家族が要介護の状態になると、介護する家族にとっては、体力的・精神的な負担と合わせて金銭的な負担も抱えることになります。そのため、介護に対してさまざまな補助金や支援策が自治体によって用意されています。
実際にどのような補助金制度や支援策があるのかを知っておくと、家族が要介護の状態になったときにも慌てず対応できるでしょう。今回は介護に対する補助金制度や支援策について解説します。
介護に必要な補助金制度
家族に介護が必要になった際に利用できる補助金制度は以下のとおりです。
家族介護慰労金
家族介護慰労金とは、要介護認定を受けた家族を在宅で介護している同居家族に対して自治体が設けている制度です。金額は自治体によって異なりますが、年額10万~12万円程度です。また、年額で支給されるところもあれば、月額で支給されるところもあります。
家族介護慰労金を受け取るには、たとえば以下のような要件を満たす必要があります。
・直近の1年間に介護保険のサービスを利用していない
・要介護4もしくは5と認定された人の介護をする同居家族である
・対象期間中に90日以上の入院をしていない
・要介護者がいる世帯が住民税非課税世帯である
利用要件や支給額については、自治体ごとに異なるので、詳細は自治体のホームページなどで確認するようにしてください。
介護休業給付金
企業では、家族の介護を行うための介護休暇の取得が認められています。介護休業給付金は、対象となる家族について、介護休業を取得した際に93日を限度として3回まで支給されます。
介護休業給付金を受け取るには、介護休業を取得した日の前2年間に、雇用保険の被保険者だった期間が12ヶ月以上あることが必要です。そして、介護休業給付金の申請手続きは、事業主が行います。
支給金額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で計算された額です。ただし、上限額が設定されており、さらに介護休業を取得している間に給与が支払われている場合は、一部減額されます。
居宅介護住宅改修費
居宅介護住宅改修費とは、介護が必要な人に対して、家をバリアフリー化するなど、介護に適した住宅にするためのリフォーム費用の一部を負担してもらえる制度です。
居住介護住宅改修費を受け取れる要件は、
・介護の対象者が要介護の認定を受けていること
・「住宅改修費支給申請書」の申請を行っていること
です。また、支給適用となる工事にも制限があり、以下の工事が対象です。
・手すりの取付け
・段差の解消
・滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
・引き戸等への扉の取替え
・洋式便器等への便器の取替え
・そのほかの住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
補助額は実際の住宅改修費の9割相当額となっていますが、支給限度基準額(20万円)の9割である18万円が上限になります。
補助を受けるためには、事前に申請書を提出する必要がありますが、やむを得ない事情がある場合は、事後提出でもかまいません。
補助を受ける流れは以下のとおりです。
1.住宅改修についてケアマネジャー等に相談する
2.申請書類または書類の一部提出、確認
3.工事の施工
4.住宅改修費の支給申請
支給が決定すれば、補助金が支払われます。
介護費・医療費の費用負担を抑える制度
介護で必要となる介護費や医療費の費用負担を抑える制度もあります。制度の内容については、以下のとおりです。
高額介護サービス費制度
高額介護サービス費制度とは、1ヶ月間の介護保険サービスの自己負担額が上限額を超えた場合、申請することで超えた部分について払い戻しを受けられる制度です。上限額は、その世帯にいる65歳以上の人の課税所得金額などに応じて以下のとおり決まっています。
高額医療・高額介護合算療養費制度
高度医療・高度介護合算療養費制度とは、介護保険と公的医療保険の両方を利用する世帯において、経済的負担を軽減するために用意されている制度です。年間の世帯の介護保険と公的医療保険の自己負担額を合算して、その額が自己負担上限額を超えた場合は、申請すれば超過分が払い戻されます。
自己負担上限額は、所得区分と年齢によって以下のとおり決まっています。
介護保険サービスの医療費控除
通常の医療費だけでなく、一部の介護保険サービスについても医療費控除の対象です。そのため、確定申告を行えば所得税の還付を受けられます。介護保険サービスには「居宅サービス」と「施設サービス」の2種類があり、このうちの一部が医療費控除の対象になります。
居宅サービスのうち、医療費控除の対象となるのは以下のサービスです。
・訪問看護
・介護予防訪問看護
・訪問リハビリテーション
・介護予防訪問リハビリテーション
・医師などによる居宅療養管理指導
・介護予防居宅療養管理指導
・医療機関の通所リハビリテーション
・介護予防通所リハビリテーション
・ショートステイ
・介護予防短期入所療養介護
など
施設サービスでは、利用した施設の利用料の一部が対象になります。
まとめ
平均寿命が延び、超高齢化社会を向かえる日本において、介護の問題は避けて通れないものになってきています。介護したりされたりする状態になった際に利用できる支援策や補助制度にはどのようなものがあるのか、また利用するための要件などを確認し、まとめておくといざというときに役立ちます。
自治体が独自で行っている支援策もあるので、住んでいる自治体のホームページをチェックしてみましょう。