初夏を迎えると、ユスリカの蚊柱(かばしら)をよく見かけるようになります。身近でユスリカが大量発生して困った経験がある人もいるのではないでしょうか。
ユスリカの駆除や予防の方法としてはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、ユスリカの特徴や被害に触れたうえで、駆除法や予防法について解説します。
ユスリカはどんな虫?
ユスリカは、ハエ目ユスリカ科に属する昆虫です。見た目は蚊に似ていますが異なるグループで、人の血を吸うこともありません。体長は1~10ミリ程度です。日本国内だけでも1,000種以上いるといわれ、世界中には約10,000種類ものユスリカが報告されています。
ユスリカは溜まり水がある場所で発生しやすく、道路の側溝や河川、建物外周部などでよく見られます。ユスリカの幼虫は水中で4回の脱皮を経て蛹になり、それから約2日で成虫になります。成虫の口や消化器は退化していて食べることができないため、成虫の寿命はわずか5日程度です。成虫は初夏から秋にかけて特に多く発生します。
ユスリカの被害
ユスリカは蚊のように吸血することはないものの、人に対してさまざまな被害をもたらします。ここでは、具体的にどのような被害があるか紹介します。
大量発生して不快
ユスリカは大量発生する場合も多く、見る人に不快感を与えます。道路の側溝や河川などにはユスリカの幼虫の餌となる微生物の死骸が豊富なため、特に大量発生しやすい傾向にあります。
また、ユスリカは群飛行動する性質があり、まとまって飛びます。外に干している洗濯物に大量のユスリカが付着するケースも珍しくありません。ユスリカは光を好むため、夜になると玄関先の照明に集まりやすくなります。さらに、バイクや自転車などを運転している際にユスリカの蚊柱に遭遇すると、視界が塞がれて運転に支障が出る恐れもあります。
食品への混入
前述のとおり、ユスリカは明るい光に集まる性質があるため、人が生活している場所にもよく近づきます。照明の光に引き寄せられ、屋内に侵入する場合も少なくありません。
たとえば、キッチンやダイニングなど、食品を扱う場所にユスリカが入ってくる可能性もあります。食品の中に混入する恐れもあるため、食品の衛生を保つためにも、特にユスリカが大量発ししやすい時期は屋内への侵入をしっかり防止しなければなりません。
アレルギー疾患の原因になる
ユスリカはアレルギー疾患の原因にもなるため、注意が必要です。ユスリカの死骸を吸い込んでしまうと、アレルギー性鼻炎や気管支を引き起こすケースがあります。また、ユスリカが原因となる「ユスリカ喘息」の症例も報告されました。
付着したユスリカに気づかず洗濯物を取り込んでしまい、屋内でアレルギー反応が出るパターンもあります。
出典:ユスリカ喘息に関する臨床的検討 「―HD陽性例および陰性例の比較検討―」
ユスリカの駆除方法と予防対策
ユスリカの被害を防ぐには、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、ユスリカの駆除方法と予防策について解説します。
側溝などに水を溜めない
ユスリカは水が溜まっている場所に生息し、繁殖します。屋外で水が溜まりやすい場所は、こまめに掃除をして水を溜めないように気をつけましょう。
たとえば、道路の側溝や植木鉢の受け皿などは、いつの間にか水が溜まっていることがよくあります。また、庭にバケツを置いたままにしていると雨が降った際に水が溜まるため、使い終わったらすぐにしまいましょう。
水を溜めないようにするだけで、ユスリカはもちろん蚊の発生も防げます。
殺虫剤を使用する
ユスリカが発生したときは、殺虫剤を使用すると手っ取り早く駆除できます。殺虫スプレーや虫除けスプレーなど、さまざまな種類の殺虫剤が販売されています。また、吊り下げ式の忌避剤を使用するのも効果的です。
また、ユスリカは光に集まりやすいため、電撃殺虫器の使用は慎重に検討する必要があります。設置すれば大量発生したユスリカを駆除できるものの、そもそもユスリカを引き寄せてしまう可能性があるためです。
さらに、屋内に侵入したユスリカを駆除したいときは、電気蚊取り器や蚊取り線香なども有効です。屋内で薬剤を散布したくない場合も安心して使用できます。
外の照明をLEDに変更する
ユスリカは、紫外線に誘引されて光に集まります。蛍光灯は紫外線を発するので、LED照明に換えるとよいでしょう。LED照明は紫外線を出さないため、ユスリカが集まりにくくなります。
ただし、ユスリカは紫外線に近い可視光にも引き寄せられます。そのため、LED照明に換えても、ユスリカの侵入を完全に阻止できるわけではありません。他の方法も組み合わせながら対策しましょう。
幼虫を羽化させない薬剤を散布する
ユスリカが生息地として好む側溝などに薬剤を散布すると、幼虫の羽化を抑制できます。羽化できなければ、そもそもユスリカが大量に飛び回ることはありません。
具体的には、ピリプロキシフェンが配合されている薬剤が効果的です。ピリプロキシフェンはさなぎから成虫への変態を制御する効果があり、ユスリカやチョウバエなどの羽化を阻止します。人体に影響はありませんが、薬剤を使用する場合は、用法や用量を守って正しく使用しましょう。
まとめ
ユスリカは蚊に似ているものの、人の血を吸うわけではありません。しかし、大量発生しやすく、不快感やレルギー疾患などの被害をもたらします。ユスリカの大量発生を防ぐ方法はいくつかあるため、できることから始めましょう。
なお、万が一、手に負えないくらい大量のユスリカが発生した場合は、行政への相談や害虫駆除会社への駆除依頼も検討してください。なるべく早めに予防や駆除に取り組み、被害を最小限に抑えましょう。