2023年3月23日、国土交通省が2023年の地価公示を公表しました。一般の土地取引の指標とするため、都市計画区域等における標準的な地点の毎年1月1日時点の1平方メートル当たりの正常な価格を判定して公示するものです。全国の約2万6,000地点が対象で、取引の指標となるだけではなく、固定資産税評価や相続税評価のもとになる重要な指標となります。
東京圏の住宅地は対前年比2.1%の上昇
国土交通省の2023年公示地価の対前年変動率の平均は、図表1にある通りです。住宅地の全国平均の対前年変動率は1.4%アップで、上昇率は前年の0.5%から0.9ポイント高くなりました。東京圏だけに限ると2.1%アップで、前年の0.6%から1.5ポイント上昇率が高まりました。
図表1 圏域別・用途別対前年平均変動率
戸建て住宅の分譲は住宅地が中心ですが、マンションは駅前、繁華街などの商業地に建設されることが少なくありません。
その商業地の地価は、全国平均で1.8%アップし、前年の0.4%から1.4ポイント上昇。東京圏は0.7%から3.0%に、2.3ポイントアップしました。住宅地、商業地ともに、全国平均より東京圏の上昇率がやや高くなっています。
2年連続の上昇であると同時に上昇率も高まっていますが、半年ごとの地価変動率を見ると1年のうち後半のほうが前半に比べて上昇率が高くなっており、コロナ禍の低迷から脱しつつあることが見て取れます。
沿線別、市区別の価格、対前年変動率も分かる
一口に地価上昇といっても、上昇率は地域によって異なります。平均より大きく上がっているエリアもあれば、平均より上昇率が低く、中には前年より下がっているエリアもあります。どこに住宅を建てるか、購入するかを考える際は、地価上昇率という視点でも希望のエリアの動向を細かくチェックする必要があります。
公示地価では、東京圏であれば、「東京圏の沿線別駅周辺住宅地の公示価格例」として、主要路線別の公示地価が例示されています。たとえば、JR中央線であれば、四ツ谷は1平方メートル当たり428万円、中野は72万円、荻窪66.7万円、吉祥寺65.1万円、国分寺29.5万円、国立44.8万円、立川31.9万円、八王子19.3万円などとなっています。また、都市別の平均価格を見ることもできます。
市区別の対前年平均変動率も記載されていますから、現在、どのエリアの地価が上がっているのか、下がっているのかを確認できます。実際、どの程度上下しているのか、最も上がっているエリアはどこかも分かりますし、住宅地、商業地別に変動率上位順位表、下位順位表も全国と圏域別でまとめられているなど、さまざまな情報を確認することができます。
東京圏の住宅地上昇率トップは木更津市
全国で見ると、住宅地で公示価格上昇率が最も高かったのは北海道北広島市の30.0%で、上位には北広島市のほか江別市、恵庭市など北海道の自治体が並んでいます。商業地もほぼ同様の傾向です。
札幌市では北海道新幹線の札幌延伸に向けて再開発が盛んになり、超高層マンションの建設なども相次いでいます。その影響が近郊にも広がっていて、なかでも北広島市は、プロ野球・日本ハムの新球場の開業にともなう雇用の増加からマンションやアパートなどの建設が続いています。その結果、全国の住宅地価上昇率の1位から4位までを北広島市が占めたほどです。
圏域別でも整理されていて、東京圏の住宅地の公示価格上昇率TOP10は図表2にある通りです。最も上昇率が高かったのは、千葉県木更津市の金田東4丁目で、前年に比べて20.9%の上昇率となりました。上昇率が20%を超えたのはこの「木更津-38」のみ。2位はつくばみらい市紫峰ヶ丘2丁目の12.0%ですから、木更津の上昇率が突出しています。
図表2 住宅地の変動率TOP10(首都圏)
木更津ではさらに大型複合施設の開発が進行
上昇率1位の木更津市金田地区は東京湾アクアラインが近く、都心へのアクセスに恵まれています。横浜、川崎、羽田空港、新宿などに向かう高速バスが出ていて、バスに座って通勤もできます。JR内房線だと木更津駅から東京駅まで、特急で約60分、快速で約80分です。コロナ禍の影響もあって、テレワークが可能な人たちが増えていることも人気の要因になっているようです。
