平均寿命の延びに伴い、「人生100年時代」といわれている今日では、年金の受給開始年齢も上がる傾向にあります。そのため、定年後もまだ働きたいと考える人も少なくありません。
そこでこの記事では、定年後も働き続けたい人に向けて、定年後の再雇用における現状について解説します。再雇用の際に利用できる可能性がある雇用保険の給付金についても紹介するので、参考にしてください。
定年後再雇用とは
定年後再雇用とは、定年退職した社員を同じ職場で再雇用する制度のことをいいます。
定年後再雇用は法律によって内容が定められています。どのような法律なのか、次章で詳しく解説します。
定年後再雇用に関する法律
高年齢者雇用安定法により、企業には65歳までの雇用機会を確保することが義務付けられています。高年齢者雇用安定法第8条では、「事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない。」と規定されています。
さらに同法9条では、定年年齢を65歳未満に定めている「事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため」、「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置を講じなければならないとしています。
また、10条の2では、定年を65歳から70歳に定めている事業主は、「65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならない」と、努力義務を規定しています。
定年後再雇用を求める人は多い
実際に、定年後も再雇用制度を利用して働きたいと思っている人はどれくらいいるのでしょうか。
朝日新聞Reライフ.netの調査によると6割超の人が定年後も働く想定でいました。25.1%が定年後再雇用で働きたい、次いで22.8%が定年前とは違う会社で働きたいと回答しています。
何歳まで働くのが理想かという質問に対して、一番多かった回答が「働き続けられればいつまでも働きたい」でした。2番目に多かったのは「70歳まで」となっているなど、定年後も働く意欲を持つ高齢者が多くいることがわかります。
定年後も働きたい理由
同調査によると、定年後も働きたい理由として最も多かったのが、「社会とのつながりを持ち続けたい」というもので、60.4%でした。
ただ、「自分や家族の今の生活資金のため」と回答した人も57.6%と多く、老後生活における精神と金銭両面での不安も、定年後も働き続ける動機となっているものと考えられます。
定年後の年収は下がることが一般的
実際に定年後に再雇用で働いた場合、収入はどのくらい変わるのでしょうか。再雇用制度を利用しようと思っている人にとっても一番気になるところでしょう。
同調査によると、定年後の収入については、「定年前の5割程度」と答えた割合が最も多く、次いで多かったのが「3割程度」です。年収が定年前の半分くらいまで落ち込むことが多いと考えたほうがよいでしょう。
また、再雇用で働くことに対し、「体力の衰え」などの不安を抱えている人も62.9%に上ります。定年後にどの程度働くのか、体力やモチベーションなどを総合的に判断して決めることになるようです。
定年後再雇用で給与が下がったときに利用できる給付金
定年後再雇用で働き続けても、収入が大きく減る可能性が高く、老後の不安を払拭できないという人もいるでしょう。この章では、定年後収入が減ったときに利用できる「高齢者雇用継続基本給付金」の概要について解説します。
高年齢雇用継続基本給付金
高齢者雇用継続基本給付金とは、原則として60歳時点の賃金と比較して、60歳以後の賃金(みなし賃金を含む)がその75%未満の人が対象です。
給付金を受けるには、以下の要件を満たしている必要があります。
1.60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者である
2.被保険者だった期間が5年以上ある
支給額については、以下のとおりです
高年齢再就職給付金
高年齢再就職給付金とは、基本手当の支給を受けていた60歳以上の人が再就職した場合に受け取れる可能性のある給付金です。
支給を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 雇用保険の被保険者だった期間が5年以上ある
2. 再就職した日の前日の時点で基本手当の残りの支給日数が100日以上ある
3. 再就職により、雇用保険の被保険者になった
支給金額は高齢者雇用継続基本給付金と同じです。
ただし、高齢者雇用継続基本給付金と高齢者再就職給付金の併給はできないため、どちらかを選んで申請しなければなりません。
日本の定年後再雇用の現状
日本の定年後再雇用の現状はどのようになっているのでしょうか。この章では、現在の日本の定年後再雇用の現状について解説します。
定年後再雇用を実施している企業の割合
継続雇用制度を導入している企業の割合は、全体の70.6%です。301人以上の企業だと83.3%、21人~300人の企業だと69.6%で、規模の大きい企業ほど継続雇用制度を導入している傾向にあるようです。
また、65歳以上の希望者全員を継続雇用制度の対象としている企業は83.0%となっており、現時点では約8割の会社で「希望すれば再雇用が可能」な状態になっています。
66歳以上まで働ける制度のある企業の割合
66歳以上まで働ける制度のある企業の割合は、全体で40.7%です。21人~300人の中小企業では41.0%、301人以上の大企業では37.1%と、中小企業のほうが多くなっています。
定年制廃止企業の状況
定年制を廃止している企業は少なく、中小企業では4.2%、大企業では0.6%にとどまっています。定年の廃止を行う企業は、大企業よりも中小企業のほうが多い状況です。
法律では、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を、65歳まで講じるよう義務付けられていることから、「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」を選択する企業のほうが多いのでしょう。
まとめ
定年後も働きたい人は6割以上に上り、企業にも再雇用制度や定年の廃止・引き上げのいずれかの導入が法律によって義務付けられています。
また、再雇用によって収入が減ったり、いったん退職して再雇用先を探したりする際に利用できる給付金制度も用意されています。要件を満たす人はハローワークに申請し、給付金を受け取る手続きを忘れないようにしましょう。