数寄屋造りの特徴や魅力とは? 歴史や由来、書院造との違いも解説!

ヨーロッパ風、アジアンテイストなど、さまざまなスタイルの家がありますが、日本の伝統が感じられる和風の家にあこがれる人も多いのではないでしょうか。和風建築の一つである数寄屋造りは、日本の重要文化財でも見られる建築様式で、その美学は現代の家屋にも生かされています。

今回は、数寄屋造りの基本的な情報や、混同されがちな書院造との違いについて解説します。数寄屋造りの家を建てる際のポイントも紹介するので、参考にしてみてください。

数寄屋造りとは

数寄屋造りとは、古くから日本に伝わる建築様式の一つです。「数奇」とは茶道や和歌など風流を好む人を指す言葉で、「好き」とも通じるとされています。

数寄屋造りの大きな特徴は、茶室の建築技法を取り入れている点です。もともとは母屋とは別に建てられた茶室のことを数寄屋といい、その建築様式全体を数寄屋造りと呼びます。お茶のたしなみは数寄屋造りの誕生以前から存在していましたが、その発展とともに専用のスペースが用意されるようになり、数寄屋造りが様式化されるに至りました。

現代においてはさらに意味が広がり、茶室の有無に限らず、数寄屋造りの趣向や美学が感じられる建築を「数奇屋風」「数寄屋造り」と呼ぶケースもあります。純和風、和モダンなど和テイストの家に数寄屋造りの考え方が生かされることもしばしばです。

数寄屋造りの歴史・由来

数寄屋造りが本格的に建設されるようになったのは、安土桃山時代ごろだとされています。数寄屋とは茶室を指すもので、茶道は室町時代以降に発展しましたが、お茶そのものは平安時代に中国から持ち込まれ、当初は主に薬として用いられていました。

貴族たちは、豪華絢爛な茶室や高価な茶器とともにお茶をたしなむようになります。しかし、千利休によってわび茶(茶の湯)が大成されると、質素で素朴な茶室に美を見出すようになりました。

わび茶が継承されるうちに誕生したのが簡素で狭い「草庵風茶室」であり、これが数寄屋の源流だとされています。桂離宮新書院や修学院離宮、伏見稲荷大社御茶屋など、数寄屋造りを取り入れた歴史的建築物も多く建設されました。

数寄屋造りは、江戸時代以降は一般住宅にも広まるなど、時代の変遷とともに変化・普及を続け、現代に受け継がれています。

数寄屋造りと書院造の違い

数寄屋造りと書院造の違いは、格式を重んじるかどうかにあります。書院造は室町時代に確立したとされる日本の伝統的な建築様式です。

平安時代は板の間に寝具などとして畳を敷き、部屋を御簾などで区切る寝殿造が主流でしたが、その後に登場した書院造では床全体に畳を敷きつめ、ふすまで部屋を分割するようになりました。現代の書斎を意味する「書院」を中心に、高さの異なる「違い棚」や、段のある座敷なども特徴です。

書院造は、当初は個人の居室として使用されるのが主でしたが、時代が進むにつれて、客間や儀式の場など公的なスペースへと発展します。特に武士階級の間では、身分の序列を示す場でもありました。

格式を重んじる書院造に対し、より自由な発想を求めて生まれたのが数寄屋造りです。格式や固定化した様式、装飾などを取り払った質素な建造物であり、「内面を磨いて客をもてなす」という茶人たちの考えが反映されています。

数寄屋造りの特徴

数寄屋造りの特徴について、さらに詳しく見ていきましょう。

決まった形式がない
数寄屋造りには、決まった形式がありません。数寄屋造りは、書院造に見られるような格式や序列を重視した意匠を排除し、自由な発想で作られる建築です。そのため、数寄屋造りを象徴する形式というものは定まっていません。

形式にとらわれない自由さや素朴さ、シンプルさを追求したデザインが、数寄屋造りを定義づけるポイントだといえるでしょう。

自然との調和が楽しめる
数寄屋造りの建築物は、自然素材を生かしたつくりが特徴です。独特な質感の土壁や、樹皮を削らずに残した杉、竹などが使われています。

建材の素材感を損なわずに利用する数寄屋造りの美学は、現代の和風建築にも継承されています。屋内にいながら自然との調和が感じられるのが、数寄屋造りの大きな魅力の一つです。

シンプルで簡素なデザイン
シンプルで簡素なデザインは、数寄屋造りを代表的する美意識です。前章で紹介したとおり、格式を重んじる書院造に対して、数寄屋造では装飾を排した素朴さやシンプルさに美学や哲学を見出しています。

書院造と比べると、数寄屋造りでは床の間は小規模で質素に作られることが多く、柱の上部をつなぐ「長押(なげし)」も省略されています。

借景を取り入れている
借景とは日本庭園で用いられる技法のひとつであり、遠方にある山などの自然物を、景観の一部とするものです。数寄屋造りにも、この借景の考え方が広く用いられています。多くの数寄屋は室内がコンパクトになっていますが、借景を取り入れた雄大な景色によって開放感も得られます。

数寄屋造りの家を建てるには?

数寄屋造りの家を建てるには、高度な施工技術を持つ職人が必要です。また、数寄屋造りには決まった形式がないため、施工事例などから完成イメージをつかむことが求められます。もし数寄屋造りの家を建てたいと考えるなら、和風建築を専門に行っているハウスメーカーに相談してみましょう。

なお、現代では、数寄屋造りは高級和風建築に用いられるケースが大半です。一般的な住宅よりも建設費用が高くなりやすい点は、おさえておきましょう。

まとめ

数寄屋造りとは、書院造の格式や装飾を排除した、シンプルで質素な建築物です。自然の素材を生かし、借景を取り入れることで、自然との調和が楽しめます。

旅行先や身近な寺院などに数寄屋造りの建物があれば、今回紹介した内容を参考に、風流を味わってみましょう。また、数寄屋造りの家を建てるなら、和風建築を得意とするハウスメーカーへの依頼がおすすめです。

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