相鉄・東急直通線開業で注目を集める相鉄線、鶴ケ峰駅付近で、連続立体交差事業が始まっています。これにより10の踏切がなくなり、交通渋滞が緩和されると同時に街の南北の回遊性、利便性が高まります。駅周辺のまちづくりを考える機運も生まれており、鶴ヶ峰駅周辺は大きく変わりそうです。
新線開業で変化が起こり始めた
相鉄線はこの数年で利便性が向上しています。2019年には相鉄・JR直通線が開業し、鶴ケ峰駅(横浜市旭区)には相模鉄道本線の通勤特急、通勤急行が停車するようになりました。さらに2023年3月18日には相鉄・東急直通線が開業。直通で渋谷駅や新宿三丁目駅、日比谷駅、大手町駅など都心各駅にダイレクトにアクセスできるようになりました。もちろん、新幹線利用時に便利な新横浜駅へも1本です。
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10カ所の踏切除却で安全、便利な街に
加えて2022年11月には西谷駅~二俣川駅間の約2.8キロメートルを地下化により立体交差化する相模鉄道本線(鶴ケ峰駅付近)連続立体交差事業が着工。これにより、10カ所の踏切が除却されることになります。
このうち、9カ所の踏切はピーク時に1時間に40分以上開かない、いわゆる「開かずの踏切」でしたから、それがなくなることによってさまざまなメリットが生まれます。
相模鉄道と横浜市が作っている同事業のパンフレットによると、公共交通の利便性向上、自動車交通の円滑化、日常生活の安全性向上、緊急時や災害時の安全性の向上、まちづくりの進展、まちのにぎわい創出、利用者の評価向上などが見込まれるとか。
加えておもしろいのは、踏切除却には温室効果ガスの排出抑制にも効果があるということ。車がスムーズに流れるようになれば自動車排出ガスの発生が抑制されるからだそうで、連続立体交差事業は環境にも優しい方法というわけです。
駅北口未利用地を使った開発を検討
こうした変化を受けて、駅周辺ではまちづくりの検討も始まっています。鶴ケ峰駅周辺は、旭区役所、旭消防署、旭福祉保健センターなど行政機関が集まる区の中心。ところが踏切による慢性的な交通渋滞、まちの南北の分断、都市インフラの老朽化などさまざまな問題もあります。
特に駅北口周辺には現在、駐輪場として使われている広大な未利用地があります。駅前の一等地をこうした使い方のままにしておくのではなく、まちのこれからのために使おうという声が出てくるのは当然でしょう。
2000年度に鶴ケ峰駅北口地区まちづくり学習会が誕生して以降、2003年に鶴ケ峰駅北口周辺まちづくり連絡協議会、2014年に鶴ヶ峰駅北口地区再開発協議会、2019年に鶴ケ峰駅北口周辺地区まちづくり協議会が設立されるなど気運は徐々に高まってきています。
今すぐに何かというわけにはいかないにしても、交通の利便性が高まり、踏切解消のための工事がスタートした状況ですから、この機会により便利で安全、快適な街を求める声が強くなることは想定できるというものです。
旭区の中心地、鶴ケ峰
では、そもそも鶴ケ峰とはどんな街なのでしょう。横浜駅から駅の数では8駅目、相鉄本線快速に乗れば3駅目の、所要時間にして10分ほどの場所にあり、前述したように旭区の行政機関が集中する街です。
鎌倉時代からの歴史が残る街
地名の鶴ケ峰については鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』に「鶴峯」として登場しており、古い地名であることが分かります。ただし、由来についてはこの地に鶴が飛来したという説や「ツル」は水流を意味するため、鶴ケ峰は「川の流れるところにある山」だという説があるのだとか。鶴のつく地名では後者であるとされることも多いのですが、さて、どちらなのでしょうか。
歴史的な点で言えば、鎌倉時代に活躍した武将、畠山重忠の終焉の地でもあります。畠山重忠は大人気だった2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に登場する人物の一人で、北条時政の謀略によって討死。その場所が旭区役所の斜め前、二俣川と帷子川の合流地点近くとされており、現地にはそれを記す石碑が建てられています。
地元では隣駅二俣川直結の商業施設内に畠山重忠公情報発信コーナーを作るなど盛り上がっており、区で発行した「畠山重忠ゆかりの地マップ」にも新たな情報が加えられたとのこと。鶴ケ峰を訪ねる際には旭区や横浜市の施設などでマップを入手、参考にして歩いてみてもおもしろいかもしれません。
駅と帷子川の間に主要な施設が集中
実際に訪れてみると駅の南北ではかなり様相が違います。中心となっているのは北口側で商店街やバスターミナル、区役所などの行政機関も北口側に集中しているのです。順に見て行きましょう。
北口側は相鉄線と並行するように帷子川が流れており、主な施設は帷子川と相鉄線の間に立地しています。
