コロナ禍の影響もあり、住宅価格はここ数年、世界的に上昇傾向となっていました。しかし、2022年夏ごろから欧米を中心に下落傾向となっています。では、住宅価格が下落している要因は何なのでしょうか。また、住宅価格の下落によりどのような影響があるのでしょうか。今回は、住宅価格の世界的な傾向について解説します。
2021年-2022年の住宅価格の推移
コロナ禍では住宅価格が世界的に上昇傾向となっていました。OECDのデータによると、過去3年間の住宅価格はOECD諸国全体で上昇し続けています。ただし、G7のなかで日本とイギリス以外の国は、2022年3期でやや下落傾向をみせています。
2020年1期~2022年3期までの実質住宅価格指数は次のとおりです。
※実質住宅価格指数は2015年を基準年とし、名目住宅価格を個人消費価格指数で除して算出。指標は国内および地方の住宅価格指数に基づく。
2023年は住宅価格が欧米で下落傾向
2023年の住宅価格は、欧米で下落傾向にあります。ここでは、世界の住宅価格をアメリカ、イギリス、そのほかの国に分けて紹介します。
アメリカ
アメリカの住宅価格は2022年7月ごろからやや下落傾向です。住宅価格が下がった大きな要因として、住宅ローン金利の上昇が挙げられます。2021年は30年固定金利の住宅ローンが3%を切っていましたが、2022年は7%をやや下回る程度となっています。
2022年8月~2023年1月のアメリカの住宅価格は次のとおりです。
イギリス
イギリスの住宅価格も、2022年8月をピークに下落傾向にあります。住宅ローン金利が上昇し、2022年には10年ぶりに5年固定金利が6%を超えたため、金利の上昇が影響しているようです。ただし、ロンドン郊外などの一部地域では価格上昇もみられる状況です。
2022年8月~2023年1月のイギリスの住宅価格は次のとおりです。
そのほかの国
住宅価格の下落はアメリカやイギリスだけでなく、そのほかの国々でもみられる傾向です。たとえば、カナダやスウェーデン、オーストラリア、ニュージーランド、韓国などでも、住宅ローン金利の上昇により住宅需要が落ち込んでいます。
金利の上昇は、これから住宅を購入しようとする人にダイレクトに影響します。返済による家計の負担が重くなるからです。借入金額自体も大きくなるため、返済リスクの高い人は借りるのがより難しくなるでしょう。
住宅価格低下による影響は?
住宅価格が低下すると、現有している住宅の資産価値が目減りします。売却を検討していた場合、予想よりも価格が安くなるおそれがあるため注意が必要です。
一方、これから住宅を購入しようとしている人にとっては、購入費を抑えられるため買いやすくなる可能性もあります。ただし、住宅ローンを組んで購入する場合、住宅価格が下がっても金利の上昇に注意しなければなりません。住宅購入のタイミングは住宅そのものの価格だけでなく、金利の動きにも注意して決める必要があります。
日本の住宅価格は今後どうなる?
アメリカ、イギリス、そのほかの主要な国々の住宅価格について説明しましたが、日本での住宅価格はどうなるのでしょうか。ここでは、日本の住宅価格の今後を解説します。
住宅価格は上昇傾向
国土交通省が公表している「不動産価格指数」によると、日本の住宅価格(住宅総合の数値)は2022年10月まで上昇していることがわかります。特に、区分所有のマンションは2013年ごろから価格が急騰しています。戸建てや住宅地は2020年ごろまで横ばいでしたが、2021年以降は上昇傾向です。
住宅価格が上がっている要因としては、住宅ローンの低金利が挙げられます。さらに、円安の影響で海外の投資家が日本の不動産を購入する動きも影響していると考えられています。特に首都圏など人気のエリアでは、今後も住宅価格の高止まりが続く可能性があるでしょう。
今後の予想
日本に限らず、住宅価格は住宅ローンの金利に影響を受けていることがわかります。日本では、2023年1月時点での住宅ローンの変動金利はまだ上昇していませんが、全期間固定金利である【フラット35】は上がり始めています。さらに、日銀の金融政策変更により長期金利の上限が引き上げられており、金利次第では住宅価格が落ち着くかもしれません。
一方で、新型コロナウイルスやウクライナ情勢による建築資材の高騰、円安などの影響により、住宅建築費は上昇傾向です。そのため、住宅価格はしばらくの間、上昇または高止まりとなる可能性があります。
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まとめ
世界の住宅価格はコロナ禍により上昇傾向でしたが、欧米を中心に2022年ごろから下落傾向です。その要因は、住宅ローン金利の上昇による影響とみられています。
日本でも今後住宅ローンの金利が上昇すれば、住宅価格が下落する可能性があります。しかし一方で、建築費用が高騰している影響から、しばらくは上昇傾向が続くという見方が強いといえるでしょう。
(最終更新日:2024.04.19)