年金は老後の貴重な収入源となるため、いくら貰えるのかを把握しておくことが大切です。貰える年金の額は加入する年金の種類や年齢によって変わります。今回は、年金の平均受給額や自分の年金受給額の調べ方などを解説するので参考にしてください。
貰える年金の額は人によって違う
老後に貰える年金の額は、職業や働き方、年金の加入期間などによって異なります。日本の公的年金制度は2階建てになっており、1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金です。
国民年金は個人事業主や無職の人などが加入する年金、会社員や公務員は国民年金に加えて厚生年金にも加入しています。また、会社員や公務員に扶養されている配偶者は国民年金のみに加入します。
さらに、任意で加入できる私的年金制度(保険会社が販売する年金保険や税制優遇のある国の仕組み)もあります。貰える年金額を知るには、まず自分がどの年金に加入しているのかを把握することが大切です。
公的年金の種類とそれぞれの平均受給額
公的年金は種類によっても受給額が変わってきます。厚生年金は国民年金に上乗せして保険料を支払うため、平均受給額が国民年金よりも高くなることが一般的です。ここでは、公的年金の種類ごとに平均受給額について解説します。
国民年金
国民年金は原則として日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人全員が加入する年金です。毎月の納付額が決められており、受給額は満額受給額と保険料納付済の月数で決まります。
2023年4月分(令和5年度)からの満額受給額は、67歳以下で月額6万6,250円(68歳以上は月額6万6,050円)です。
国民年金の平均受給額は、2021年度(令和3年度)で5万6,368円となっています。平均受給額が満額受給額より少ない理由は、人によって免除申請をしていた期間や、保険料の未納期間があることが要因です。
出典:令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 | 厚生労働省年金局
厚生年金
厚生年金は会社員や公務員が加入する年金制度のことで、国民年金に上乗せして保険料を納めます。厚生年金の保険料は給与と賞与の金額が基準となっており、給与と賞与が高いほど保険料も上がる仕組みです。そのため、給与や賞与が多い人ほど貰える年金の額も多くなります。
厚生年金の平均受給額は、2021年度で月額14万5,665円となっています。この金額は国民年金の受給額を含むため、国民年金の平均受給額よりも高くなります。
出典:令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 | 厚生労働省年金局
貰える年金の額の調べ方
自身が貰える年金の額を調べる方法としては、「ねんきん定期便」または「ねんきんネット」の確認と、自分での計算の3種類があります。方法別に調べ方を解説するので参考にしてください。
ねんきん定期便で調べる
ねんきん定期便とは、日本年金機構から毎年誕生月に送られてくる年金記録が記載されたハガキ、もしくは封書(35歳、45歳、59歳のみ)のことです。将来受給できる年金額の目安や納付状況を加入者に通知することにより、年金制度への理解や信頼を高めるという目的で送付されています。
ねんきん定期便には「直近13ヶ月」(35歳、45歳、59歳は全期間)の国民年金や厚生年金の加入状況、累計年金保険料納付額、加入実績に応じた年金額が記載されています。ねんきん定期便を確認すれば、貰える年金額の目安がわかります。
50歳以上になると記載内容が少し変わり、受取開始年齢による受給額の違いも確認できるようになるので、具体的な将来のイメージが可能です。
ねんきんネットで調べる
ねんきんネットとは、自身の年金情報を確認できるWebサービスのことです。ねんきん定期便と異なり、いつでもどこでも調べられるという特徴があります。
年金記録の確認や年金見込み額の試算のほか、国民年金保険料免除・納付猶予申請書や国民年金保険料追納申込書などの届出書作成、通知書の再交付申請などの手続きが可能です。
ねんきんネットを利用するには登録が必要です。マイナポータルとの連携と、またはねんきんネットのユーザID取得の二つの方法があります。
ねんきんネットでは、現在の加入条件で将来の年金額を試算できるほか、今後の職業や収入、受給開始年齢、追納の有無など、さまざまな条件を変えた場合の試算も可能です。
自分で計算する
年金の受給見込み額の確認や年金の仕組みの理解をしたい場合は、自分で計算してみるのも一つの方法です。国民年金、厚生年金それぞれの受給見込み額は、次の方法で計算できます。
国民年金:満額年金額×(保険料の納付月数÷480ヶ月)
厚生年金:報酬比例部分(A)+経過的加算(B)+加給年金(C)
A:報酬比例部分は過去の平均標準報酬額(※1)と加入期間に応じて算出。2003年3月までと2003年4月以降に分けて計算します。
2003年3月までは、平均標準報酬月額(※1)×7.125(※生年月日が1946年4月2日以降の場合)÷1000×2003年3月以前の加入月数
2003年4月以降は、平均標準報酬額(※1)×5.481(※生年月日が1946年4月2日以降の場合)÷1000×2003年4月以降の加入月数
※1「平均標準報酬月額」「平均標準報酬額」については、日本年金機構のホームページでご確認ください。
B:経過的加算とは、65歳から支給される老齢基礎年金額が64歳まで支給される特別支給の老齢厚生年金(※)の定額部分より少ない場合に支給されるものです。
経過的加算の額=特別支給の老齢厚生年金(※2)の定額部分の額−老齢基礎年金の額
※2「特別支給の老齢厚生年金」についての詳細は、日本年金機構のホームページでご確認ください。
C:加給年金とは、厚生年金の加入期間が20年以上あり、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で扶養している配偶者や子がいる場合などに加算されます。
上記のA、B、Cを足したものが老齢厚生年金の額ですが、計算が複雑なので、まずはねんきん定期便やねんきんネットで確認するとよいでしょう。
貰える年金の額が少ない場合の対処法
貰える年金額を試算した結果、老後の生活費が心配な場合は、年金の額を増やす方法も検討してみてください。特に国民年金のみに加入している場合は、将来の年金額が少ない可能性があるため、積極的に考えることをおすすめします。
年金額を増やす主な方法は以下のとおりです。
・繰り下げ受給をする
・任意加入制度を活用する
・付加年金を上乗せする
・国民年金基金に加入する
・iDeCoや個人年金保険などの私的年金を利用する
など
繰り下げ受給とは、本来は65歳から貰える年金の受給開始時期を遅らせることにより、受給額を増やす方法です。また、任意加入制度は、保険料納付済期間が満額に足りないなどの場合に60歳を超えても年金に加入できる制度です。
付加年金とは、個人事業主などが国民年金保険料にプラスして月額400円納付することにより、受給額(年額)に「200円×付加保険料納付月数」が上乗せ支給される制度。国民年金基金は、同じく個人事業主などが加入できて、上乗せ支給される制度です。ただし、付加年金と国民年金基金は選択制で、どちらか一方のみ利用できます。
iDeCoは一定の要件を満たすことで加入できる個人型確定拠出年金であり、個人年金保険は民間の貯蓄型保険商品です。
まとめ
国民年金の平均受給額は2021年度(令和3年度)で5万6,368円、厚生年金の平均受給額は月額14万5,665円です。ただし、実際に貰える額は年金の加入期間や年齢、給与などによって変わります。
将来貰える年金の額を調べるには、ねんきん定期便やねんきんネットなどで確認するのがおすすめです。年金が足りないと感じる場合は、付加年金や国民年金基金などで増やす方法を検討しましょう。