60歳で住宅ローンを組むリスクとは? 比較検討したい方法も紹介!

長期にわたって借り入れる住宅ローンは年齢が高くなるほど返済が難しくなることから、60歳で終の棲家を購入するのは難しいと諦めている人もいるのではないでしょうか。

そこで、この記事では60歳でマイホームを購入したいと考えている人に向けて、60歳で住宅ローンを組むことが可能なのか解説します。また、住宅ローン以外で住宅購入資金を調達する方法や、高齢になってから家を買うリスクと注意点などについても詳しく紹介していきます。

60歳からでも住宅ローンを組むことは可能なのか?

そもそも60歳以上になっても住宅ローンを組むことはできるのでしょうか。

結論から言うと、60歳からであっても住宅ローンは組めます。ただし、融資を行う金融機関からすれば返済に関するリスクが高いので、若い人よりも選択肢が限られます。融資条件も厳しく、借りる側にとってもリスクが高いため注意が必要です。

【フラット35】を例に見ると、申込時の年齢が満70歳未満であれば申し込めるものの、借入期間の上限は「35年」もしくは「80歳−申込時の年齢」と定められています。つまり、60歳の人であれば20年が上限ということです。

後ほど詳しく解説しますが、借り入れられる期間が短いと、借入可能金額が少なくなったり、月ごとの返済金額が増えたりといったさまざまなリスクが生じる可能性があります。

60歳で住宅ローンを組むリスクとは?

60歳で住宅ローンを組む場合、選択肢が狭まるということ以外に、若い人と比較してどのようなリスクが高まるのでしょうか。60歳以上の住宅ローン利用において、気を付けるべき点について見ていきましょう。

毎月の返済負担が重くなる
60歳で住宅ローンを組むうえで大きなリスクといえるのが、毎月の返済額が大きくなるという点です。

【フラット35】の例を紹介しましたが、60歳で住宅ローンを借り入れる場合の借入期間は最長でも20年が一般的であり、若い人のように長期でローンを組むことができません。借入期間が短くなると、必然的に毎月・毎年の返済負担が重くなりがちです。

60歳で住宅ローンを組むケースであっても、返済負担率(返済比率)は若い人と同様に手取り年収の20%以下とするのが理想とされています。高くても25%程度に抑えたいところです。

退職金や自宅の売却代金などまとまったお金が手元にあるなら、多めに頭金を入れて借入額を少しでも減らすよう検討するのもいいでしょう。ただし、老後資金が枯渇してしまわないようバランスを考える必要はあります。

借りられる限度額が低くなる
60歳で住宅ローンを組むうえでのリスクとして、借入限度額が低くなる点も意識しておく必要があります。

融資する側の金融機関は、最長20年という短い借入期間で返済してもらう中で、貸し倒れリスクを最小限に抑えたいと考えます。一般的に年齢が高くなるほど病気やケガにより返済不能となる危険性が高いため、最初から借り入れられる金額を低く設定してリスクを最小化しているのです。

借入限度額が低い中で住宅を購入するためには、住宅ローン以外の資金調達方法を考えるか、予算そのものを低く抑えるなどの対策を検討したほうがいいでしょう。

団信の審査に通らない可能性が高まる
多くの金融機関では、住宅ローンを組むうえで申込者の団信への加入を必須としています。

60歳以上ともなれば若い人よりも病気やケガのリスクが高まるので、年齢や健康状態によって団信の審査に通らない可能性も高まります。当然審査に通らなければ、団信加入を必須とする金融機関の住宅ローンは利用できません。

【フラット35】など団信なしでも借り入れられる住宅ローンは存在します。その場合、団信つきの住宅ローンよりも借入金利は低くなりますが、万が一返済不能に陥った際に返済免除が受けられないなど、相応のリスクがあるため注意が必要です。

老後資金が足りなくなる可能性が高まる
60歳以上で住宅ローンを組むと、若い人よりも返済負担が重くなるリスクがあると紹介しました。返済負担を軽くするには、退職金や自宅の売却資金を頭金にあてるのが効果的ですが、これにもリスクがあります。

住宅購入にあまり多くの資金を使ってしまうと、その分老後の生活資金が不足する危険性が高まるのです。

公益財団法人生命保険文化センターが2022年度に実施した調査によると、夫婦2人が老後生活を送るうえで最低限必要と考える生活費は月額平均23.2万円となっています。年間約280万円、20年間で約5,600万円必要となる計算となるので、これに対応できるだけの資金計画を立てておくことが重要です。

出典:公益財団法人生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」

60歳で家を買う場合に検討したい方法とは?

