一般的に、購入した電化商品に不具合があったら、メーカーが1年間は保証してくれるという保証書が付いています。同じように、新築住宅に不具合があった場合にも、一定期間の保証が受けられます。新築住宅の場合は、法的な保証と事業者側の保証の2種類がありますが、原則として、新築住宅を取得した人のみが保証の対象です。
つまり、保証期間内だったとしても、転売されたその住宅を購入した人には、新築時の保証が引き継がれることはありません。この保証の継承について、新たな動きが出ています。今回は、この新たな動きに焦点を当てていきましょう。
新築住宅には複数の保証が付いている
新築住宅を買ったり建てたりした場合に、どんな保証が付いてくるか確認しておきましょう。まず、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」による保証があります。この法律によって、売主となる不動産会社や建築を請け負った工事事業者は、住宅の構造上で重要な部分や雨水の侵入を防止する部分について、引き渡し以降10年間は保証することが義務付けられています。
住宅の生命線となる箇所にこうした法的な保証があることに加えて、新築住宅では、不動産会社や建築工事事業者が、任意の「アフターサービス(アフター保証)」を提供している場合がほとんどです。一般的にアフターサービスの保証範囲は、法的な保証範囲よりも幅広い箇所をカバーしています。
ほかにも新築住宅の場合は、住宅内に設備機器を新規に取り付けるので、設備機器メーカーが自社製品を保証するものもあります。このように、売主や建築工事事業者、設備機器メーカーから多くの保証を受けられるのが、新築住宅の特徴です。
アフターサービスはどこまで保証してくれる?
アフターサービスの保証内容は、売買あるいは建築請負の契約先によって変わりますが、例えば、一般社団法人不動産協会では、中高層住宅基準や戸建住宅基準などの「アフターサービス基準」を設けています。このうち、新築分譲マンションで使われる中高層住宅アフターサービス基準の内容を確認してみましょう。
■中高層住宅アフターサービス基準の例(不動産協会)
○建物の共用部分
・建築上主要な部分などは、品確法と同じ保証期間10年
・壁やバルコニーなどのモルタル・塗装の剥がれ、コンクリートの亀裂、排水不良などは、保証期間2年
○建物の専有部分
・室内の壁や床、天井仕上げ、建具などの亀裂や変形、作業不良などは、保証期間2年
※浴室の防水床の漏水は、保証期間10年
○各戸の設備機器
・電気配線、ガス配管の破損や不良および給水管・排水管の漏水や破損は、保証期間5年
・その他の設備機器は、保証期間2年
○植栽
・管理不十分なものを除き、枯損は保証期間1年
なお、転変地変や第三者の故意過失によるもの、リフォームで形状変更が行われたものなどについては、アフターサービスの対象外とされています。
アフターサービス規準は、住宅に一定の不具合が発生した場合に、売主となる分譲会社などが無償で修補するための規準を定めたもので、売買契約の一部として、無償補修を約束するものです。転売されて新たに買主となった人の場合は、売買契約先は元の所有者、つまり個人となることがほとんどですから、保証は引き継がれないことになるわけです。
アフターサービスを売却時に引き継げる制度も登場
もしアフターサービスの保証が引き継がれるなら、買主にとっては安心感を得られるため、売主にとっては売りやすくなるでしょう。最近は、アフターサービスの保証を転売時の新たな購入者に引き継げる制度を導入する分譲会社が増えています。
いくつかの事例を見ていきましょう。まず、東京建物グループでは、2022年5月から東京建物が分譲するマンション「Brillia」の中古住宅取引時に、一定条件の下でアフターサポートを継承するサービスを始めました。
アフターサポートが承継されるのは、以下の2つの条件を満たした場合です。
(1)東京建物グループが管理し、かつ「アフターサービス」を提供する築10年以内のマンションであること
(2)東京建物不動産販売が専任媒介契約を締結し、Brillia認定中古マンション制度を利用すること
アフターサポートは、保証期間が残存する築後10年以内であれば所有者が代わるたびに承継できます。新たな買主は、①アフターサービス、②Brillia設備安心サポート10(有償/新築引き渡し時に既加入の場合)、③Brillia住戸定期診断の3つのサポートを承継できます。
次に、東急不動産と東急リバブルが2023年4月から開始した「BRANZ アフターリレーション」を見ていきましょう。これは、東急不動産の分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」を東急リバブルの専任媒介または専属専任媒介契約にて売却することが前提で、一定の条件下において、新築時のアフターサービスと住宅設備延長保証を新たな買主に継承するサービスです。
(1)首都圏、関西圏、札幌市内の新築分譲マンションであること、(2)2023年4月1日以降に東急リバブルと専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約を締結していること、(3)引き渡し時点で東急不動産のアフターサービス、住宅設備延長保証の期間内であることが条件で、保証の残存期間内であれば三次取得者にも継承が可能です。
ほかに野村不動産グループの「認定保証中古制度」も、新築時のアフターサービスが承継される制度です。いずれの場合も系列会社内で分譲や仲介(管理を含む場合あり)を行うこと、当初のアフターサービスの保証期間が残っていることなどが求められます。
アフターサービスは、当初の買主が10年住み続けたら当然適用されるものですから、安心して売買するためにも、保証が引き継がれる制度が広がっていくことを期待しています。
執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)
(最終更新日:2023.05.18)