神奈川県横須賀市の京急本線追浜駅で2棟の複合高層マンションの建設が予定されています。追浜はあまり知られているとは言えない駅ですが、京急本線の特急停車駅で都心、横浜への利便性に加え、海も山も近く、オンもオフも楽しい場所です。
海軍が有名にした街、追浜
難読地名というほどではありませんが、知らないとなんと読むのか、悩んでしまうのが京急本線追浜(おっぱま)駅(神奈川県横須賀市)。
京急電鉄ホームページ内の駅の概要によると、開業当時の駅周辺は田んぼが広がる寂しい場所だったそうです。かつては浦郷村と呼ばれていた地域で、村の東のはずれにあった「おいはま」という浜に1916(大正5)年に海軍航空隊が置かれて一躍脚光を浴びたことから、その地名が駅名に採用されたものだとか。
確かに1896~1909年の地図を見ると現在の駅周辺には追浜という地名はありません。また、現在は海沿いに工場が広がっていますが、その時代には海がもっと駅のほうにまで入り込んでいました。現在の工場エリアは、それ以降に埋め立てられた土地ということです。
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特急停車駅で都心へもアクセス快適
さて、その追浜駅ですが、京急本線の特急停車駅になっており、品川から10駅目で、所要時間は約40分。横浜駅からなら上大岡駅、金沢文庫駅、金沢八景駅に次ぐ4駅目で、所要時間は20分ちょっと。意外に都心、横浜中心部に近い駅なのです。
しかも、京急は羽田、成田へのアクセスに優れている点も特徴。羽田直通は午前中だけ、成田直通は土曜日、休日の主に午前中のみなどでそれほど本数はありませんが、横浜、品川などで適宜乗り換えれば格段に利用しやすくなります。
意外な便利さがたくさんある街
車利用時には追浜駅前を走る国道16号線、横浜横須賀道路の逗子ICと朝比奈IC、首都高速湾岸線の幸浦ICが利用しやすい位置にあります。都心に向かう場合はもちろん、横須賀、三浦、葉山や鎌倉などの観光地に向かうのにも便利です。
アーケードのある商店街にショッピングセンター
便利なのは足回りだけではありません。追浜駅は、改札は一つしかありませんが、出口は西口、東口があり、東口を出ると正面にはアーケードのある商店街が長く続いています。
東口正面だけでなく、追浜駅前を南北に走る国道16号沿いにも商店街が伸びており、初めてこのまちに降りた人には意外なほど商店街、飲食店があると思われるかもしれません。郊外の商店街あるあるで、全部が全部活気があるとまでは言えないものの、少なくとも数はあり、飲食店なども含め、バリエーションもあります。
駅から見えて左手にはショッピングセンター「サンビーチ追浜」もあります。スーパーやドラッグストア、100円ショップなどが入っており、生活に必要な一通りはここで入手できます。
病床数の多い病院も複数ある
もうひとつ、意外に多いのが病院。改札を出て西口から階段を上がったところには1946(昭和21)年に設立された湘南病院があり、こちらは内科、外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、歯科など13科がそろう地元密着の病院。病床も287床あります。
もうひとつ、駅からは多少離れますが、バス便利用でも行ける場所にあるのが横浜南共済病院。診療科目33科の神奈川県の災害拠点病院で、県内に21ヶ所ある24時間体制の救命救急センターのひとつ。病床数も565床あります。
街なかを歩いていてもクリニックが目に付き、意外に思ったほど。子どもや持病のある家族のいる家庭、健康が気になる人などには安心できるエリアと言えるでしょう。
2棟のタワーマンションを建設する再開発計画
さて、その追浜駅前で再開発が予定されています。「追浜駅前第2街区第一種市街地再開発事業」です。対象となっているのは駅の正面に延びる商店街の駅を背にして右手側、前述のショッピングセンターサンビーチ追浜の向かいに当たる場所です。
昭和50年代からの計画が動き始めた
追浜駅前の再開発計画は昭和50年代以前からあり、サンビーチ追浜は第1街区として1979(昭和54)年に都市計画決定が告示され、1984(昭和59)年に建築工事が完成したもの。第2街区についても都市計画自体は同じ年、つまり、1979(昭和54)年に告示されていました。今から44年前です。
ところが、第1街区と異なり、長期に渡って事業が未着手になっており、土地利用の問題に加え、建物の不燃化、耐震化など防災的な観点からも早急な再開発の推進が課題になっていました。それがようやく動き出すわけです。
現状の再開発対象エリアは低層の店舗、住宅、空き地が混在する地域になっており、道を挟んだ反対側に比べると明らかに低未利用の状態。それが今後、2つのブロックに分けて開発される予定です。
