「抜いてもきりがない雑草を一気に処理したい」といったときに便利な除草剤。除草剤は雑草のお手入れに効果的で便利なものですが、ペットがいる場合には注意が必要です。この記事では、除草剤がペットに与える影響や、ペットが除草剤を舐めたり嗅いだりしてしまった場合の対処法などについて解説します。
除草剤はペットにとって毒
除草剤は、農薬の一種で、雑草を枯らしたり、雑草が生えるのを抑えたりする効果を持ちます。しかし、この草や葉に効く毒性が、犬や猫などのペット対しても悪い影響を及ぼすことがあります。
特に、有機ヒ素系、グリホサート系、パラコート系の除草剤は、犬などのペットに対して毒性が強いといわれています。
現在の日本では、有機ヒ素系の除草剤の製造・販売はされていませんが、毒性が強いそのほかの除草剤を犬や猫が摂取した場合にはさまざまな中毒症状を引き起こす可能性があります。
中毒症状では、嘔吐や下痢、血便、血尿、けいれん、ふらつき、胃腸炎、肝腎障害といった症状がみられます。場合によっては、けいれんなどの神経症状から呼吸困難を引き起こし、死に至ったり、重い後遺症が残ったりすることもあるため注意が必要です。
ペットが除草剤を摂取してしまうケース
ペットが除草剤を摂取してしまう状況には、さまざまなケースがあります。以下ではペットがどのような場所でどのような行動をして除草剤を摂取してしまうのか、具体的に紹介します。
除草剤がついた草を食べる
ペットは、自宅の庭で遊んでいるときや外で散歩をしているときに、除草剤のついた草や葉を食べてしまうことがあります。
除草剤は、公園や道路、駐車場など、さまざまな場所で散布されています。ときには、除草剤がまかれた直後に、それらの場所で遊び、除草剤が濃くついた草を食べてしまうこともあります。自宅で除草剤を使わないからといって、安全なわけではありません。
そのため、庭に除草剤をまいた後には庭にペットを解放しない、また、散歩中には路上の草を食べないように目を配る必要があるでしょう。
除草剤が付着した脚を舐める
ペットは、除草剤のついた草を直接食べなくとも、除草剤が付着した脚を舐めることでも除草剤を摂取してしまうことがあります。
ペットが、除草剤の散布された草や土の上を歩くことで、脚に除草剤が付着します。除草剤を付着したままにしておくと、犬や猫が後にそれを舐めて体内に取り込んでしまうほか、皮膚から成分を吸収してしまうこともあります。
体内に取り込まれる量は比較的少量ですが、念のため散歩のあとは脚の裏や体の表面を拭いてあげましょう。
散布中に臭いを嗅いで吸い込む
除草剤を散布している最中に臭いを嗅いで除草剤を吸い込んでしまうこともあります。
除草剤には、粒状のものと液状のものとがあります。粒状のものは土に広く散布され、液状のものは噴霧器などで葉や茎に散布されます。どちらの臭いも犬が興味を持って吸い込んでしまうことがあるため、散布中には近づかないようにするなどの配慮が必要です。
また、特に粒状のものは風に飛ばされやすく、遠方まで飛ぶ可能性があります。そのため、より距離をとって散布中の場所を避けるようにしましょう。
ペットを除草剤から守る方法
ペットを除草剤から守って、自宅の庭や外で安全に遊ばせるためには、どのような点に気をつければいいのでしょうか。以下に、ペットを除草剤から守るための具体的な方法を紹介します。
除草剤を使うときはペットにやさしいタイプを選ぶ
除草剤とひと口にいっても、多くの種類の除草剤があります。自宅で除草剤を使う場合には、ペットが除草剤を口にしたときのリスクを下げるためにも、「ペットや子どもにやさしい」と明記された安全な除草剤を使うことがおすすめです。
「ペットや子どもにやさしい」除草剤とは、体内に入れても害のない食品や天然成分で作られた除草剤のことです。たとえば、酢やミネラル、ペラルゴン酸といったものを主要成分として作られています。
