少子化に歯止めがかからない日本。岸田首相は「異次元の少子化対策」を実施すると発表しました。対策の柱として児童手当増額も発表されましたが、2023年10月現在の支給額はこれまでと変わりがありません。児童手当がいったいいつから増額されるのか気になる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、児童手当増額の詳細な内容や、いつから増額予定なのかを解説。児童手当や子育て費用に関する注意点も紹介します。
児童手当増額とは
2023年10月現在は変化がない児童手当制度ですが、今後増額される予定です。児童手当増額は「所得制限の撤廃」「金額の増額」「対象年齢拡大」の三つの面で行われます。本章ではそれぞれの内容を解説します。
所得制限の撤廃
現在は、児童を養育している親などの所得が一定額以下の場合のみ児童手当が満額支給(1万円~1万5,000円)されています。しかし、所得が所得制限限度額を超えている場合の支給額は、児童1人あたり一律5,000円まで減額されます。さらに、所得上限限度額を超えていると児童手当の支給はされません。
今回掲げられた増額案では所得制限が撤廃され、所得に関係なくすべての児童の養育者が支給対象となる予定です。これまで児童手当の支給対象外だった所得のある世帯も、新たに支給を受けられるようになります。
支給額の増額
増額案には児童手当の増額も盛り込まれています。従来は3歳〜小学生の子どもに対する支給額は1人あたり1万円で、第3子以降は1万5,000円に増額されていました。
今回の制度見直しにより第3子以降への支援が拡充され、手当額が1人あたり3万円に増額される予定です。また、支給対象となる児童の年齢も0歳~高校生へと拡大されます。
ただし、児童手当においては、支給対象年齢に該当する子どもの数しかカウントされません。たとえば、3人子どもがいたとしても一番上の子が大学生だと、その子は第1子と見なされません。この点は後ほど解説します。
対象年齢の拡大
現在、児童手当の対象年齢は中学生までとなっていますが、増額後は高校生までに拡大されます。これにより、従来に比べて3年分多く児童手当を受け取れるようになります。児童が高校に通っていなくても、対象年齢の子どもであり、親と同一生計であることなどの要件を満たしていれば支給対象となる見通しです。
2023年現在との違い
ここまで解説した内容を踏まえ、2023年10月現在の児童手当支給額と増額後の支給額の違いを表にまとめてみました。
子どもが第2子までしかいない世帯では、高校生でも児童手当を受け取れるようになる点が大きな違いです。また、所得制限が撤廃されるため、給付の対象となる世帯数も増加するとみられます。
第3子以降の子どもがいる世帯では、それに該当する子どもは高校卒業まで1人あたり3万円の手当を受取可能です。異次元の少子化対策の一環にあたる政策のため、多子世帯に対する支援が手厚くなります。
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児童手当増額は2024年10月分から
支給対象世帯が拡大することもあり、児童手当増額を心待ちにしている人も多いことでしょう。現時点では、増額は2024年10月分から適用される見通しです。これまで所得制限により児童手当の対象外だった世帯も、2024年10月分以降は受け取れるようになるとみられます。
手当が届くのは2025年2月
児童手当増額のスタートは2024年10月分からとなる見込みですが、実際に増額後の手当が手元に届くのは2025年2月です。なぜなら、児童手当は原則として毎年6月・10月・2月に、前月分までの手当がまとめて支給されるからです。2024年10月分は2024年10月〜2025年1月分として、2025年2月に振り込まれます。
児童手当の落とし穴
2024年10月分から児童手当増額が予定されていますが、増額にあたって気を付けなければならない点があります。
扶養控除が廃止される可能性がある
児童手当増額によって支給対象年齢が高校卒業まで拡大されますが、これに伴って高校生の子どもがいる世帯の扶養控除廃止が検討されています。
現行の制度では、16歳以上19歳未満の子どもがいる親などは、一定要件のもと子ども1人あたり38万円の所得控除が受けられます。これが扶養控除です。しかし、児童手当の支給年齢が拡大されるのに伴い、扶養控除の見直しを検討する動きが見られます。
仮に扶養控除が廃止されると所得控除が減り、納めなければならない所得税額が上がります。支払う所得税によっては、児童手当が増額されても世帯収入はさほど増えない可能性もあるでしょう。特に高所得世帯では、所得税の増加分が児童手当の支給額を上回り、結果的に収入が前よりも少なくなるケースも考えられます。
子どもとしてカウントされるのは高校生以下に限定される
今回の増額で特に大きな恩恵を受けられるのが、第3子以降の子どもがいる家庭です。しかし、このとき対象となる子どもの数は、支給対象年齢である高校生以下に限定される点に注意が必要です。3人目、4人目の子どもがいたとしても、上の子が高校を卒業すれば「第2子」「第3子」という扱いになります。
たとえば、1人目が大学生、2人目が高校生、3人目が中学生の3人きょうだいがいる世帯を考えてみましょう。子どもは3人いますが、一番上の子は高校を卒業しているので児童手当上の子どもにはカウントされません。高校生の2人目が「第1子」、中学生の3人目が「第2子」となるため、第3子以降の増額は適用されないのです。
支給の終了は学年単位
児童手当の支給開始時期は子どもが生まれた翌月です。一方、支給終了時期は学年単位で一律に定められ、増額後の支給期間は高校3年生になる3月までとなります。支給開始は子どもによって異なるのに対し、支給終了時期は全員一律です。同じ学年でも、誕生月によって受給期間が異なってきます。
たとえば、同じ学年でも4月生まれと翌年3月生まれでは受給月数に11ヶ月の開きが生まれます。金額にすると11万円(第3子以降ではない場合)の違いが出てくるのです。
本当にお金がかかるのは18歳を超えてから
児童手当の対象年齢が高校生まで拡大されたとしても、子どものいる世帯の負担はあまり軽減されない可能性があります。なぜなら、本当にお金がかかるのは支給終了後の18歳を超えてからの時期だからです。
日本政策金融公庫「令和3年度「教育費負担の実態調査」」から、1年間にかかる1人あたりの在学費用を在学先別に見てみます。
上の表から、大学などへの進学後には、それまでよりも大きな費用がかかることがわかります。仕送りをしなければならない場合、必要資金はより膨らむでしょう。
児童手当の支給が終了する高校卒業後もまだ大きな教育費がかかることを見据え、事前にお金を貯めておく必要があります。
※出典:日本政策金融公庫「令和3年度「教育費負担の実態調査結果」
児童手当以外の少子化対策
子育て世帯への支援を目的とした制度は児童手当だけではありません。少子化対策として実施されている主な制度の概要を紹介します。
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まとめ
「異次元の少子化対策」の重要な柱である児童手当増額は、所得制限の撤廃、第3子以降への手当増額、支給対象年齢の拡大からなります。増額は2024年10月分からの予定となっており、実際に手元へ届くのは2025年2月からとなる見込みです。
児童手当増額は子育て世帯に対する大きな支援であることは間違いありませんが、支給対象年齢拡大に伴って扶養控除の廃止も議論されています。どのような異次元の少子化対策が行われるのか、議論の行方をしっかりとチェックしていく必要があるでしょう。
(最終更新日:2024.04.19)