初任給の推移|30年間平均年収が上がっていない中、初任給は上がったのか?

優秀な人材を確保したいという考えから、最近初任給を大幅にアップする企業が増えています。たとえば、大手銀行における初任給は従来の20万円程度から25万円超の水準まで上がる見込みです。

就職情報サイト大手のマイナビが実施した「マイナビ2024年卒企業新卒採用予定調査」によると、応募者へのPRのために初任給の引き上げを実施・検討している企業は約6割にも上り、業界を問わず初任給アップの流れが起きていることがわかります。

この記事では、東京都(東京労働局)のデータを基に、直近30年(1993〜2022年)の初任給の推移について解説していきます。

30年間会社員の平均年収が上がっていない日本

初任給の大幅アップがニュースを賑わせている昨今ですが、日本における会社員の平均年収はどのように推移してきたのでしょうか。

厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、女性の月収は2001年時点で22万2,400円でしたが、2022年には25万8,900円へと約16.4%アップしています。

一方、男性の2001年における月収は34万700円だったのに対し、2022年は34万2,000円となっており、20年間にわたりほとんど横ばいであることがわかります。なお、本調査は2020年調査より数値の算出方法が変更されている点は注意が必要です。

女性の賃金上昇によって男女間の賃金格差は縮小傾向にあるものの、男性を含めた会社員全体の平均年収は約20年間ほとんど上がっていないことが、データからが読み取れます。

【学歴別】新卒初任給の推移

上のグラフは、大卒・短大卒・専修学校卒・高卒の学歴別にみた新卒初任給の推移を表したものです。

全体的に大卒は初任給の水準が最も高く、続いて短大卒・専修学校卒がほぼ同じ水準で、高卒が最も低い水準となっています。

1993年からの30年間、いずれの学歴においても初任給は上昇傾向にありますが、1993〜1996年ごろに大きく伸びた後は上昇幅が縮小していることがわかります。特に大卒においては、2000年代半ばあたりから横ばいに近い状態です。

大卒に比べて短大卒・専修学校卒・高卒の上昇幅が大きいため、学歴別の初任給格差は小さくなっています。

【産業別・規模別・職業別】大卒初任給

続いては、業界・会社の規模・職業ごとに大卒初任給の傾向を解説していきます。

初任給が高い・低い産業とは?
業界別に大卒初任給を比較した場合、最も高いのは「建設業」「不動産業、物品賃貸業」の22万円です。次いで「宿泊業、飲食サービス業」が21万7,000円、「教育、学習支援業」が21万6,100円、「金融業、保険業」が21万5,000円と続きます。

一方、大卒初任給が低いのは「生活関連サービス業、娯楽業」の20万円、続いて「運輸業、郵便業」の20万500円となっています。「生活関連、サービス業、娯楽業」は前年比で4.8%の大きな下落となり、全業界で最も低い水準となりました。

こうして比較すると、初任給が最も高い業界と最も低い業界で2万円程度の差しかなく、大卒初任給の業界ごとの格差はそれほど大きくないことがわかります。

初任給が高い・低い職業とは?
職業別に大卒初任給を比較した場合、最も高いのは「専門・技術」の21万4,000円です。それに「販売」の21万円が続き、大卒初任給が最も低い職業は「事務」の20万8,500円となっています。

大卒初任給全体の水準が21万円であることを考えると、いずれの職業もプラスマイナス4,000円の範囲に収まっており、職業別の大卒初任給の差は業界別にみた場合以上に小さいといえるでしょう。

会社規模別の初任給の傾向は?
最後に、会社規模別にみた場合の大卒初任給の傾向を確認していきましょう。

従業員数が「29人以下」「30〜99人以下」「100〜499人」の会社の中央値は、全体平均と同じ平均21万円となっている一方、「500〜999人」の中規模会社では21万6,000円となっています。これは「1,000人以上」の大企業の21万4,900円を上回る額です。

意外に感じるかもしれませんが、大企業のほうが求人における競争力が高いため、むしろ初任給の設定は低めとなる傾向があります。ただし、2022年の大卒初任給は「1,000人以上」の大企業において前年比10.9%と大きな伸びを示しており、大企業も含めて初任給アップの流れが来ていると考えてよいでしょう。

【学歴別】最も多い初任給は?

続いては、大卒・短大卒・専修学校卒・高卒の学歴別に見た初任給の分布がどのようになっているのか解説していきます。いずれの学歴においても、同学歴の中での初任給の差はそれほど大きくなく、2万円の範囲内に約50〜60%が集中しています。

具体的には、大卒であれば約55%が20〜22万円台に集中しており、短大卒においても約50%が18〜20万円台に集中しています。大卒と短大卒に関しては初任給が23万円以上という求人もそれぞれ23.7%(前年16.9%)・18.0%(同10.4%)となっており、前年に比べて大卒や短大卒の初任給をアップした企業が多いと考えられるでしょう。

また、専修学校卒は18〜20万円台に求人の約55%、高卒は16〜18万円台に約60%が集中しています。

まとめ

直近30年間で初任給は上昇傾向にあるものの、全体としての上昇幅はそれほど大きくありません。また、初任給の時点では産業や職業、会社規模によって大きな差は見られません。長年勤務することで、その後の昇給などによって差が生まれると考えられます。

2022年より、大手企業が大卒初任給を大幅に引き上げたというニュースが相次いでいます。こうした状況が続くようであれば、大企業を中心に2023年以降の平均初任給は大幅に上昇する可能性もあるでしょう。

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