国民年金保険料の支払いには、学生納付特例制度が設けられていますが、どのような内容なのでしょうか。
今回は学生納付特例制度に注目し、その申請や追納の方法、制度を利用するメリットやデメリット、さらに注意点と併せて、追納のメリットおよび注意点についても解説します。
国民年金保険料の学生納付特例制度とは?
学生納付特例制度とは、20歳以上の国民に義務付けられている国民年金保険料の支払いについて、所得が一定金額以下の学生であれば、国民年金保険料の支払いを猶予してもらえる制度です。
基準となるのは、申請者つまり学生本人のみの所得が「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」以下であることで、家族の所得は問われません。
また、学生とは大学、大学院、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校および各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する人で、夜間や定時制課程、通信課程も含まれます。そのため、ほとんどの学生が対象になります。
ちなみに、猶予を受けられるのは国民年金保険料のみです。厚生年金加入者は対象外なので、注意してください。
適用を受けるには申請が必要ですが、遡っての申請も可能です。
学生納付特例制度の申請方法と必要書類とは?
学生納付特例制度を受けるためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。申請の方法に加え、申請の際に必要となる書類についても併せて解説します。
申請先は、学生本人が住民登録を行っている市区町村の国民年金担当窓口もしくは近くの年金事務所です。なかには在学中の学校で手続きができるケースもありますが、当該学校が代行事務の認可を受けている場合に限られます。
【申請書類】
・国民年金保険料学生納付特例申請書 (添付書類)
・在学期間がわかる学生証のコピー(在学証明書でも可能)
・基礎年金番号を記入して申請を行う場合:基礎年金番号通知書のコピーまたは年金手帳のコピー
・マイナンバーを記入して申請を行う場合:マイナンバーカードを提示
また、失業が理由で申請を行う場合は、雇用保険受給者証または雇用保険被保険者離職票などのコピーが必要です。
郵送での申請も可能なので、申請書および添付書類を市区町村の国民年金担当窓口、または近くの年金事務所に送付しましょう。そのほか電子申請による申請方法も用意されています。
学生納付特例制度を利用するメリットとは?
学生納付特例制度を利用するメリットは、学生本人の限られた収入から国民年金保険料を捻出する必要がなくなることが挙げられます。追納をすることで将来受け取れる年金額が減る心配もありません。
ちなみに、学生納付特例制度の承認を受けて納付を猶予されている期間については、老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。なので、受給資格期間が足りないという理由で将来年金が受給できなくなる不安も軽減できるでしょう。
学生納付特例制度を利用するデメリット・注意点とは?
学生納付特例制度を利用する際には、この制度があくまでも免除ではなく猶予であることに注意しておかなければなりません。そのため、きちんと追納しなければ、将来受け取れる年金額が減ってしまいます。学生納付特例制度で猶予を受けた期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算定されるものの、老齢基礎年金の額の計算対象となる期間には含まれないからです。
さらに、学生納付特例制度を受けるための申請が遅れた場合、申請日よりも前に発生した不慮の事故や病気で障害を負ったとしても、障害基礎年金を受け取れない可能性がある点にも注意が必要です。
また、学生でなくなったら新たに申請が必要なことや、節税目的で親が学生(子ども)の国民年金保険料を支払っている場合には、利用するメリットがない点も覚えておきましょう。
国民年金保険料を追納する方法と必要書類とは?
学生納付特例制度によって支払いの猶予を受けた国民年金保険料については、追納して将来の年金額を満額に近づけることができます。追納ができるのは10年以内の分についてなので、早めに行うことが大切です。
追納する際には、年金事務所に「追納申込書」を提出して申請します。すると、納付書が渡されるので、それを用いて国民年金保険料を支払うことになります。ただし、口座振替やクレジットカードでの納付はできないので注意してください。
マイナンバーを用いて申請するのであれば、申請時にマイナンバーカードを準備しておきましょう。マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーがわかる通知カードと本人確認書類(運転免許証など)が必要です。
また、追納ができるのは「追納が承認された月の前10年以内の免除期間」の保険料のみです。追納による保険料は、古いものから充当されます。そして、「納付猶予を受けた期間の次の年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、加算額を合わせて追納」する必要があることも理解しておきましょう。
国民年金保険料を追納するメリットとは?
免除された期間の国民年金保険料を追納することで、将来受け取れる年金額が増えるのが最大のメリットです。また追納で支払った国民年金保険料は、その年の社会保険料控除の対象になるので、節税効果を得られる可能性もあります。
逆に、10年を過ぎてしまうと追納はできません。学生納付特例制度を利用する場合は、計画的に追納するようにしましょう。
国民年金保険料を追納する場合の注意点とは?
前述のとおり、追納は承認された月の前10年以内の免除期間のみ可能です。さらに、納付猶予を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に保険料を追納する際には、経過期間に応じた加算料を上乗せした額を支払わなければなりません。
国民年金保険料の加算額は年を追うごとに高くなっていくので、古いものから早めに追納し、加算額の上乗せを避けるためにも、10年という期間にとらわれず、3年以内に追納を始めることを考えましょう。
まとめ
学生納付特例制度は、学生本人の所得が一定以下の場合に利用できる国民年金保険料の支払い猶予制度です。ただし、支払いを猶予してもらえるだけなので、猶予期間は老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、支払わないままだと将来受け取れる年金額に影響します。
そのため、将来受け取れる年金額を満額に近づけるためには、猶予分を追納しなければなりません。追納も、一定の期間を過ぎると加算額が上乗せされます。そのため、卒業して就職し、収入を得られるようになったら、なるべく早めに追納するようにしましょう。
学生納付特例制度のメリットやデメリット、注意点をよく理解したうえで、上手に制度を活用してください。