家の周りの道路にある側溝の掃除は、昔は「どぶさらい」といって村(今でいう自治体や地域の自治会)の共同作業でした。しかし、今では側溝の掃除を「面倒なこと」とし、誰かがやるだろうと押し付け合う風潮がみられます。結果として、汚れたままの側溝を見かけることもあるのではないでしょうか。
実は、側溝の掃除はその場所によって誰が行うものかが決まっています。この記事では側溝の掃除をする人の判断基準や、もし自分が担当することになった場合の掃除の仕方について解説します。
側溝の掃除は誰がするのか
そもそも、側溝の掃除は誰がするべきものなのでしょうか。側溝の掃除を担当する人は、側溝のある場所によって異なります。
市役所が行うケース
側溝の掃除を市役所(市区町村などの基礎自治体)が行うのは、側溝が公道にあり、かつその公道が主要道路など重要度の高い場合に限られます。
とはいえ、該当するすべての側溝を掃除するのではなく、深さや幅のある側道などを優先する傾向にあります。自治体の人員も限られており、人件費を考慮すると、すべての側溝に対応するのは限界があるというのが実情のようです。
ただし、あまりに泥が積もっていたり、衛生的によくない環境や危険な状態にあったりするなどの理由で側溝の掃除が必要だと感じた場合には、管轄の自治体の建設事務所もしくは国道事務所に連絡すれば対応してもらえます。自治体に連絡する際には、その道路をどこが管轄しているのかを自治体のホームページであらかじめ調べておきましょう。
自治会・町内会が行うケース
市区町村道などの道路は市役所などの自治体が行うのが原則ですが、数が膨大になるため、一部の場所については自治会もしくは町内会に依頼しているケースが多くみられます。
市役所が対応しきれない場所にある側溝とは、公道のなかでも主に住宅街にある側溝を指します。
自治会や町内会によっては定期的に掃除を行っているところもありますが、住宅周辺の公道で突発的なトラブルや困った問題が発生した際も、まず自治会や町内会に相談してみましょう。市役所などの自治体から依頼を受けていることもあり、迅速に対応してもらえるはずです。
もし自治会や町内会が動いてくれない場合には、市役所などの自治体に相談してみましょう。
個人が行うケース
私道にある側溝は、その所有者が管理しなければなりません。掃除を行うのも私道の所有者です。もし、私道を共有している場合は共有者同士で話し合い、取り決めて掃除を行うのが通例です。
また、家の前の側溝などであれば、私道ではなくてもその家の持ち主が掃除をするケースもあります。もちろん強制ではありませんが、玄関周りの掃除と併せて行う人が多いでしょう。
なかには自治体や自治会が対応してくれるケースもあるので、自分で掃除をするのが難しいと思ったときには、自治体や自治会に相談することをおすすめします。。
側溝の掃除を自分で行う方法
私道にあるなど自分で側溝の掃除を行う場合、どのようにすればよいのでしょうか。側溝掃除の手順について解説します。
側溝のフタを外す
まず側溝(U字溝)のフタを外します。フタの表面の汚れを軽く水で流し、側溝フタ上げ機など専用の工具を使ってフタを持ち上げます。
側溝のフタはとても重いため、2人以上で作業するほうがよいでしょう。側溝のフタにはコンクリート製とグレーチング(鉄でできた格子状のスノコ)製があり、コンクリート製のほうがより重くなります。
フタを外す作業はケガをしやすい工程なので、軍手や安全靴を使用し、注意しながら慎重に行ってください。外したフタにつまずいて転倒するのを避けるためにも、外したフタを側溝の端の安全な場所に置いておくことも重要なポイントです。
側溝の中のゴミ・汚泥をすくう
側溝のフタを外したら、次はスコップやスクレーパー、ジョレンなどの工具を使い、側溝の中のゴミや汚泥をすくいます。
スクレーパーは固まった泥を剥がすのに使います。ジョレンは小さな穴が開いたスコップで、すくった汚泥からゴミなどの固形物を取り除くのに便利です。基本的には大型のスコップを使いますが、スクレーパーやジョレンもあったほうが、作業がはかどるので、ホームセンターなどで購入しておきましょう。
ゴミ・汚泥を乾燥させて土のう袋に入れる
すくったゴミや汚泥はそのまま土のう袋に入れるのではなく、乾燥させてからにしましょう。水分を含んだままだと重いので、乾燥してからのほうが軽くて運びやすくなります。水を含んだゴミや汚泥は、平らにしておくと乾燥が早く進みます。
このとき、あらかじめ土のう袋をスタンドにセットすることも忘れないようにしてください。
側溝を水で流す
ゴミや汚泥をすくった側溝は、水で流してきれいにしましょう。近くの蛇口からホースをつないだり、バケツに水をくんだりして流す方法もありますが、高圧洗浄機を利用するとより効果的です。
側溝がきれいになったら、最初に外した側溝のフタの両面も水で流しておきましょう。
フタを元通りに戻す
洗い終わった側溝のフタを元に戻します。その際は外したときと同様に、2人以上で指を挟むなどのケガをしないよう慎重に行ってください。
汚泥の処理をする
側溝掃除で生じたゴミや汚泥は原則として産業廃棄物扱いです。一般ゴミとしての処分はできないので、自治体で処理方法を確認し、定められた方法で処分しましょう。
必要道具
ここまでの手順から、側溝掃除を行うにあたっては、以下の道具をそろえておきましょう。
側溝掃除を怠ることによって起こるトラブル
側溝掃除は定期的に行うのが大切です。また、必要に応じて早めの対応を心がけるようにしましょう。ここでは、側溝掃除を怠ることにより起こるトラブルについて解説します。
大雨のときに道路が冠水する
近年、大雨による災害が増えています。災害レベルにならないまでも、側溝が詰まってしまい、そこから道路が冠水するケースも見られます。放置していると大惨事につながる可能性もあるため、大雨が心配される地域やこれまでに冠水を経験している地域は、梅雨時期や台風シーズンの前など定期的に側溝清掃を行うよう心がけましょう。
また、ゴミや汚泥が溜まったままにしておくと、排水と一緒に川や海に流れてしまいます。そうなると生態系に悪影響を及ぼし環境汚染の原因となります。
側溝掃除の目安は年に1~2回ですが、ゴミや汚泥の溜まりやすさに応じて適時行うよう、日頃からチェックをしておくことも大切です。
悪臭の原因になる
側溝にたまったゴミや汚泥は水分を含み、高温多湿の状態になると腐敗して悪臭を放つ原因になります。
近隣住民とのトラブルにも発展するので、早めに対処するようしましょう。梅雨明けの夏場などは特に注意が必要です。
害虫・害獣が発生する
側溝にゴミや汚泥がたまると、人の手が届きにくいため害虫が卵を産みやすい環境になり、ゴキブリやムカデ、セアカゴケグモ、ボウフラ(蚊)などの害虫や、ネズミなどの害獣が発生する恐れがあります。
ムカデやセアカゴケグモは毒をもち、場合によっては命の危険にさらされることもあります。極力害虫が発生しないように注意するとともに、もし咬まれたら、すぐに病院で手当を受けるようにしてください。
まとめ
側溝が私道にある場合は、その持ち主が掃除をしなければなりません。側溝の掃除は専用の工具が必要だったり、複数の人手が必要だったりと大がかりになるため、側溝掃除の専門会社に依頼する方法もあります。
自宅の前が公道であれば、原則として側溝掃除を行うのは自治体もしくは自治会および町内会です。自治会や町内会が行わないときは、市役所などの自治体に相談してみましょう。