投資詐欺が増加中?! 投資をする上でおさえておくべき最低限の知識と心構えを解説

日経平均株価がバブル崩壊後の高値を更新していくなど、日本株へ投資をしていた個人投資家には嬉しいニュースが相次いでいますが、一方で金融庁が公表している「金融サービス利用者相談室」によると、株価の上昇に基づいて投資商品等に関する相談が増えているということです。そこで、今回は投資を始めるうえで最低限身に付けておきたい知識や心構え、株高やインフレを起点に忍び寄ってくる投資詐欺に引っかからないようにするための方法を解説していきます。

日本人が抱える悩みの実態とは?

金融庁では金融サービス利用者の利便性の向上を図るとともに、寄せられた情報を金融行政に有効活用するため、金融サービス利用者相談室を開設しています。相談室に寄せられた利用者からの相談項目・件数等については、四半期毎に金融庁のホームページで公表されたものを確認できます。今期(2023年1~3月期)の相談等の受付件数は15,204件(1日当たり:平均253件)となっていますが、とてつもない数字ですね。それだけ多くの人が金融サービスについて相談をしたいと思っているのです。

相談等の内訳を見てみると、「質問・相談」として寄せられたものが7,994件(53%)、「意見・要望」として寄せられたものが6,754件(44%)、「情報提供」として寄せられたものが282件(2%)等となっています。相談方法としては電話とWEBが半々ぐらいです。

相談等の分野の内訳も見てみましょう。「預金・融資等に関するもの」が8,160件(54%)、「保険商品等に関するもの」が1,670件(11%)、「投資商品等に関するもの」が2,706件(18%)となっており、その多くが金融商品に関するものであることが分かります。

株高やインフレが相談件数増加の原因?

相談等の分野について、前期からの増減を表にまとめたものが以下になります。相談等の受付件数が前期比35.9%と大きく増加していることが分かりますが、なかでも「預金・融資等に関するもの」と「投資商品等に関するもの」という2つの分野が全体を押し上げていることが分かります。

相談等の分野の内訳

具体的に相談内容を見てみると、「預金・融資等に関するもの」では行政に対する要望などがほとんどであるため、あまり投資詐欺などは関係がなさそうです。一方で、「投資商品等に関するもの」では個別取引や結果に関するものが全体の37%を占めています。

日経平均株価がバブル崩壊後の高値を更新するなど、「いま投資をすれば儲かるのかもしれない」と投資に興味を持つ環境が整っていますし、来年からはNISAが新しくなり、個人投資家にとって活用しやすい内容に拡充されるという話を聞いて、投資に興味を持つ人もいるでしょう。

また長いことデフレ経済の真っ只中にいた日本人にとって、足元で進む物価上昇に対して、銀行口座にお金を預けたままでいると、預金の価値が目減りしてしまうため、インフレ対策として投資をしなければいけない、と考え始めた人も多いでしょう。そうなれば、預金や投資について考える機会が増え、そこを詐欺師たちは狡猾に狙ってくるのです。

投資をするために知るべき常識

株高、新NISAという制度変更、インフレ対策など、投資を検討することは間違った行為ではありません。せっかくの機会ですから、まだ投資をしたことがない人は、これを機に余剰資金で最初の一歩を踏み出すのもよいでしょう。しかし、投資をする前に最低限知っておいて欲しいことがいくつもあります。

1つ目は「投資をしたから必ず資産が増えるわけではない」ということです。何を当たり前のことを言っているのだ、と思われるかもしれません。しかし、国が「貯蓄から投資へ」ということを掲げており、さらにはNISAという投資の非課税制度を拡充していっていることから、投資をすれば必ず資産が増えると勘違いしている人はいます。

2つ目はリスクとリターンの関係です。リスクがない、またはリスクが低いのに、高いリターンが約束されているという金融商品は存在しません。程度の差はあれど、基本的にはリスクとリターンは比例しています。銀行預金はリスクが低いかもしれませんが、その代わり大きなリターンは期待できません。一方で、株式は無価値になる可能性もあれば、倍どころか3倍、5倍とリターンが膨らむ可能性もあります。これもまた当たり前のことだ、と思われるかもしれませんが、投資詐欺に引っかかる人の多くはこの原理原則が本当の意味では理解できていないのです。

3つ目は、誰も将来のことを正確には予想できないということです。最近は投資情報をSNSやYouTubeなどの動画で収集しているという人も多いですが、すべての情報は参考程度に受け取りましょう。「この銘柄が絶対に上がる」とか「日本株は今が買い!」といった断定的な表現には注意が必要です。SNSやYouTubeでは極端な表現を使うことで関心を集めようとする人が多いのですが、そもそも将来のことを正確に予想できるのであれば、他人に教えずに一人で稼ぎ続ければいいだけですからね。

投資詐欺の具体例

投資に興味を持つ未経験者が増えると、情報の非対称性を利用して詐欺師たちの活動が活発化します。私は自分のYouTubeチャンネルで、実際に投資詐欺を行う人間に直接会っています。昔は「絶対に儲かる」という怪しい文言の書かれたチラシなどで勧誘していたのですが、最近の投資詐欺は非常に手が込んでいます。ここではよくあるパターンを1つ紹介します。

詐欺師からの声掛けは意外なところから始まります。バイト先の同僚やサークルの先輩、幼馴染など、比較的身近な人から連絡が来るのです。バイトをやるよりも短期間でお金が稼げる方法がある、などの内容で連絡があり、儲け方を教えてくれる人を紹介したいということで後日カフェなどで会うことになります。

カフェで知人とその詐欺師に会うと、すごい経歴や投資成績を語りながら、インスタグラムを見せてきます。そこには豪華なホテルで食事をしている写真や、タワーマンションからの夜景、高級自動車など優雅な生活の様子が何枚も載っています。自分とそれほど年齢も変わらない人がこんなスゴい生活をしているのか、と驚いてしまうわけです。

ひと通りの自慢が終わると、次にUSBメモリーに入っている投資プログラムを使うと、9割以上の勝率で稼げると言われるのですが、なんとその値段は50万円。学生だけでなく、社会人でもサクっと払える金額ではありません。しかし、それぐらいの金額なら投資ですぐに回収できると言われてしまいます。

さらに、最近の投資詐欺はより手が込んでいて、このUSBメモリーを他の人に同額で売れば、10%をキャッシュバックしてもらえる、という「ねずみ講」の仕組みが入っています。つまり、仮に投資プログラムが嘘のものであったとしても、10人に売ってしまえば、元はとれてしまう、ということになります。このような仕組みを持たせることで、とりあえず買ってみて試してみよう、とついつい手を出してしまうのです。

しかし、これは前述した「投資をする際に知っておきたい3つのこと」を理解していれば、引っかからないで済むわけです。投資をしても必ず資産が増えるわけではないのに、リスクもなく高確率で高いリターンが約束されている時点で、どれだけ魅力的なことを語られても、それは詐欺でしかない。このように判断できるのですから。

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