住宅ローンを払えない… 競売を回避するためにはどうすべきか?

家計が苦しくなると住宅ローンの返済を滞納しがちになり、その結果さまざまな不利益をこうむることになります。競売にかけられる段階まで至る頃には、自宅を売却せざるを得ない状況に陥っていることでしょう。

住宅ローンが払えず自宅を手放さなければならない状況になったとき、競売を回避するためにはどのような方法があるのでしょうか。この記事では、住宅ローンの滞納が続いたときに起こることを解説するとともに、競売回避に有効な方法を紹介します。

住宅ローンを払えないと起こること

そもそも住宅ローンの返済が厳しくなって滞納が続くと、どのような事態が発生するのでしょうか。住宅ローン滞納後の一般的な流れを見ていきましょう。

督促状が届く

滞納し始めてから2〜3ヶ月が経過すると督促状・催告状が届く

住宅ローンを1ヶ月滞納した程度であれば、すぐに入金すれば問題にならないことも多いでしょう。滞納し始めてから2〜3ヶ月が経過すると、住宅ローンの貸し手である金融機関から督促状や催告状などが届きます。

督促状に記載されるのは「期日までにこれだけの金額を支払うように」という内容のほか、このまま返済がなければ「期限の利益を喪失することになる」「ブラックリストに登録することになる」といった債務者に対する忠告です。

一般的に滞納が3ヶ月以上になるとブラックリストに掲載されます。ブラックリストとは信用情報機関に登録された事故情報のことを指し、掲載されてから数年間は新たなローン(住宅ローンを含む)を組みづらくなります。クレジットカードの新規発行や更新が難しくなることも考えられ、生活にも支障が出かねません。

期限の利益を喪失する
住宅ローンを滞納し始めてから3〜6ヶ月が経過すると期限の利益を喪失してしまいます。

期限の利益とは、債務者が借入金を長期に分割して支払うことができる権利のことです。これがあるからこそ、最長35年間という長いスパンでの分割返済が実現しています。延滞が続くとこの権利を失うことになるため、これまでのような月々での住宅ローン返済ができなくなります。

「期限の利益喪失通知書」という書類が届くと、債務者は借入金・遅延損害金を期日までに一括で支払わなければなりません。月々の返済も難しい状況では一括返済など不可能と考えられるため、期限の利益の喪失はどうにかして回避したいところです。

保証会社が代位弁済を行う
期限の利益の喪失によって残債の一括返済を求められても、月々の返済を滞納している債務者に一括返済する余力はありません。このような場合には返済不能に陥った債務者に代わり、保証会社が金融機関へ残債分を支払います。これが代位弁済と呼ばれる手続きです。

保証会社とは債務者から保証料を受け取り、住宅ローンの返済が滞ったときには債務者の代わりに返済を行う会社です。代位弁済が行われた時点で、債権者が金融機関から保証会社になります。保証会社が返済を肩代わりしたからといって債務者の返済義務がなくなるわけではなく、単に返済先が保証会社へ変わるだけです。そのまま放置すれば最終段階の競売へと進んでしまいます。

競売が開始される

最終的には競売で自宅を差し押さえられる

滞納し始めてから6〜10ヶ月程度経過してもなお返済がないと、代位弁済によって債権者となった保証会社・債権回収会社が裁判所に競売の申し立てを行います。裁判所がこれを認めると競売という手続きが開始されます。

競売(不動産競売)とは、不動産を担保にした借入金などの債務履行ができなくなった場合に、債権者の申し立てに応じて地方裁判所が行う手続きです。競売の実施が決定すると、地方裁判所から債務者へ「競売開始決定通知書」が送付されます。この文書が届くというのは「自宅が裁判所によって差し押さえられた」ことを意味し、以降は債務者の意思とは関係なく強制的に競売の手続きが進行していきます。

落札者への売却が許可され代金が支払われると、その代金は債権者の債権回収に充当。落札者が物件の新たな所有者となり、債務者は自宅を明け渡さなければなりません。

また、競売での売却代金で住宅ローンを完済しきれない場合、残債を返済し続ければならない点も要注意です。

競売を回避する方法

競売は市場価格よりも何割か安い価格で自宅を売却せざるをえないうえ、自宅が競売にかけられていることが公表されたり、決められた期限までに強制的に出ていかなければならなかったりと、さまざまな不利益があります。ここからは、競売を回避するための方法を紹介しましょう。

一般売却
不動産仲介会社などを通じて行う通常の不動産取引で自宅を売却できれば、競売を回避できます。ブラックリストに掲載される前であれば、債権者の同意がなくても自宅を売却可能です。

通常、住宅の売却には数ヶ月以上かかるため、住宅ローンの返済が厳しいと感じ始めたら、なるべく早い段階で売却活動を開始するようにしましょう。周辺相場を踏まえた価格設定になるため、問題なく進めばほかの方法よりも高い価格で売却できます。

ただし、売却価格が住宅ローンの残債よりも少ない場合(オーバーローン)は完済しきれず、借金の返済が続くことになります。

任意売却

競売を回避するには任意売却を行う

住宅ローン返済が厳しくなったときに用いられる代表的な売却方法が「任意売却」です。

任意売却とは、債権者である金融機関の同意を得て一定の条件で自宅を売却する方法のこと。物件情報が公になる競売と異なり、売主情報が非公開のためプライバシーが保たれる点や、競売よりも高い価格で売れる可能性もある点が任意売却のメリットです。

売却代金をローン残債の返済に充当してもらえることに加え、債権者との交渉次第では引っ越し費用などの諸費用を売却代金から捻出できるケースもあります。

こうした一般売却にはないメリットのある任意売却ですが、デメリットもあるため注意しましょう。たとえば、任意売却による売却価格は競売に比べれば高くなるものの、通常の市場価格よりは低くなることが多くなっています。また、任意売却が期限までに成立しなければ、結局競売の手続きへと進み、結果的に自宅から強制退去させられるリスクがあることにも注意が必要です。

リースバック
リースバックにより賃貸物件として自宅に住み続ける方法もあります。リースバックは不動産会社にいったん自宅を売却し、その後同じ不動産会社と賃貸借契約を締結。家賃を支払って、貸家となった自宅に住み続けるという手法です。

住宅ローン返済が難しくなったケースでは、リースバックを取り扱う不動産会社への任意売却とセットで行われることもあります。住宅ローンの残債を処理しつつも、引き続き自宅に住み続けられるのは大きなメリットです。

一方、不動産会社に対する売却価格は市場価格よりも低い傾向にあり、家賃はむしろ高めに設定されがちなのはデメリット。リースバックで支払う家賃が、現状の月々のローン返済額よりも少なくなるよう事前に確認しておきましょう。

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まとめ

住宅ローンが払えない状況が続くと、最後は自宅が競売にかけられ強制退去させられてしまいます。競売を回避するには、一般売却・任意売却・リースバックなどの方法がありますが、いずれにせよ、少しでも早い段階で対処することがより良い解決につながるかもしれません。

住宅ローンの返済が厳しいと感じ始めた時点で手を打つなら別の対処法もあります。返済に負担を感じたなら、金融機関へ相談するなどできる限り早めの対処を心がけましょう。

(最終更新日:2024.01.05)
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