「いい夫婦」のカギはキッチンにあり?! マイホームのキッチン選びで気を付けたいポイント

11月22日は「いい夫婦の日」です。(財)余暇開発センター〈現(財)日本生産性本部〉が、夫婦で余暇を楽しむゆとりあるライフスタイルを提案したことが始まりだそうです。

この「いい夫婦の日」に向けて、積水ハウス株式会社が全国の20~60代の既婚男女を対象とした「いい夫婦の日に関する調査」を実施しました。それを見ると、結婚前後で最も大きく変化したことは、「食生活」という結果でした。そこで今回は、食生活に欠かせない、マイホームのキッチンについて考えていきましょう。

結婚前後で最も変化したのは「食生活」

調査で、「結婚前後の概ね1年間を比較して大きく変化したと思うこと」を聞いたところ、1位は「食生活」の45.8%でした。2位は「買い物」(38.6%)、3位は「金銭感覚」(33.4%)が続きました。

結婚前後で変化したと思う

では、食生活はどのように変わったのでしょうか?
回数が増えたという回答が多かったのは、「自宅で食事をする回数」や「自宅での食事の品数」でした。結婚によって、自宅での食事が充実したということでしょう。

さらに、「結婚してよかったと感じる食事の変化」を聞くと、1位が「一緒に食事をするようになった」(26.6%)、2位が「食事の時間が楽しくなった」(22.8%)となるなど、夫婦で食事をすることの大切さがうかがえます。

また、「夫婦が自宅で会話をするタイミング」を聞いたところ、「食事をしているとき」が67.4%で最多となりました。一緒に食事をする回数が増えることは、夫婦のコミュニケーションが深まることになり、夫婦の仲も良くなっていくといえそうです。

結婚後の食事の変化

「いい夫婦の日」をすすめる会事務局が2023年11月1日に公表した、夫婦に関するアンケート調査の報告書を見ても、「夫婦が円満であるために大切だと思うこと」を聞いた結果、1位は「話をする・聞く」(72%)、2位は「一緒に食事をする」(49%)となっていました。

夫婦の食生活を支えるマイホームのキッチン

夫婦の食生活を支えるのは、マイホームで言えばキッチンとダイニングでしょう。キッチンでの調理にストレスがなく、スムーズに食卓のあるダイニングに料理を運べ、ゆとりのある食卓で食事ができることが、一緒に食事を楽しむカギにもなります。もちろん、食後の後片付けにも手間がかからないことが、毎日の食事には大切なことです。

近年は、リビングダイニングの広さが求められるようになり、新築マンションでは12畳以上確保する事例が多くなっています。一方キッチンは、ほかの居室や収納の広さも求められるので、なかなか広くはなりませんが、使い勝手を向上させる傾向が見られます。

料理をする人が孤立しないように、リビングダイニングにいる人と会話もできる「カウンター付きの対面型キッチン」が、近年の人気プランです。使った食器を入れてスイッチをオンして外出できる「食器洗い乾燥機」を組み込むプランも、共働き家庭に人気のようです。システムキッチンの機能も向上しています。タッチレスや節水型の水栓、水はねの音を抑えられる静音シンク、小物を入れやすい収納など、各メーカーが工夫を凝らしたものを提供しています。

こうしたキッチンの使いやすさは、食生活に貢献し、夫婦仲に影響を与えるのかもしれません。

夫婦がともに料理するなら、キッチンの高さに注意

では、料理は誰が作っているのでしょうか?
先ほどの調査の結果を見ると、77.6%の夫婦で「主に妻が作る」と回答しています。ただし、年代別で見ると、20代や30代では「主に夫が作る」や「主に2人で一緒に作る」、「主に交代で作る」といった回答が増えています。また、フルタイム共働きでも、同じような傾向が見られます。若い世代・共働き夫婦ほど、夫がキッチンに入る機会が多くなるようです。

料理は誰が作っていますか

となると、妻だけでなく、夫にとっても使いやすいキッチンが必要になるでしょう。一般的に、女性より男性のほうが身体は大きいので、そうした点の考慮も必要です。調理をする際には、システムキッチンの作業台(調理台)の場所で材料を切ったり料理を盛り付けたりします。その高さには、次のような方程式があると言われています。

【方程式】キッチンの高さ(cm)=身長(cm)÷2+5cm

妻が160cmなら85cm、夫が170cmなら90cmというように、適切なキッチンの高さは、実は夫婦でも異なるのです。ただし、調理をしたり洗い物をしたりするときは、肘を起点にして作業するため、肘の高さも重要になります。キッチンの高さは、肘よりも10~15cmほど低くなっていると使い勝手がいいとされています。

こうした目安を参考にして、夫婦で適切な高さが異なる場合は、「キッチンにいちばん多く立つ人」を基準にするとよいでしょう。一般的にシステムキッチンの高さは、80cm・85cm・90cm・95cmなどの5cm刻みになっています。注文住宅やリフォームなら自分でキッチンの高さを選べますし、新築マンションの中には高さをセレクトできる場合もあります。ほかにも、夫の高さを基準にして、妻のほうはスリッパなどで調整するといった方法も考えられます。

キッチンの動きやすさはレイアウトで変わる

キッチンの使い勝手は、高さだけではありません。キッチン内のレイアウトも重要です。というのは、調理をする際には、冷蔵庫から食材を取り出し、シンクで野菜等を洗ったり作業台で切ったりして、コンロで加熱する…といった流れになります。シンクとコンロ、冷蔵庫の位置関係によって、調理をする動線がスムーズだったり悪かったりします。

キッチンの形状によっても、これらのレイアウトは変わります。比較的多い3つの形状で見ていきましょう。

○I型(1列型)
シンクとコンロが横1列に並ぶレイアウト。冷蔵庫はその横か背面に置かれます。キッチンが狭くても効率よく使えますが、横に動線が長くなる傾向にあります。

○L型(L字型)
シンクとコンロ(冷蔵庫も)がL字型になるレイアウト。コーナーに無駄なスペースが生じますが、動線は短くなります。

○Ⅱ型(2列型、セパレート型)
シンクとコンロが2列に分かれる(向かい合わせになる)レイアウト。シンクとコンロ、冷蔵庫を三角形で結べることが多く、動線が短く効率的に動けます。ただし、通路幅が狭いと大柄な人には窮屈に感じるかもしれません。

このほかにも、コの字型にレイアウトされた形状やアイランド(島)型、ペニンシュラ(半島)型と呼ばれる壁面から離れた独立したキッチンを設ける形状もあります。家自体が広くてキッチンにスペースを割ける場合に採用されることが多いようです。

また、シンクやコンロなどのレイアウトのほかに、キッチン収納の場所も重要です。食器棚がリビングにあって、食器の出し入れにいちいちリビングに行かなければならないのと、調理台の背面に食器棚があるのとでは、動線の長さがまったく変わってしまいます。

キッチンを選ぶ際にも夫婦で話し合って

これまでは、キッチンは妻の意向を重視しようなどと言われていました。これからは、妻だけでなく夫もキッチンに入る機会が増えるでしょう。キッチンの広さや形状、レイアウトによる動線や作業台の高さなど、どういったキッチンが使いやすいか夫婦で話し合って選ぶとよいでしょう。夫婦の食生活を支えるキッチンは、夫婦仲に影響するかもしれませんので。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

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