就職・転職を考えるときや給与やボーナスをもらったとき、家計のやりくりに悩んでいるときなどに「『みんな』どれくらい稼いでいるの?」と気になったことは誰しも一度はあるのではないでしょうか。今回は、9月に国税庁から発表された調査結果から、「平均年収」をみていきます。「同世代は、どのくらい稼いでいる?」「あの業界は高収入?」など、あなたの気になる観点から、データを選んでみてみましょう。
給与所得者の平均給与は458万円
2023年9月27日に「令和4年分民間給与実態統計調査(国税庁)」の結果が発表されました。これは源泉徴収を行う民間の事業所に勤める給与所得者を対象とした調査で、公務員や自営業者は対象外。企業に勤める役員・会社員、パート・アルバイトなどが調査対象となっています。
この調査によると、2022(令和4)年の平均給与(平均給料・手当、平均賞与の合計)は「458万円(前年比2.7%増)」でした。近年は物価上昇も著しいので、「給料が上がった」実感は薄いかもしれませんが、令和2年以降は上昇傾向にあります(図表1)。
ただし、図表1を見ればわかるとおり、以前から平均給与は男女で大きな差があります。2022(令和4)年の男性の平均給与は563万円、女性は314万円です。女性は結婚や子育て後、正社員からパートに変わり、いわゆる「扶養の範囲内で」働く人も多いため、平均給与にも影響が出ているようです。
平均=「みんながもらっている額」ではない
「平均給与」をまず確認しましたが、「平均=みんながもらっている額」ではないので注意が必要です。私見ですが、「みんなの年収はどれくらいかな」というときの「みんな」は、過半数以上がもらっている金額をイメージしませんか?
しかし、仮に「10人の年収の平均が500万円でした」という場合、「過半数の年収が500万円」とは限りません。10人全員が500万円という場合もありますが、9人は100万円、1人は4,100万円(100万円×9+4,100万円÷10)の場合でも「平均500万円」になります。わずかな突出したデータが混じると、「平均」はイメージから離れた数字になることもあります。
給与階級別では、男性400万円~500万円、女性100万円~200万円がボリュームゾーン
そこで、次に、「給与階級別給与所得者の構成割合」を見てみましょう。給与額を100万円以下から2,500万円以上まで14の階級に分け、それぞれの構成割合を示したものです。図表2では、割合の多い3つの階級に色を付けてみました。
男性は400万円超500万円以下(17.7%)、女性は100万円超200万円以下(21.5%)が最も大きくなっています。「平均給与」は、男性563万円、女性314万円でしたから、構成割合の最も高い階級よりも大きな数字になっていますね。イメージしている「みんな」の平均年収は、「平均給与」より少なめだと考えてよいでしょう。
業種によって異なる平均給与
平均給与は業種によっても差があります。平均給与を業種別にみると(図表3)、最も高い「電気・ガス・熱供給・水道業」の747万円と、最も低い「宿泊業、飲食サービス業」の268万円では479万円の差があります。
男性は60歳未満までは、年齢が上がれば収入が上がる
「同年代と比べて、自分の年収は…」というのも気になるところですよね。
男性の場合、60歳未満までは年齢が上がるほど平均給与も上がっていきます。一方女性のピークは「25歳~29歳」で、そのほかの年代ともあまり大きな差はありません。女性は結婚や子育て等でキャリアを中断し、働き方を変え、勤続年数が短い場合もあるので、平均給与の差が出にくいのかもしれません。
このように、2022(令和4)年の平均給与は「458万円」で、ここ数年は上昇傾向にあります。しかし、男女別、業種別、年齢別といった平均を計算する切り口の違いで、数字はかなり違ってきます。
男性(女性)と比べたいのか、同業者と比べたいのか、同世代と比べたいのか。同調査では、ここで紹介した以外にも、正社員・正社員以外別、企業規模別(資本金額による分類)、事業所規模別(従業員数による分類)など、さまざまな角度から調査されています。何と比べたいのかを考えて、データを選んで確認してみるとよいでしょう。