建築基準法には建物を建てる際のさまざまな条件が定められています。そのうちの一つが建ぺい率、容積率です。建ぺい率と容積率によって基本的な家の大きさ・高さが決まるため、特に注文住宅を建てたい人は把握しておくべきでしょう。この記事では、建ぺい率・容積率の基本や緩和される条件などについて解説します。
建ぺい率とは
建ぺい率とは「敷地面積に対する建築面積の割合」を示す数値で、都市計画で定められた用途地域ごとに制限が設けられています。
建築面積は上空から見たときの面積(水平投影面積)で測定し、斜面などがあっても水平とみなして計算します。たとえば、2階部分が100平方メートルで、その真下に1階部分80平方メートルがある建物の場合、建築面積は100平方メートルです。
なお、敷地内にある建物の建築面積はすべて合算されるため、離れや倉庫などを建てる際には建ぺい率を超えないように注意する必要があります。
容積率との違い
一方の容積率は「敷地面積に対する延床面積の割合」を示す数値で、建ぺい率と同じく用途地域によって上限が決まっています。延床面積とは各階の床面積の合計のことです。
建築面積は2階建てや3階建てになっても変わりませんが、延床面積は階数が増えるにつれて大きくなります。狭小地では住空間を確保するために階数を増やすのが有効な手段ですが、容積率を超えないように注意しなくてはなりません。
建ぺい率や容積率の制限
用途地域は13種類(2023年5月現在)あり、そのうちの8種類は住環境が優先される「住居系」の地域です。それぞれの地域の建ぺい率・容積率は、建築基準法で次のように決められています。
土地の用途地域や建ぺい率・容積率は、所在地の役所の窓口やWebサイトで確認できます。土地を購入する前に確認しておきましょう。
なぜ建ぺい率・容積率に制限があるのか
用途地域は都市の機能や景観を調整し、住民の住環境や安全を確保するために定められています。建ぺい率や容積率に制限があるのも、快適な住環境と安全を守るためです。建物が密着していると風通しや日当たりに影響します。また、火災時に被害が広がりやすく大変に危険です。
なお、容積率には地域の人口をコントロールする役割もあります。もし際限なく階数を増やせるとしたら建物の住民が増え、地域の人口が急激に増加する可能性があります。そうなるとインフラ整備が追い付かなくなり、住みづらさを感じるようになるかもしれません。建ぺい率・容積率は、これらのトラブルを未然に防ぐルールといえます。
そのほかの制限
建物の高さに関係するのは容積率だけではありません。街の景観や住環境を整えるために次のような制限が設けられています。
【絶対高さ制限】
第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域を対象とするルールで、建物の高さが10m以下または12m以下に制限されます。ただし、10m以下に制限される地域でも、一定の条件を満たした場合には高さ12mまでの建物が建築可能です。
【斜線制限】
土地を横から見たとき、前面道路や隣接する建物の境界線から一定の勾配の斜線におさまる範囲内に建物の高さを制限するルールです。「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」の3種類があり、住宅系用途地域では次のように斜線の始点や勾配の角度が定められています。
・道路斜線制限
・隣地斜線制限
・北側斜線制限
なお、いずれの斜線制限も状況に応じた緩和措置があるので、実際に家を建てる前に確認しておきましょう。
建ぺい率の制限が緩和される条件
次に該当する場合、建ぺい率の緩和が認められ、規定の指定建ぺい率に10%が加算されます。なお、耐火建築物または準耐火建築物および角地の二つの条件に該当する場合は20%アップが可能です。
・防火地域内にある耐火建築物
・準防火地域内にある準耐火建築物
・角地またはこれに準ずる敷地で特定行政庁(自治体)が指定する地域内にある建築物
ただし、一定の条件を満たした場合に限ります。角地に対する条件は、二つの道路が交わる角度や接道の長さなどさまざまです。自治体の条例で定められているため、役所に問い合わせてみましょう。
容積率の制限が緩和される条件
敷地に面している前面道路が幅12m未満の場合、住居系の8地域では前面道路の幅に0.4を乗じた数値から容積率が割り出され、指定容積率と比べてより厳しいほうが適用されます。ただし、以下の条件を満たす場合は容積率緩和の対象です。
・特定道路(幅員15m以上の道路)までの距離が70m以内
・特定道路に通じる前面道路の幅員が6m以上12m未満
また、次にあげるスペースや建造物の床面積の一部は延床面積から除外されるため、容積率に影響しません。
ただし、適用条件が設けられているため、施工時には注意してください。
もし建ぺい率・容積率を守らなかったら
建ぺい率・容積率をオーバーした建物は「違反建築物」として行政指導を受けます。指導に従わない場合は刑事罰の対象になることもあるため、適切に対応しなくてはなりません。
違反建築物については行政だけでなく、金融機関も確認を行います。違反建築物には融資の許可がほとんど下りないため、購入や売却は難しいでしょう。
なお、法律の改正や都市計画の見直しなどによって違法となってしまった建物は「既存不適格物件」と呼ばれ、違反建築物とは区別されます。この場合、建築当時の建築確認申請書などで合法的に建てられたことを証明できれば、売却できる可能性はゼロではありません。
建ぺい率や容積率を守りながら住宅を建築するコツ
前述のとおり、建ぺい率・容積率それぞれに緩和措置が設けられています。これらを押さえて土地探しを始めると、希望に合う家づくりが実現できるのではないでしょうか。
建ぺい率が小さい場合は、階数を増やすことで必要な延床面積を確保できます。そのうえで、地下室やロフトなど容積率から除外される部分を上手に取り入れてみましょう。吹き抜けやリビング階段など間取りの工夫によって、実際の面積よりも開放感のある空間に仕上げることも可能です。
まとめ
建ぺい率は「敷地面積に対する建築面積の割合」、容積率は「敷地面積に対する延床面積の割合」を表す数値で、建物の大きさと高さに関係します。
建ぺい率と容積率は用途地域ごとに上限が設けられていて、これを超えた建物を建てることはできません。ただし、条件を満たした場合は上限が緩和されることもあります。希望どおりの家を建てるために、用途地域や建ぺい率・容積率をきちんと把握したうえで土地を探すことをおすすめします。