住宅は146戸、191戸を予定
追浜駅前第2街区市街地再開発組合の事業計画書によると、計画では東西に細長い予定地を市道100号線で2分割。駅に近い敷地にA地区として地上24階建て、高さ約98メートル、隣のB地区には地上27階建て、高さ約100メートルのいずれもタワーマンションを建設します。
A地区の住戸数は146戸を予定しており、内訳としては1LDK(約53平方メートル)1戸、2LDK(約56平方メートル)38戸、3LDK(約73平方メートル)105戸、4LDK(約98平方メートル)2戸となっています。また、地下1階には駐輪場、1階から3階までは店舗が入り、4階は住宅共用、店舗共用とされています。
B地区の住戸数は191戸の予定で、内訳は2LDK(約57平方メートル)31戸、3LDK(約76平方メートル)132戸、4LDK(約92平方メートル)28戸。A地区に比べて広めの住戸が多くなっています。
駐輪場、店舗などはA地区同様に用意されますが、B地区で注目されるのは3階に図書館が予定されていることです。
図書館、広場やペデストリアンデッキも整備
現在、追浜駅近くには駅から歩いて12分ほどのところに追浜コミュニティセンター北館との複合施設として横須賀市北図書館がありますが、駅前にあるとなればより便利に、使いやすくなることでしょう。
当然ながら敷地内には歩道上空地、広場が整備されることになっており、歩行者の安全性と快適性の向上が図られます。また、駅と施設、施設間をつなぐペデストリアンデッキが整備されることで、駅から直通の暮らしが実現します。
現在のところ、着工は2025年5月となっています。3年弱の工事期間を経て、2028年の年度末には竣工するという計画です。
駅前の風景を大きく変える計画も
もうひとつ、これに合わせて駅周辺の交通の課題を解決しようという気運もあります。追浜駅周辺では駅前にロータリー的な空間がないため、バス停が道路上に分散、タクシー乗り場も駅から少し離れたところにあります。
それを集約した公共交通ターミナルを整備しようと、国土交通省関東地方整備局と横須賀市が検討を始めているのです。
変わるのは交通利便性だけではない
関東地方整備局がまとめた「追浜駅交通結節点整備事業計画案」によると、駅前ゾーンにバス・タクシー乗り場、一般車乗降場、商業施設、公共施設、多目的スペースを設けることが想定されています。
再開発と同時に駅周辺の基盤整備の検討が進んでいけば、単に住宅が増えるだけでなく、より暮らしやすく、安全に便利になっていくはず。交通結節点整備事業計画についてはまだ広く周知を図る段階のようですが、今後、どうなっていくか、注目しておきたいところです。
遊びもあれこれ楽しい追浜エリア
最後に実用面以外での追浜というまちの魅力について触れておきましょう。三浦半島ということで海のイメージが強いと思いますが、実は山もすぐ近く。横須賀市観光協会が作っている市内のウォーキングコースを見ると、追浜駅から2時間ほどで行ける鷹取山を歩くハイキングコースが紹介されています。地元の人に聞くと、鷹取山は気軽に行けるハイキングスポットとして地元の人たちにはおなじみの山なのだとか。
横須賀市、横須賀商工会議所などによる横須賀集客促進・魅力発信実行委員会が作っている「横須賀市観光情報」というサイトにも多数のコースが紹介されています。
海、釣り好きには楽しみがいっぱい
もちろん、海も近く、磯遊び、シュノーケリング、釣り、ウィンドサーフィンなどの海でのアクティビティもさまざまに楽しめます。
個人的には駅近くを流れる鷹取川にすら魚が泳いでいる姿が見られてことに感激しました。追浜駅近くでは市のリサイクルプラザ「アイクル」の裏手にある海釣りコーナーが人気だそうで、アジ、サバ、スズキ、キス、カワハギなどから、アイナメ、メバル、カサゴなどの根魚が釣れるそうです。
スポーツを見る、学ぶ、やる楽しみも
もうひとつ、追浜はスポーツの街でもあります。横浜DeNAベイスターズのファーム戦が行われる横須賀スタジアム、マリノスサッカースクールがあり、海辺にある日産のテストコースを走れることで話題の追浜マラソンも開催されています。
駅から徒歩15分ほどの距離にある追浜公園にはテニスコート、軟式野球場、プールなどのある北体育会館もあり、見るもよし、するもよしといったところ。身体を動かすのが好きな人には山も海も施設もありということです。
あまり知られていない街かもしれませんが、訪れてみると魅力はいろいろ。ハイキングがてら、駅前の開発地やその周辺の雰囲気をチェックしてみてはいかがでしょう。まだ、開発には時間がかかることからじっくり検討する時間があるのもメリットでしょう。
(最終更新日:2024.04.19)