マンション価格が高騰し、購入を諦めかけている人も少なくないのではないでしょうか。新築はまだまだ上昇が続きそうですが、中古に関してはそろそろピークに達し、横ばいから下落に転じるのではないかという見方も出ています。市場動向をしっかりと見極めて、購入タイミングを考えてみてはいかがでしょうか。
新築より中古のほうがマンション価格が上昇
最近の新築マンションの販売価格の平均と、中古マンションの成約価格の平均をグラフ化したのが図表1です。
どちらも右肩上がりの上昇が続いていますが、よく見ると新築は年度によって動きの幅が異なり、ギザギザの上昇カーブになっています。一方、中古はほぼ一直線に上がり続けています。2012年度と2022年度の10年の間に、新築は4,563万円から6,907万円と51.4%の上昇ですが、中古は2,515万円から4,343万円と、72.7%の上昇率となっています。実は、中古は新築以上に価格が上がっているのです。
中古は新築に対する価格の割安感から購入する人が多いのですが、ここまで高くなってくると、その割安感が失われつつあり、買えなくなってしまう人が出てきそうです。それには理由があります。
中古マンション購入者の返済負担率は平均16.6%
国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査」によると、新築マンションを買った人の平均世帯年収は960万円。対して、中古マンションは657万円となっています。平均年収に300万円以上の差があり、購買力には大きな違いがあるのです。
新築マンションの購入層は比較的年収が高いので、ある程度価格が上がっても対応可能でしょう。しかし、中古マンション購入層は価格上昇に対応できない人が増えて、中古マンション市場が弱含みになるのではないかという見方ができるのです。
マンションを購入する人の大半は住宅ローンを利用しますが、住宅ローンを含めた各種ローンの年間総返済額は年収の25%程度の範囲に抑えるのが安心と言われています。実際、国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査」をみると、新築マンションでは返済負担率(世帯年収に占める住宅ローン年間支払額の割合)の平均が17.4%で、中古マンションは16.6%となっています。
2022年の中古マンション成約価格の平均は4,343万円ですから、そのうち4,000万円のローンを全期間固定金利型・金利2%・35年元利均等・ボーナス返済なしで利用する場合で試算すると、毎月返済額は13万2,505円となります。中古マンション購入者の平均世帯年収657万円の場合の返済負担率は24.2%に達し、中古マンション購入者の返済負担率の平均16.6%を上回ります。これでは、購入をためらう人が増えても不思議ではありません。
新築マンションは3ヶ月後も値上がりが続く?
実際、中古マンション市場にはこのところかすかな異変が生じつつあります。
マンションや戸建て住宅の価格動向について、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)不動産総合研究所では、四半期に一度、全宅連加盟のモニター企業を対象に、市場動向に関する調査を実施しています(調査期間:2023年10月6日~10月20日)。
それによると、図表2にあるように新築マンションの現在の価格動向については、8%のモニター企業が「大きく上昇している」とし、「やや上昇している」の51.8%を加えると、およそ6割のモニター企業が、価格が上昇していると回答しています。
図表3は、3ヶ月後の不動産価格がどうなっているとみるか、その予測を聞いた結果です。新築マンションの場合6.4%が「大きく上昇している」とし、「やや上昇している」の41.8%と合わせると上昇しているとみる企業は48.2%に達します。半数近いモニター企業が、3ヶ月後も新築マンションの価格は上がり続けているだろうと予測しているわけです。
中古マンションは3ヶ月後に下落という見方も
それに対して、中古マンションの現在の価格動向については、「大きく上昇している」が3.6%、「やや上昇している」は26.8%と、上昇と回答の合計は約4割です。下落していると回答した企業より上昇していると回答した企業のほうが多いのですが、新築マンションに比べると上昇していると回答した割合は大幅に少なくなっています。
さらに、3ヶ月後の予測については、「大きく上昇している」は1.4%に減少し、「やや上昇している」も20.3%に減ります。上昇していると予測する企業の合計は21.7%で、新築マンションの48.2%の半分以下の水準です。
一方、「やや下落している」が13.8%、「大幅に下落している」が2.2%で、下落の合計は16.0%です。上昇は21.7%ですから、上昇と予測する企業のほうが多いものの、下落と予測する企業も前回調査より増加しており、弱含みになるのではないかとする見方も強まっていると考えられます。
中古マンションの取引は減少傾向が明確に
取引件数の動向に目を向けてみると、そうした見方がより鮮明になります。
図表4にあるように、現在の中古マンションの取引動向については、「大きく増加している」が0.7%、「やや増加している」は14.0%で、増加の合計は14.7%です。それに対して、「やや減少している」は25.7%、「大きく減少している」は3.7%で、減少の合計は29.4%。減少の合計が増加の合計の2倍になっています。
さらに、3ヶ月後の取引動向の予測に関しては、図表5にあるように、「大きく増加している」が0.7%、「やや増加している」は11.1%と、増加の合計は11.8%です。一方、「やや減少している」は23.7%、「大きく減少している」は3.7%で、減少の合計は27.4%に達します。3ヶ月後の予測については、減少が増加を15.6ポイント上回るダブルスコアになっています。
現在でも中古マンションの取引が減少傾向にある上、3ヶ月後にはさらに減少するだろうと予測しているモニター企業が多いわけです。
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中古マンションは1月以降にピークアウトする!?
中古マンション価格が新築マンション以上に上昇し、割安感という中古マンションの最大のメリットが失われつつあります。実際、取引件数が減少しており、今後もさらに減るのではないかという懸念が強まっています。このまま、取引件数が減り続けていけば、先行きへの不安感から、今のうちに売ってしまったほうがいいのではないかという「売り急ぎ」が増加し、それが中古マンションの売出価格を引き下げ、成約価格の低下につながる可能性があります。
あくまで、ひとつの可能性ではありますが、マンション購入を考えるときには、市場動向をきめ細かくチェックしながら、対応を考えていくとよいでしょう。
(最終更新日:2024.04.19)