「戸建ての買取再販」が今後増えていく?! 大手ハウスメーカーが続々と強化の動き

不動産会社などが中古住宅を買い取って、リノベーションした後にエンドユーザーに販売する「買取再販事業」が注目されています。これについては、ARUHI マガジンで「リノベ済み物件の販売が増加中! 買取再販物件の魅力と購入の注意点を解説」という記事にまとめています。

ただし、都市部の買取再販物件の多くは、中古マンションです。戸建てはマンションと比べて、表から見えない部分の損傷具合が分かりづらく、予想していた以上にリノベーション費用がかかる場合があります。マンションよりリスクが高いという事情から、マンションを扱う事業者が多いのですが、地方の戸建てを中心に買取再販する専業事業者の登場で、地方では戸建ての買取再販物件も増えています。

それに加えて近年は、ハウスメーカーが戸建ての買取再販事業を強化する動きが目立っています。

ハウスメーカーが戸建ての買取再販事業を強化する動き

住宅市場では、人口や世帯数が減少する中、新築住宅市場が縮小すると言われています。政府の支援策も、新築住宅から良質な住宅ストックへと舵を切っています。また、住宅ストックをリノベーションすることは、建て替えて新築するよりもCO2の排出量や廃棄物を削減できるので、政府が力を入れている『脱炭素社会』や『SDGs』について寄与することができます。

こうした背景から、注文住宅の新築事業を中心に展開していたハウスメーカーが、買取再販事業に力を入れる動きが加速しています。

例えば、パナソニック ホームズ株式会社では、2023年4月19日に、2023年度から3カ年の新・中期計画事業戦略を発表していますが、その一つとして、「買取再販」の売上目標を挙げています。自社の住宅を買い取ってリノベーションしたうえで再販する事業を2025年度には100億円にしていくという計画です。これは、2022年度のおよそ5倍に該当しますので、かなり強化していくことになるでしょう。

パナソニック ホームズ株式会社
出典:パナソニック ホームズ株式会社「新・中期計画&60周年商品発表会~事業戦略について~」発表資料より

そして、今回注目したのは、2023年4月18日に、積水化学工業株式会社(以下積水化学工業)がリノベる株式会社(以下リノベる)と資本業務提携をして、買取再販事業を強化すると発表したことです。

戸建ての買取再販を加速、積水化学工業+リノベる

積水化学工業は、「セキスイハイム」という戸建てのブランドを展開しているほか、住宅の建材などの製造販売、リフォーム事業などを行っています。2020年12月には、自社の戸建ての買取再販事業のブランドとして『Be ハイム』を立ち上げ、翌年にセキスイハイム誕生 50 周年記念プロジェクトの一環として、『Be ハイム』の目標を2030年に500棟を目指すと公表しました。

■Be ハイムの施工事例(外観)

Be ハイムの施工事例(外観)

■Be ハイムの施工事例(内装)

Be ハイムの施工事例(内装)
(積水化学工業提供)

一方で、リノベるは、中古マンション探しとリノベーションをワンストップで提供するブランド『リノベる。』を展開しており、マンションリノベーション事業者でトップランナーの一翼を担っています。さらに、リノベーションに関わる企業などに対して、テクノロジーを活用したさまざまな支援サービスを提供する、リノベDXプラットフォーム事業も展開しています。

積水化学工業では、Beハイム事業を推し進めてきましたが、成長をさらに加速させるために新しいパートナーを探しており、両社の強みを活かせるということで、パートナーにリノベるを選んだということです。どういった強みが活かせるのでしょうか、具体的に見ていきましょう。

積水化学工業では、中古住宅を仲介する事業も行っていますが、大手不動産仲介会社のように全国に数多くの路面の営業店を置いて集客する展開をしていません。一方リノベるでは、WEB上で顧客とマッチングするプラットフォームを持っており、リノベーションに関わるパートナーのネットワークを構築しています。そうした強みを持つリノベると組むことで、集客力を上げたりブランド力を高めたりする効果が期待できると判断したわけです。

リノベるにとっては、全国に建っているセキスイハイムは、住宅の工法や施工方法、住宅履歴などが明らかな戸建てですから、戸建てのリノベーション領域に進出しやすいというメリットがあります。さらに、積水化学工業がマンションの高性能化リノベーションで展開している『マルリノ』の技術を活用できるので、リノベるのマンションリノベ領域においても、結露発生リスクを低減する断熱性能などの性能向上リノベーションを加えられるメリットがあるわけです。

ほかにも、積水化学工業側には、マンションリノベで構築したリノベるの企画力・提案力をBeハイムの付加価値の訴求強化に活用できたり、リノベる側には、セキスイハイムグループによる全国規模のアフターサポート体制を活用できたりという相乗効果が考えられます。

こうして見てきたように、ハウスメーカーが外部のパートナーと組んで買取再販事業を加速化する動きは、今後も増えるかもしれません。

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ハウスメーカーの買取再販事業の展開に注目

住宅産業新聞の2022年2月22日の報道によると、2020年度に買取再販事業を立ち上げたヤマダホームズでは、買取再販事業を2025年度に売上高500億円を計画し、新築を上回る事業に成長させる意向であると伝えています。

日本の住宅ストック数は世帯数を上回る時代になっており、空き家の増加が社会問題化しています。住宅ストックの多くを占める戸建ての買取再販事業が進むことが、良質な住宅ストックの継承と流通に有効と言われています。今後もハウスメーカーが自社で建てた戸建てを中心に、戸建ての買取再販を強化する動きが増えていくことでしょう。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

(最終更新日:2024.04.19)
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