60歳でも住宅ローンは組めるものの、さまざまなリスクがあることがわかりました。そこで、続いては60歳でマイホームを購入するにあたり、一般的な住宅ローンを組む以外で検討したい資金調達方法について見ていきましょう。

リバースモーゲージ型住宅ローン
リバースモーゲージ型住宅ローンとは、マイホームを担保に融資を受け、当人が亡くなった後にマイホームを売却するなどして借入金を一括で返済するタイプの住宅ローンです。

リバースモーゲージ型住宅ローンは、月々の支払いが利息分のみなので返済負担を小さくできる点や一般的な住宅ローンに比べて高齢でも融資を受けられる点、融資金を使える用途が広い点などがメリットとして挙げられます。

一方、そもそも十分な融資を受けられるだけの資産価値のある不動産を所有していることが条件となる点や、融資限度額が低い点などはデメリットといえます。また、一括返済によるリスクも忘れてはいけません。

リバースモーゲージ型住宅ローンには「リコース型」「ノンリコース型」の2種類があります。

契約者が亡くなった時点で借入金を一括返済するためマイホームを売却する際、資産価値が下がっていると売却代金で返済しきれないケースが考えられます。このような場合に相続人が残債を返済しなければならないのがリコース型、返済義務が生じないのがノンリコース型です。リスクの低いノンリコース型のほうが金利は高くなります。

リバースモーゲージ型住宅ローンは、資産価値のあるマイホームを所有しているものの老後資金に不安のある人や、マイホームを相続する相手がいない人などに向いているといえるでしょう。

リ・バース60
リバースモーゲージ型住宅ローンに似た商品として、【フラット35】の提供元である住宅金融支援機構による「リ・バース60」があります。

リバースモーゲージ型住宅ローンでは融資金の用途が制限されていない場合もあるのに対し、リ・バース60はあくまでも住宅に関する用途のみに使える住宅ローン商品です。

基本的な仕組みはリバースモーゲージ型住宅ローンと同様、マイホームを担保として融資を受け、利用者が亡くなった際に現金もしくはマイホームの売却代金により、元金を一括返済するというものです。リ・バース60についても、マイホーム売却後に残った債務の返済義務がある「リコース型」と、返済義務のない「ノンリコース型」が設定されています。

リ・バース60は満60歳以上の高齢者を主な対象とする商品である点や、月々の支払いが利息分のみであるため年金生活者でも返済しやすい点などがメリットとして挙げられます。

一方で、借入上限額が担保評価額の50〜65%程度と限られている点や、リコース型だとマイホーム売却後の残債を相続人が返済しなければならないリスクがある点などに注意が必要です。また、一般的なリバースモーゲージ型と異なり、融資金を住宅関連以外の生活費などに使えない点もデメリットといえるでしょう。

リースバック
マイホームに住み続けながら老後資金を得る方法として「リースバック」が注目を集めています。

リースバックとは、所有する不動産を不動産会社などに売却して代金を受け取り、売却先とあらためて賃貸借契約を締結するという手法のことです。契約締結後も売却前と変わらず、自宅に住み続けることができます。

リースバックは自宅に住み続けながら売却資金を得られるという以外に、所有権が売却先に移るため、固定資産税・都市計画税・マンションの修繕積立金など日々のランニングコストを軽くできる点が大きなメリットです。

マイホームを短期間に現金化できるのが魅力のリースバックですが、売却価格は相場よりも低くなる傾向にあります。また、売却先に支払う家賃は周辺相場よりも高くなる場合があり、通常の賃貸物件に住むよりも負担が増える可能性がある点もデメリットといえます。

リースバックには以上のような特徴があることから、現金で老後資金を蓄えておきたいという人や、複数の相続人がいて遺産分割を円滑に進めたいという人などにおすすめです。

現金一括購入
退職金や自宅の売却資金などまとまった現金を確保できる人であれば、これらの資金を住宅購入にあてるという方法もあります。

現金で一括購入すれば金利の負担が一切ないので、将来の経済負担を最小化できます。利息分のお金をほかの費用にあてられるため、老後の生活に余裕ができるかもしれません。また、万が一の事態が発生しても、住宅ローンの返済が滞ってしまうリスクもありません。

住宅ローンを借り入れる必要がないため審査期間を考慮する必要もなく、住宅購入をスムーズに進められるというのもポイントです。

しかし、先ほども紹介したとおり、老後の生活にはまとまった資金が必要です。現金の大半を住宅購入にあててしまうと、将来生活資金が枯渇してしまう危険性があります。

自宅を売却して資金を確保する場合には、売却までに時間がかかる点も考慮しておきたいところです。無事売却できたとしても希望を下回る金額でしか売れない可能性もあるので、余裕を持った資金計画が大切です。

まとめ

今回見てきたように、60歳で一般的な住宅ローンを組むのは不可能ではありません。しかし、商品の選択肢が少ないうえ、借入期間が短かったり借入可能金額が少なかったりと、若い人に比べてリスクは高くなりやすいと考えられます。

60歳で住宅購入を検討するなら、金融機関による一般的な住宅ローン商品以外にも、リバースモーゲージ型住宅ローンやリースバックなどを検討してみるといいでしょう。資金に余裕がある人は、融資を受けず現金で一括購入するのも選択肢の一つです。

自身の経済状況やライフプランを踏まえ、住宅購入資金の調達方法を比較検討するようにしましょう。

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