お盆の由来とは? 先祖を迎えるお盆の風習と行事を解説

夏はお盆の季節でもあり、田舎でお墓参りを予定している人もいるでしょう。日本では昔から「盆と正月が一緒にきたよう」という言葉があるように、お盆は正月と並んで重要な年中行事です。本記事では、意外と知られていないお盆の由来や、ご先祖をお迎えする行事などについて紹介します。

お盆の由来

そもそもお盆はどのようなもので、お盆の行事はいつ頃から行われているのでしょうか。お盆の由来について紹介します。

古くからある祖先供養の儀式
お盆の由来には諸説あり、仏教伝来以前から日本にあった祖神や先祖を祭る「祖霊信仰」と、仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が結びついたものという説が一般的です。

祖霊信仰は、仏教やキリスト教などのように教祖が教えを説いたわけではなく、自然発生的に生まれた信仰です。初春と初秋の年2回、祖先が「あの世」から「この世」に帰ってきて、しばらく一緒に過ごし、また戻ると考えられてきました。夏に祖先の供養を行う風習が確立されたのは8世紀ごろと考えられています。

盂蘭盆会
盂蘭盆会は、故人をしのび先祖に感謝し、供養する仏教行事のことです。盂蘭盆は、サンスクリット語で「逆さ吊り」を意味する「ウランバナ」の音訳といわれています。盂蘭盆会のはじまりについては、次のようなエピソードがあります。

釈迦の弟子であった目連(もくれん)は、餓鬼道に落ち、逆さ吊りにされて苦しむ母親を救うため、雨季の修行が明ける7月15日にすべての修行僧に飲食を施しました。すると、施しの一部が母親にも届き、その功徳によって母親を救うことができました。

日本に仏教が伝来したのは6世紀中ごろとされており、そこから8世紀ごろまでの間に広く普及していきます。その過程で、祖霊信仰の風習と盂蘭盆会が結びつき、日本独自の「お盆」の風習が形成されたと考えられています。

新盆と旧盆

お盆には大きく分けて新盆と旧盆があり、地域によって行われる時期に違いがあります。なぜ、地域によってお盆の時期に違いがあるのでしょうか。

新暦の導入がきっかけ
お盆に新旧があるのは、1872年(明治5年)に明治政府が国際基準に合わせて太陽暦(グレゴリオ暦)を導入し、それまでの太陰太陽暦から改暦を行ったためです。

改暦により太陰太陽暦は「旧暦」、新たに採用した太陽暦は「新暦」となり、旧暦で行っていた行事は、新暦では約1ヶ月遅れることになりました。

お盆の場合は、新暦の7月15日に行う「新盆」が一部地域では定着しましたが、従来通りの時期に近い1ヶ月遅れの8月15日の「旧盆」に行うのが一般的です。

新盆で行う地域
新盆の地域は、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県の都市部、熊本県の一部、金沢市の一部、函館市の一部などです。

新盆が全国的に定着しなかった理由には諸説ありますが、農業が盛んな地域では7月は農繁期になるため、8月のほうが行いやすかったという説もあります。

東京などは、政府のお膝元であったことから、新暦のお盆を採用せざるを得なかったという事情もあったでしょう。

なお、故人が亡くなり四十九日後に初めて迎えるお盆のことを初盆(はつぼん)と言いますが、それを指して新盆(にいぼん)と呼ぶこともあります。新暦のお盆も新盆なので、混同されやすいのですが、地域によっては読み方を変えるなどして区別しているようです。

旧盆で行う地域
上記に紹介した地域以外は旧盆です。夏休みとも重なるため、今では旧盆の方が一般的になっています。ただし、沖縄県と鹿児島県の奄美諸島は現在も旧暦盆を採用しています。

旧暦と新暦はちょうど1ヶ月違いになるわけではなく、年によってズレが生じます。旧盆も本来であれば、毎年日にちが違うはずですが、便宜上新暦の1ヶ月後である8月15日に行うようになりました。

これに対し、沖縄県など一部の地域では旧暦通りでお盆を行うため、毎年お盆の日付が変わります。

沖縄県のお盆

沖縄ではお盆にエイサーを踊る

前述したように、沖縄県と鹿児島県の奄美諸島では旧暦の7月13~15日にお盆を行います。今年(2023年)のお盆は8月28~30日になります。

沖縄ではお盆に限らず年中行事は旧暦で行っていますが、なかでもお盆はとても大事な行事です。各家庭ではお盆のための伝統料理を用意し、先祖をお迎えしてもてなし、エイサーといわれる盆踊りをしながら地域内を練り歩くなど、独特の風習があります。

お盆で行う行事

毎年お盆にお墓参りに行っていても、お盆の行事やスケジュールについて、あまり詳しく知らない人もいるでしょう。お盆の迎え方は地域や宗派によって違いがありますが、一般的な行事の流れや段取りなどについて紹介します。

迎え火

お盆の迎え火・送り火

お盆は8月(7月)13~16日の4日間で、13日が迎え盆、14日と15日が中日、16日が送り盆になります。

13日(迎え盆)の日の夕方には、先祖が迷わず帰って来られるように迎え火を焚き、玄関などにも盆行灯を灯します。仏壇に精霊棚を設置し、線香や花、ローソク、食べ物なども供えます。

キュウリやナスに割りばしなどで四つ足を付け、馬や牛に見立てたお供えを見たことがある人もいるでしょう。これらは精霊牛、精霊馬と呼ばれる、先祖があの世とこの世を行き来するための乗り物で、13日に供えるものの一つです。

墓参り
墓掃除は迎え盆までに済ませておくのが望ましいですが、難しければ墓参りの際に行ってもよいでしょう。掃除の際は、墓周辺の雑草や落ち葉などを取り除き、墓石の汚れを落としましょう。

墓参りは14~15日の中日にします。中日には家族や親戚などへの挨拶回りや、地域によっては会食をする風習もあります。

送り火
16日は祖先が「あの世」に戻る日です。15~16日は、夕方になったら、迎え火を焚いた同じ場所で送り火をしてお見送りをします。送り行事では京都の五山送り火が有名ですが、精霊流しや灯篭流しなどを行う地域もあります。

盆踊り

夏のにぎやかなイベント・盆踊り

お盆の期間中に盆踊りが行われる地域もあります。盆踊りは仏教の念仏踊りが由来とされていて、本来はお盆に帰ってきた先祖の霊を供養し、また送り出すための行事でした。今では地域の祭りやイベントになり、観光資源になっているものもあります。

特に日本三大盆踊りとされているのが、徳島県の阿波踊り、岐阜県の郡上踊り、秋田県の西馬音内(にしもない)盆踊りで、毎年全国から多くの観光客が訪れます。

まとめ

毎年お盆と正月には欠かさず帰郷するという人もいるでしょう。お盆は離れて暮らす家族が集まる機会でもあります。家族で墓参りをしたり、会食をしたりしながら亡き人の思い出話をして過ごすのが、基本的なお盆の過ごし方といえます。

コロナ禍で開催されなかった盆踊りも、今年は行われるところが多いものとみられ、久しぶりに参加してみるのもよいでしょう。

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