猛暑ではエアコンの使用が欠かせませんが、今年は大手電力会社が電気料金を値上げしたため家計の負担がより大きくなりました。現状では政府の電気代支援により負担が軽減されているものの、それも9月末に終了予定となっています。しかしながら、政府は9月1日時点で10月以降も電気代支援策を延長すると表明しました。今回は、電気代が値上げになった背景とともに、政府の電気代支援策について解説します。
参考元:読売新聞オンライン「電気・ガス補助金は10月以降も延長、岸田首相が表明…電力大手そろって値上げ」
なぜ6月に電気代が値上げになったのか
大手電力会社の7社は、2023年6月から電気代を値上げしました。電気代の値上げは、なぜ行われたのでしょうか。ここでは、電気代が値上げされた理由について解説します。
自由料金と規制料金
従来、日本で電気を販売できるのは、各地域の大手電力会社(一般電気事業者)のみでした。消費者は電気の契約先を自由に選べるわけではなく、その地域を管轄する電力会社から電気を購入する必要がありました。大手電力会社の電気料金では、燃料費調整額の上限が定められており、電気料金が一定額を超える場合は超過分を電力会社が負担します。この料金の設定方法が「規制料金」と呼ばれるものです。
その後、2016年4月以降に電力小売が全面自由化され、今は「自由料金」で電気を販売できるようになっています。いきなりすべて規制をなくしてしまうと実質的な独占状態が生まれる恐れがあったため、経過措置として自由料金とともに規制料金も存続していました。自由料金は規制料金以下で提供されてきましたが、社会的背景により2022年に自由料金と規制料金が逆転しています。
きっかけはロシアのウクライナ軍事侵攻
2022年に日本の電気料金の自由料金と規制料金が逆転したのは、燃料価格が世界的に高騰したためです。2022年2月から始まったロシアによるウクライナ軍事侵攻に対し、世界各国でロシアを原産とする原油の輸入を原則として禁止する措置がとられました(日本は2022年12月より実施)。その結果、原油、天然ガス、石炭などの価格が世界中で高騰しています。それにともない、国内の電気料金もはね上がりました。
すでに触れたとおり、規制料金には燃料費調整額の上限が設定されています。しかし、その上限額に到達してしまったことが電気代高騰の要因になっています。さらに、自由料金については燃料費調整額が定められていません。社会情勢による影響を受け、自由料金は規制料金を上回るようになりました。
電力会社の赤字が進行
燃料価格が高騰しても、大手電力会社はしばらく規制料金の上限以内で電気を提供していました。しかし、燃料費調整額の上限の超過分を負担し続けた結果、大手電力会社は赤字経営に陥っています。
燃料価格が下がる兆しも見えない状況で赤字経営を続けるのは、困難です。また、大手電力会社の経営状態の悪化は電気の安定的な供給にも影響します。そのような状況を鑑み、大手電力会社は法令に基づいて電気代の値上げを申請しました。申請が承認されたため、2023年6月から大手電力会社の電気代は軒並み値上げされています。
加えて、自由料金も値上げされており、日本の電気代は全体的に高くなっている状況です。
電気代支援とは
電気代支援とは、政府が実施している「電気・ガス価格激変緩和対策事業」のことです。電気や都市ガスの料金が上がっているため、消費者の負担を軽減する目的で実施されています。国が電気の小売事業者へ補助金を支給し、消費者に対する電気代の請求を抑える仕組みです。
電気代支援策の実施により、ロシアによるウクライナ軍事侵攻前の水準まで電気代が抑えられています。電気の使用量に応じて値引きが行われており、現状で請求されているのは値引き後の金額です。明細書や請求書を見れば、値引きされている金額がわかります。
出典:資源エネルギー庁 電気・都市ガスをご利用するみなさまへ
一般家庭は申請不要
消費者は、政府の電気代支援を受けるための申請をする必要はありません。電気を利用する一般家庭や一般企業などが申請をしなくても、一律で政府から各電力会社へ支援が行われています。支援された金額が電気代にあてられ、消費者に対しては従来の水準まで値引きした電気代が請求される仕組みになっています。
対象となる事業者と契約していれば基本的に必ず支援の対象になっているため、一度確認してみましょう。
値下げとなる事業者一覧
政府の支援策の対象となっている事業者は、複数存在します。具体的な対象事業者の一覧は以下のページでまとめられています。多くの企業が掲載されていますが、事業者名や代理店名などで検索も可能です。契約している事業者が対象に含まれているか見てみてください。
今後も値上げが予想される
現在の日本で電気代が上がっている要因は、燃料価格の高騰です。2022年に発生した急騰は落ち着きを見せていますが、今後2021年以前の価格に戻るという保証があるわけではありません。ロシアによるウクライナ軍事侵略は継続しているため、今後も電気代が値上げされる可能性は十分あります。また、新型コロナウイルスが落ち着いてきて経済が回復している状況や円安といった社会情勢を考慮すると、燃料価格の高止まりも予想できます。
よって、電気代はしばらく高い水準が続くと考えられるでしょう。政府の電気代支援についても今後については正式決定しているわけではないので、場合によっては電気代の負担が今後さらに増える可能性もあります。
まとめ
あらゆる物価が上昇するインフレの傾向が強まっており、電気代の値上げも続いています。このような状況では、高騰する生活費に対して各家計での対策が不可欠となります。電気代をはじめとし、さまざまなところで発生する費用について改めて見直す必要があるでしょう。