帷子川は横浜市旭区若葉台に源があり、旭区、保土ケ谷区、西区の市街地を西から東へと流れて横浜港に注いでいます。鶴ケ峰駅の少し上流で二俣川と合流しており、下流でも今井川、石崎川などと合流する流路延長約17キロメートルの川で、昭和30年代以降は周囲の急激な市街地化に伴い、何度か水害を起こしています。
幸い、高潮対策が施されたり、平成に入ってからは分水路が作られたりと安全は確保されるようになっています。また、都市化された街の中では貴重なオープンスペースとして親水護岸が造られるなど憩いの空間としても機能するようにもなっています。
帷子川沿いには自然豊かな緑道
鶴ケ峰周辺にはかつての蛇行していた昔の川を利用した帷子川親水緑道が整備されています。せせらぎに沿って造られた緑道は延長600メートルほどあり、途中には広場や東屋などが設けられ、周囲とは全く異なる雰囲気の場所。カワセミやムクドリ、マガモ、ウグイスなどの野鳥も集まっているそうで、自然を楽しむにはうってつけの場所です。
北口側にはもうひとつ、やはり帷子川の川跡を利用した鎧の渡し緑道も整備されています。ここは名称からも推察できる通り、鎌倉時代の武士が鎧を頭上にかざして川を越えたことから「鎧の渡し」と呼ばれていたのだとか。河原に井戸があり、畠山重忠公の首を洗い清めたことから「首洗い井戸」と呼ばれたなど、地元には歴史を物語る話が残されていると聞きました。
この緑道の帷子川沿いは鶴ケ峰公園となっており、対岸には鶴ケ峰稲荷神社も。新しい街と思う人も多いでしょうが、実は歴史に満ちた街なのです。
スーパーを中心ににぎやかな商店街が
帷子川手前にあるものとしてはまず、商店街が挙げられます。北口を出たところから旭区役所へ向かう水道道や北口前にあるスーパー周辺にさまざまな業種の店舗が並んでおり、毎日の生活に必要な品であれば地元でそろいます。
駅から離れたバスターミナルには変化の期待も
商店街を抜けたところにはバスターミナルがあります。北口側は駅前がコンパクトでスペースがないためでしょうか、駅から250メートルほど離れた帷子川沿いに設けられているのです。
場所は違いますが、タクシー乗り場も駅からは100メートルほど離れたところにあり、今後のまちづくりではバスターミナル、タクシー乗り場の利便性向上も図られるのではないでしょうか。
鶴ケ峰バスターミナルからは横浜駅西口、新横浜駅、中山駅などへのバスが多く出ています。この周辺には左近山団地、若葉台団地など複数の団地が点在していますが、そうした団地へはバス利用が便利です。
また、このバスターミナルからはよこはま動物園ズーラシアへのバスも出ています。国内でも最大級の動物園が身近にあるのはファミリーにとってはうれしい点かもしれません。
もうひとつ、行政機関も北口側に集中しています。前述した施設のほか、郵便局も区役所へ向かう途上にあり、いつも利用する施設の多くは駅から遠くても500メートルの範囲に集まっているというわけです。
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駅周辺には集合住宅、高台には戸建て
帷子川を越えた先には国道16号が走っています。横浜中心部に出る時や東名高速、第一京浜を利用するときに便利です。
国道16号までは平坦な土地が続いていますが、それを超えるといきなり階段があるような高台が現れます。眺めの良い場所ですが、かなりの急坂になっているところもあります。ちなみに坂、階段の上は主に戸建て、低層で小規模なマンションが中心のエリアとなっており、ある程度の規模があるマンションはその下の平坦な土地に多く集まっています。
南口には再開発ビル「ココロット鶴ヶ峰」
反対の南口側は、駅とつながる再開発ビル「ココロット鶴ヶ峰」があります。2007年に誕生した地上29階建てのビルで、1~2階にはスーパーをはじめとする物販店、飲食店などが入っており、3階には保育園、4階には旭区市民活動支援センター「みなくる」、音楽教室、5階には予防医療のクリニックなどが入っています。6階以上は住宅です。
南口側はこの建物以遠は住宅が中心になっており、静かな環境です。
便利で自然豊か、農にも親しめる街
以上、鶴ケ峰駅周辺の変化について、また、現在の鶴ケ峰駅周辺の様子について紹介しました。訪れてみて感じたのは、歴史の深さと自然の豊かさ。ここまで紹介してきたことに加え、旭区は横浜市内でも農地の多いエリアです。
そのため、横浜市では旭区の「農」の魅力PR事業を展開しており、朝市が行われていたり、さつまいも掘り体験ができたり、直売所があったりと農が身近。
都心に近くなった相鉄線、鶴ケ峰駅ですが、歴史、自然も楽しめる場所でもあり、どちらも大事にしたい人には自分が住むことを考えながら、一度、現地を訪問してみる価値があるのではないでしょうか。
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