年金制度には、振替加算や加給年金という、通常よりも多い金額を受給できるシステムがあります。振替加算や加給年金は誰でももらえるものではなく、こういったシステムを知らない人もいるのではないでしょうか。しかし、これらを受給するためには届出が必要であるため、しっかりと制度内容や条件を理解しておきたいところです。
そこでこの記事では、振替加算や加給年金の概要や受給条件について解説します。
この記事は日本年金機構の情報をもとに作成しています。
振替加算は加給年金が打ち切られたあとに給付される
振替加算とは、加給年金を打ち切られた人が一定の条件を満たす場合、老齢年金に加算して受け取れるものです。そのため、まずは加給年金がどのような制度なのか解説します。
加給年金とは
加給年金を簡単に説明すると、「年金の家族手当」です。厚生年金の被保険者が65歳になったときに家族がいると、加給年金が加算されます。ここで言う「家族」とは、被保険者によって生計を維持されている配偶者や子どものことです。
加給年金の対象者は厚生年金の被保険者の家族です。そのため、会社員や公務員などの給与所得者の家族には加給年金が発生する可能性がありますが、自営業などで国民年金に加入していた人の家族は対象外となります。
そのほか、厚生年金の被保険者期間、配偶者や子どもの年齢などの受給要件があります。
加給年金の対象者
加給年金の対象者は、厚生年金の被保険者が特定の年齢に達したときに、その人によって生計を維持されいる配偶者または子(18歳到達年度の末日まで)です。さらに、厚生年金の被保険者が以下の条件のいずれかに該当する必要があります。
・厚生年金の被保険者期間が20年(※)以上あり、65歳に到達した人。かつ、その人に生計を維持されている配偶者または子がいる
・65歳到達後に厚生年金の被保険者期間が20年(※)以上となった人。かつ、在職定時改定時、退職改定時(または70歳に到達時)に、その人に生計を維持されている配偶者または子がいる
※または、共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳以降(女性、坑内員、船員は35歳以降)15年~19年
加給年金の加算額
加給年金額は、配偶者と1~2人目の子は22万8,700円、3人目以降はそれぞれ7万6,200円です。配偶者の場合、生年月日に応じて特別加算を受けられます。特別加算額は以下の表のとおりです。
加給年金が終了するとき
配偶者が老齢厚生年金、退職共済年金、もしくは障害年金を受け取れるようになったときには、配偶者分の加給年金が停止となります。配偶者も年金を受け取れるようになり年金保障上独立していると判断され、年金を加算する必要がなくなるからです。
年金は受給を遅らせることができますが、配偶者が実際に年金を受け取っていなくても、受け取る権利がある場合は加給年金が終了するため注意してください。ただし、下記の条件を満たす場合、引き続き加給年金を受け取れる経過措置があります。
・2022年3月時点で被保険者本人が加給年金を受給している
・2022年3月時点で配偶者の年金が全額支給停止されている。
また、子どもの年齢が18歳になる年度の3月31日を過ぎると、たとえ被保険者本人が子どもの生計を維持していたとしても、子どもの分の加給年金は停止されます。
振替加算とは
振替加算とは、加給年金を受け取っている被保険者の配偶者が65歳以上になり、加給年金が打ち切られたときに加算されるものです。そのほか、配偶者が65歳になったあとに、老齢基礎年金の受給権が発生したときも、配偶者の年金に加算されることがあります。
この章では、振替加算の目的、対象者、加算額について説明します。
振替加算の目的
なぜ振替加算ができたのかというと、かつては年金に任意加入時代があったことが要因です。国民年金制度が始まったのは1961年ですが、強制加入となったのは1986年からでした。それまで国民年金の加入は任意だったため、納付期間が足りずに無年金となる人が多くいたのです。
この無年金者が多くいることが問題視され、年金を受け取れない人を救済する目的でできた制度が振替加算です。
振替加算の対象者
振替加算は年金が任意加入だった1986年以前の未加入者を救済するための制度です。そのため、配偶者が次の条件を満たしている必要があります。。
・1926年4月2日から1966年4月1日までに生まれている
・配偶者が老齢基礎年金のほかに老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、厚生年金保険と共済組合などの加入期間があわせて240ヶ月未満である
・配偶者の共済組合などの加入期間を除いた厚生年金保険の35歳(男性は40歳)以降の加入期間が、下の表未満である
振替加算が支給されないケース
上記以外の人は基本的に振替加算の対象外となります。具体的には次のような人です。
・被保険者の厚生年金や共済年金の加入期間が240ヶ月未満
・配偶者の厚生年金や共済年金の加入期間が240ヶ月以上
・配偶者が一定額以上の厚生年金を受給している
・夫婦どちらかが65歳未満
・配偶者が1966年4月2日以降に生まれている
上記のいずれかに該当すると、振替加算を受けることはできません。
振替加算の金額
配偶者が1926年4月2日から1927年4月1日に生まれている場合、振替加算の金額は22万8,100円です。それ以降は年齢が若くなるにつれ減額され、配偶者の生年月日が1966年4月2日以降だと支給額が0円となります。
配偶者の生年月日別の支給額の抜粋は以下のとおりです。
上記の表、1956年4月1日以前に生まれた人は、年齢が上になるにつれ支給額が徐々に増えていきます。
振替加算や加給年金を受けるための手続き
加給年金や振替加算を受けられるようになったら、必要書類を用意し年金事務所もしくは年金相談センターに行きましょう。
【必要書類】
・受給者の戸籍抄本もしくは戸籍謄本(記載事項証明書)
・世帯全員の住民票の写し(続柄、筆頭者の記載が必要)
・加給年金対象者の所得証明書、非課税証明書のどちらか
まとめ
加給年金とは、年金における家族手当、振替加算は年金任意加入時代があったために無年金者となってしまった人たちへの救済措置として支給されるものです。自身や配偶者の年金加入期間、子の年齢などに制限がありますので、受給対象となっているのかどうかは確認しなければなりません。
加入や支給停止となるときには届出が必要です。必要書類を用意し、お近くの年金事務所もしくは年金相談センターで申し込みましょう。