、調停を早く進めるためにもできるだけ指定された調停準備の日に合せるようにしましょう。

調停準備日
調停準備日に、印鑑や印紙代、切手代のほか、住宅ローンの契約書、返済時の明細書、保有する財産の詳細がわかるもの、住民票の写しなどを用意して、簡易裁判所に行きます。

裁判所では、調停委員が債務者の返済能力について詳しくヒアリングし、特定調停で解決できるかどうかを検討します。そのためにも、返済が困難な状態にあることが示せる資料(貯蓄残高や家計の収支がわかるものなど)は必ず持参するようにしましょう。

調停期日

簡易判所の調停委員が調停を行う

調停の期日に、調停委員が債務者および債権者それぞれと話をします。債権者と債務者が直接会うことはありません。

調停委員は利息制限法に基づいて借金の残高を再計算し、債務者の了解を得たうえで毎月の返済計画を立て、債権者と条件の交渉を行います。債権者が調停委員の提示した条件に合意すれば、調停委員はその内容を「調停調書」という形にまとめます。

返済の実行
2週間以内に異議が出なければ、調停調書が正式に家庭裁判所から送付されます。正式な調停調書は今後の返済に重要な資料なので、大切に保管しておきましょう。

調停が成立すると、債務者は調停調書の内容に基づいて、口座引き落としや銀行振込などの方法で返済を開始します。

調停調書は確定した判決と同じ効力を持つため、必ずその内容に従うようにしてください。

完済
完済できれば特定調停手続きは終了となります。また、返済が再び滞らない限りは、調停調書の内容以上の督促を受けることはありません。

特定調停のメリット

特定調停を利用するメリットは何があるでしょうか。

費用が安く済む
特定調停は、債務者自身が裁判所に申し立てるため、弁護士や司法書士に依頼する必要がありません。そのため、弁護士報酬や司法書士報酬などが不要な点がメリットです。

借金が減額されることがある
住宅ローン以外にも借り入れがある場合、どの債権者と合意するのかを自由に選ぶことができます。債権者によっては、これまでの借入金の利率が軽減され、今後の返済負担が楽になるかもしれません。

借金をした当初にさかのぼって、利息制限法で定められている上限利率に基づいて再計算されるため、返済総額が減額される可能性があります。また、返済時期のリスケジュールなどもできる場合があります。

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特定調停のデメリット

特定調停には以下のようなデメリットもあるので、メリットとデメリットを比較したうえで利用を考えるようにしましょう。

調停が成立しないことがある
特定調停では、裁判所の調停委員が間に入り、債務者と債権者との話し合いを仲介します。しかし、調停委員が提示した内容に債権者が納得しなければ、合意には至りません。そのため、債権者が受け入れてくれる妥協点を見つけるまで話し合いを続けなければならず、調停自体が成立しないケースも考えられます。

調停委員も債務者の現状を加味しながら条件を考えて提示しますが、場合によっては再度条件を見直さなければならなくなることもあります。

住宅ローンの返済額は減額できない
特定調停では、住宅ローンの借入金額は減額できません。住宅ローン以外の借金が大きい場合は、特定調停を利用して毎月の返済額を減らせるメリットがあります。そのため、特定調停は、住宅ローン以外の債務の減額に使うのが有効です。

ブッラクリストに掲載される

特定調停を行うとブラックリストに掲載される

特定調停は債務整理の一つであるため、利用すると事故情報として日本に3つある信用情報機関に一定期間登録されます。事故情報(ブラックリスト)に載っている間は、別のローンやクレジットカードの申し込みができなくなります。

ブラックリストには、一般的に契約期間中および契約終了後(完済など)5年間まで登録され、その間は新しくローンを組んだり、クレジットカードを作ったりできないと考えておきましょう。

調停成立後の支払いを滞納すると直ちに強制執行される
調停成立した後、条件に基づいた返済計画を守れなかった場合、債権者は直ちに強制執行が可能になります。

給与の差し押さえなど強制執行が行われると、今後の生活が成り立たなくなる可能性があります。

まとめ

特定調停は債務整理の一つで、自分で簡易裁判所に申し立てるため、費用を抑えられるのがメリットです。

ただし、特定調停では住宅ローン返済額は減額されません。住宅ローンの返済に苦しんでいる人は、あまりメリットを感じない可能性もあります。

住宅ローンの滞納が避けられないのであれば、早い段階で自宅を売却するか(一般売却するか)、金融機関に相談して任意売却を検討しましょう。そうすれば、自宅の差し押さえや競売といった事態を避けることができます。

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