戸建ても修繕費は必要! 日頃の点検、費用の積み立てで計画的な修繕を

「マンションには修繕積立金があるけれど、戸建てにはないので、ランニングコストが抑えられる」という声を聞くことがあります。でも、これは間違いです。マンションでは共用部分の大規模修繕に備えて管理組合として修繕費用を積み立てますが、戸建てでも大掛かりな修繕は必要です。住んでいる間に修繕工事を行うことになった場合、戸建ての所有者が計画的に積み立てていないと、貯金を取り崩したりローンを組んだりするといったことになるのです。

戸建ての修繕工事に要する費用は平均615万円!

アットホームが、全国で新築一戸建てを購入してそこに30年以上住んでいる50歳以上を対象に「一戸建ての修繕の実態」について調査(N=337人)を行いました。その結果によると、住んでいる期間に住宅の修繕にかけた費用の総額は、平均で615.1万円(平均築年数38.0年)でした。木造の場合で628.8万円、鉄筋・鉄骨造の場合で582.4万円と、構造によっても費用に違いがありました。

アットホーム
アットホーム「2023年『一戸建て修繕』の実態調査」より転載

約615万円は累計ですから、一度にこれだけの費用が発生するわけではありません。とはいえ、30年以上住んでいる戸建てには、かなりの額の修繕費用が必要となるわけです。

この調査では、「自宅の修繕費を毎月積み立てているか」を聞いていますが、積み立てているのはわずか8.9%でした。毎月積み立てていない人(307人)に、修繕費を何から充てた(充てる予定)か聞いたところ、69.1%は「貯金(修繕のために積み立てていないもの)」と回答。次いで「退職金」(15.3%)、「保険金(火災保険など)」(8.5%)となりました。同社によると、修繕経験者からは「100万単位のお金がかかるので、余裕のあるお金は積み立てに回しておいたほうが良い」などの意見が挙がったということです。

修繕工事について、もう少し具体的に見ていきましょう。
この調査で「修繕を行ったことがある場所」を聞いたところ、1位は修繕回数平均1.7回の「外壁」で、修繕費の合計は平均138.3万円でした。次いで、修繕回数平均1.4回の「トイレ」(修繕費合計平均35.5万円)、修繕回数平均1.6回の「屋根」(修繕費合計平均113.8万円)などが続きました。

外壁や屋根は、常に風雨にさらされていることもあって傷みやすいですし、大掛かりな修繕になるため、費用も高額になります。また、給湯器やトイレ、風呂、洗面台、キッチンなどの設備機器には耐用年数があり、それに応じて交換する必要もあります。特に、浴室とキッチンは設備自体が高額になります。

アットホーム
アットホーム「2023年『一戸建て修繕』の実態調査」より転載

アットホームによると、修繕経験者からは、「屋根部分の経年劣化の進み方が早く修繕費が結構かかった」、「給湯器の耐用年数は考慮した方が良い」などのコメントが寄せられたということです。

修繕積立金を集めているマンションはそれだけで大丈夫なのか?

さて、調査結果から、戸建ても長く住む間には、いろいろな場所の修繕工事を行う必要があり、かなりの費用がかかることがわかったと思います。そこで、計画的に修繕費用を積み立てることをお勧めします。が、積立金のあるマンションはどうでしょうか。

管理組合が毎月修繕積立金を徴収しているので、それで問題はないと思ったとしたら、それは間違いです。調査結果の戸建ての修繕部位のなかには、管理組合で積み立てている費用の対象にならないものもあります。外壁や屋根など共有しているものは管理組合で修繕しますが、給湯器や浴室、キッチンなどの水まわり、壁紙・内壁など専有部分にあるものは、各戸で修繕することになります。

給湯器では耐用年数に達して不具合が起きたので交換するということが多いですが、トイレやキッチンなどは、より性能の良いものに交換するということがあります。家族構成や生活用式の変化、趣味嗜好などの観点からリフォームするのが、専有部分の特徴です。ですから、その実施頻度やかける費用は家庭によって違いもあるでしょう。とはいえ、修繕をしないで済むというわけにはいきませんから、マンションであっても専有部分のリフォーム費用を予定しておく必要があるのです。

戸建ての修繕、どの部分をいつ修繕すればよい?

では、戸建ての場合、具体的にいつどの部分の補修を行えばよいのでしょうか?

(一社)リビングアメニティ協会では、ホームページで「自分で点検!ハンドブック(WEB版)」を公開しています。それには、住宅部品の推奨交換時期が紹介されています。下表のように、おおむね10年ごとに、いろいろな住宅部品を点検・交換するのが目安のようです。

ジュウテン
(一社)リビングアメニティ協会「住宅部品点検スペシャルサイト ジュウテン」より転載

このハンドブックでは、「自分で点検!」とあるように、まず自分で点検してまさかの事故を防ぐことを勧めており、住宅部品ごとの点検の仕方についても紹介しています。

日常に使っている住宅部品であれば、どのように点検したらよいかわかりやすいので、ハンドブックに目を通しておくとよいでしょう。日頃あまり確認していないのが、屋根や外壁ではないでしょうか。

【点検項目】
●屋根
・屋根材にズレや浮き・割れ・サビがあるか?
→ 異常がある場合、屋根材の落下により人にケガをさせる恐れや、漏水により躯体の劣化に繋がる恐れがある
・天井のシミがあるか?
→ 異常がある場合、漏水による躯体の劣化に繋がる

●外壁
外壁の割れ・欠け・亀裂・反り・うねり・サビ・表面塗装の変退色、シーリング※のやせ・剥離・亀裂があるか?
→ 異常がある場合、外壁の一部落下により人にケガをさせる恐れがある。漏水により躯体の劣化に繋がる恐れがある
※シーリングとは、継ぎ目の隙間に目地材を充填することで、その目地材に異常がないかチェックします

年に1回程度の点検が推奨されていますが、地震や台風などの後にも点検するのがよいということです。ただし、高所は危険なので、目視で確認できる範囲の点検を行いましょう。

こまめな点検やメンテナンスは修繕費を抑える効果も

不具合がないのに補修や交換をする必要はありませんが、不具合は突然発生することもあります。必要な時に補修・交換できるように、戸建てでも修繕費を日頃から用意しておくことが大切です。30年間で600万円以上積み立てるには、年間20万円積み立てることになりますが、少しずつでも積み立てていけば、万一のときに対応しやすくなります。無理のない範囲で用意しておくようにしましょう。

また、日ごろからこまめに自分で点検して、不具合や異常に気づいたら専門業者に相談するようにしましょう。まだ不具合が軽いうちに対応しておくことが大切です。住宅部品によっては、業者が定期的に点検や修繕を行う場合もあるので、積極的に活用したいもの。日常のメンテナンスの積み重ねは、全面的な取り替え時期を伸ばしたり、修繕費用を抑えたりすることにつながります。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

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