安全性が高いうえに、効果も高いものがほとんどです。また、種類も豊富で、効果の持続期間や土地の用途によって選ぶこともできます。ペットにとって安全で、実用性も高いため、おすすめです。
草や落ちているものを食べないようによくみておく
ペットを除草剤から守るには、まずはペットが草などの落ちているものを食べないように注意してみておきましょう。
公園や道路などには、中毒症状を引き起こす除草剤以外にも、拾い食いすると危険なものが多く落ちています。たとえば、石やガラス、虫、寄生虫のいる生ごみ、焼き鳥の串などは、誤飲するととても危険です。
ペットをさまざまな危険から守るためにも、拾い食いをしないように目を離さないことが大切です。万が一、何かを口に入れてしまったら、すぐに吐き出させるなどの対処をしましょう。
除草剤をまいている部分には近づかない
除草剤が散布されたと思われる場所には近づかないようにしてください。
春や夏など草木が茂る時期であるにもかかわらず、広い範囲にわたって雑草が生えていなかったり、雑草が枯れていたりする場合は、除草剤がまかれた可能性があります。
なお、雑草が生い茂っているからといって安心はできません。除草剤の散布直後は、雑草がまだ枯れていないため、見た目だけでは除草剤をまいたかどうかの判断ができないこともあります。
その際には、除草剤が散布されやすい時期を参考にして判断しましょう。雑草を枯らすために除草剤を茎葉部分に散布する茎葉処理は4~10月、雑草を生えなくさせるために除草剤を散布する土壌処理は2~3月と9~10月に行われます。このため、2~3月、4~10月は、あまり草むらに近づかないようにするとよいでしょう。
もしペットが除草剤を摂取してしまったら
注意していても、ペットが除草剤を摂取してしまうケースがあります。ここからは、ペットが除草剤を摂取してしまった場合の対処法について解説します。
かかりつけの動物病院に連絡する
ペットの症状が把握できたら、かかりつけの動物病院に電話をするなどして、指示を仰ぎましょう。その際にメモをしておいた具体的な症状を伝えるとスムーズです。
獣医師からどうするべきかという指示が出されるまでは、自己判断で無理やり吐かせたり、市販薬を飲ませたりといったことは避けましょう。ペットの体力を奪う原因となり、かえって悪い影響を及ぼすケースが少なくありません。
除草剤よりも殺鼠剤や殺虫剤に注意
除草剤の危険性をお伝えしましたが、実は殺鼠剤や殺虫剤のほうが除草剤より危険性が高いといえます。そのため、殺鼠剤や殺虫剤にはさらに多くの注意を払う必要があります。
除草剤は、植物を枯死させる効果のあるもので、殺鼠剤や殺虫剤は生き物を殺傷する効果を持つものです。そのため、ペットなどの生き物への毒性が高いといえます。
特に金魚、メダカなどの魚は噴霧タイプの殺虫剤で死んでしまうことがよくあります。犬や猫でも、殺虫剤のかかった草や虫、物を口にすると、えずきや嘔吐、食欲減退、内出血、吐血などの危険な中毒症状を発症します。
自宅で殺鼠剤・殺虫剤を使用する際には、犬や猫の口に触れることのないように十分注意しましょう。
また、散歩先の道路などに殺鼠剤が含まれた食べ物が落ちている可能性はゼロではありません。散歩をする際にも、拾い食いをしないように目を配ることが大切です。
まとめ
除草剤は、犬などのペットが誤飲すると中毒症状を引き起こすことがあります。そのため、除草剤を使う場合は、ペットが口にしても安全な除草剤を使うようにしましょう。
また散歩をする際には、ペットが拾い物を口にしないように気をつけ、除草剤が散布されたと思われる場所には近づかないことが大切です。また、除草剤だけでなく、より毒性の強い殺鼠剤や殺虫剤にも注意するようにしてください。