しかも、商業施設などの生活利便施設も充実しています。三井不動産の大型アウトレットモール「三井アウトレットパーク木更津」や、大型スーパー、無印良品、ユニクロ、各種飲食店が入る「イオンモール木更津」などがあり、地元の人たちだけではなく、首都圏広域からも集客力があります。さらに、最近ではアウトレット近くに敷地面積約5.2万平方メートルの大規模複合施設「木更津ゲートウェイ・ヴィレッジ」の開発が進められており、今年から順次商業施設などがオープンするなど、一段と利便性が高まっています。
以上のことから近年人気が高まっており、分譲住宅の開発が進んで価格も上昇しています。アットホームの調査(2023年4月13日時点)によると、木更津市の戸建て住宅の価格相場の平均は2022年3月の2,851.02万円から、2023年3月には2,938.73万円に上がっています。前年同月比で3.1%の上昇です。
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若い世代の移住が増加中のつくばみらい市、高額物件も売れるようになってきた浦安市
住宅地公示価格の対前年変動率の2位であるつくばみらい市は、つくば市と守谷市の間にあります。つくばエクスプレスの開業以来、みらい平駅周辺では、商業施設やマンション、戸建て住宅の開発が進んでいます。みらい平駅から秋葉原駅へは最速41分、つくば駅へは12分ほどです。そのつくばみらい市の紫峰ヶ丘は、みらい平駅の北側500メートルほどの場所に広がる閑静な住宅地です。
アットホームでつくばみらい市の住宅価格データ(2023年4月13日時点)を見ると、つくばみらい市の戸建て住宅の平均価格は2,449.04万円。隣接する守谷市の3,178.45万円、つくば市の2,983.46万円に比べると割安感があり、若い世代を中心に東京の都心などから移住する人が増えてきています。
東京圏の変動率3位は千葉県浦安市舞浜3丁目の11.1%です。3位から6位、8位から10位までを浦安市の調査地点が占めています。浦安市は東日本大震災で大規模な液状化が発生し、地価が大幅にダウンしました。最近はその影響も薄れ、都心への利便性の高さや住宅地としての環境の良さなどが改めて見直されています。
浦安市の新築マンションは、最近では駅前や駅近での開発が困難になっているため、JR京葉線の舞浜駅から徒歩15分以上のバス便物件が多くなっています。駅から距離がある分、オーシャンビューの低層マンションなどの開発が進み、静かな環境やSDGsを重視する若い世代に評価され、高額物件も安定的に売れるようになっています。
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商業地では神奈川県の政令指定都市の上昇率が高い
駅前や繁華街などが中心の商業地の公示地価を見ると、対前年公示価格変動率TOP10は図表3にある通りです。
図表3 商業地の変動率TOP10(首都圏)
トップは横浜市西区みなとみらい3丁目の13.5%、2位は横浜市神奈川区鶴屋町2丁目の11.5%、3位が川崎市川崎区宮本町の10.5%でした。
上位には横浜市、川崎市、相模原市という神奈川県の政令指定都市の駅前などが並び、5位以下では千葉県の船橋市、市川市、流山市といった周辺都市が入っています。なかでも市川市はTOP10のうち4地点を占めました。
千葉県市川市は江戸川を挟んで東京都に隣接していて、都心までのアクセスの良さは言うまでもありません。JR総武線、JR京葉線のほか、京成本線、東京メトロ東西線、都営地下鉄新宿線も利用できます。
公示価格変動率6位で上昇率10.1%の市川市南八幡4丁目の最寄り駅は都営地下鉄新宿線の本八幡駅で、神保町駅、市ヶ谷駅、新宿駅などとつながっています。本八幡駅周辺には商業施設が充実し、徒歩圏でのマンション開発も盛んです。
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こうした地価が上昇しているエリアでは、マンション、戸建て住宅などの資産価値の向上も期待できます。将来の資産価値を見据えてどのエリアに買うのが良いのか、公示地価の各種のデータを参考にしてみてはいかがでしょうか。
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