田舎に家を建てて、のんびり暮らしたいと考える人は少なくありません。自然に囲まれた静かな環境で健康的な生活を送ったり、物価が安く都会よりも豊かに暮らせたりすることに魅力を感じて、移住を決意する人も増えています。
そこで今回は、田舎に家を建てるメリットとデメリットを解説します。また、長期的に考えた場合に注意したい点も併せて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
田舎暮らしが注目される背景
近年テレワークが普及し、職種によっては出社しなくても場所を選ばず働ける環境が整いつつあります。インターネットに接続さえできれば仕事を続けられる人が増えたことで、住宅価格や生活費が安い田舎の暮らしが注目されています。
インターネット通販やオンラインサービスを利用すれば、都市部から離れた田舎でも必要なものやサービスが手に入りやすくなりました。また、国や自治体の移住支援により、田舎への移住がしやすくなったことも、田舎暮らしを後押しする追い風となっているようです。
田舎に家を建てるメリット
田舎に家を建てるメリットを、具体例を挙げて説明します。自治体や地方により細部は異なりますが、大まかなイメージがつかみやすいでしょう。
移住支援を受けられる可能性がある
家の購入や引っ越しには多くの費用がかかりますが、自治体によっては移住支援を行っているところがあります。それぞれの自治体が提示する条件に当てはまる場合、家の購入費や改築費の一部を支援してもらえる可能性があります。
たとえば、熊本県益城町では、子育て世帯が移住するために家を新築または購入した場合、50万円ずつ2回に分けて計100万円の補助金が受け取れます。このような支援制度があれば、移住したい人たちにとって金銭面での負担が軽減され、移住のハードルが下がるでしょう。
もともと東京23区内の都市圏に住んでいたり通勤していたりする人が地方へ移住する場合は、移住支援金を利用すれば世帯で100万円以内の支援金を受け取れる可能性があります。さらに、18歳未満の子どもと一緒に移住する場合は、子ども一人につき最大100万円が加算されます。
地方創生移住支援事業の一環として、手厚い支援が受けられるメリットは大きいでしょう。
都会に比べて家の購入費や建築費が安い
住宅金融支援機構の2021年度の調査によると、土地付き注文住宅の所要資金は全国平均で4,455万円となっています。しかし、首都圏では平均で5,133万円となっており、全国平均よりも600万円以上、多くの資金が必要になることがわかります。
一方、首都圏や近畿圏、東海圏を除いたその他の地域では平均3,980万円と、首都圏に比べて1,100万円以上安いことがわかりました。マイホームの取得は多くの人々の関心事であり、どのように節約するかは大きな課題でしょう。その点、田舎は都市部に比べて安価でマイホームが取得できるため、理想の家を持てる可能性が広がります。
出典:2021年度 フラット35利用者調査|住宅金融支援機構
田舎に家を建てるデメリット・注意点は?
田舎での暮らしは、ゆったりと暮らせるメリットがある一方、デメリットや注意点もあります。両者を比較検討することにより、自分にとって適した選択ができるでしょう。
処分したいときに売れない
場所にもよりますが、一般的に田舎では中古住宅の需要が小さく、将来的に家を処分したくなったときに売れない可能性があります。田舎は不動産の売買や賃貸でも都市部のように活況ではありません。
交通や生活の利便性が悪い地域だと、賃貸としての需要も見込めないため、投資目的で購入する人も少ないと言わざるを得ません。相続した家が売れず、賃貸として貸し出すこともできず、管理費や固定資産税などの維持費がかかり続けるケースも少なくないのです。
長年誰も住まない空き家は不審者が住みつくなどしてトラブルの元になり、美観を損ね安全性に不安のある特定空き家として行政からもチェックされてしまいます。改善の意思がなければ、家屋の倒壊などで周辺への危害を防ぐために、強制的に建物を解体して解体費用が請求されることにもなりかねません。
倒壊の危険性がなくても、固定資産税の優遇措置が適用されず、通常よりも高額の固定資産税を納めなければならないなどの措置を受けます。
高校や大学の選択肢が少ない
田舎には私立学校が少なく、高校や大学などの選択肢が限られてしまいます。これは、人口の多い都市部やアクセスの良い場所に多くの学校が集まることが原因です。
国立大学の数は地域によってそれほど差はないものの、やはり東京都は他の地域より設置数が多い傾向にあります。ただし、大学の数が多いからといって、前述のように人口も多いため、競争率は高い傾向にあります。また、田舎に住んでいると、進学したい学校が遠いと自宅から通えない可能性があります。その場合、寮や1人暮らしの生活費がかかってしまいます。
進学先によっては物価が高く、アルバイトをして生活費やお小遣いの足しにする学生は少なくありません。
医療機関の選択肢が少ない
医療機関もまた、人口の多い大都市圏に集中しています。特に、東京都や大阪府、愛知県などの大都市圏には数多くの病院があります。そのため選択肢が多く、自分が希望する高度な医療を受けられる可能性が高いでしょう。
田舎でも、地域によっては医療機関が比較的充実している場所もあります。しかし、交通手段が限られ、通院に時間がかかる場合もあります。病院の設備や医師の専門性によっては、受診できる医療機関の選択肢が少なくなるでしょう。
症状によっては、都市部の医療機関に転院することになるかもしれません。また、子どもの少ない地域では産科・小児科などの医師が不足している可能性も考えられます。
田舎に家を建てるのにおすすめの場所
田舎に住むということは、都会とは異なる生活スタイルを求めるわけですから、できるだけ多くの自然に触れられる場所を希望する人もいるかもしれません。
しかし、交通機関が不便だったり、買い物や通院などの生活面での不満が生じたりすることにもなりかねません。田舎に家を建てる場合のデメリットをできるだけ解消するには、ほどよい田舎を選ぶことも一つの方法です。市街地や都市インフラへのアクセスが良く、普段の生活での不便が少ない場所を選ぶとよいでしょう。
たとえば、静岡県や山梨県、長野県などは、首都圏へのアクセスが良く、エリアによっては生活するうえでの利便性も高い地域です。一方で、山や湖、高原などがあり、田舎暮らしも満喫できるため、移住先として人気があります。
田舎に家を建てる場合は、主要駅や高速道路までの所要時間、通勤・通学の利便性、災害のリスクなども考慮して決めることが大切です。
まとめ
田舎に家を建てれば移住支援を受けられる可能性があるため、都道府県や市町村の公式サイトで適用条件を確認してみることをおすすめします。田舎暮らしなら家の購入費や建築費も安く、より広い家に住めるメリットがあります。
一方で、家が売れないリスクや、教育・医療機関の選択肢が少ないことに注意が必要です。田舎でも、大都市へのアクセスが良い場所なら、極端に不自由な思いをすることはないでしょう。初めての地方暮らしなら、ほどよい田舎を選ぶのがおすすめです。