都心直結・始発駅の南栗橋で進む「次世代まちづくり」産官学連携の大規模開発を現地レポート!

東京メトロ日比谷線、同半蔵門線が乗り入れる東武鉄道日光線の南栗橋駅近くで産官学が連携した次世代まちづくりが進行しています。同駅は都心直結、始発駅でもあり、周辺には広大な公園も。整然とした美しい街並みが計画的に造られつつあります。

駅正面
開発が行われているのは駅正面の並木道をまっすぐ行った地点。駅構内にもロータリー内にもプロジェクトを告知する掲示がありました(筆者撮影)

南栗橋駅周辺で産官学連携のまちづくり

南栗橋
都心部への便利なアクセスはもちろん、下り方向に向かうと日光や鬼怒川などの行楽地があり、週末のレジャーも楽しい立地でもあります(筆者撮影)

東京メトロ日比谷線、同半蔵門線、東急田園都市線を利用したことがある人なら、南栗橋という駅名は一度は目にしたことがあるでしょう。東京メトロ、東急電鉄が乗り入れている駅の中では最北端にあたる南栗橋駅は、これらの路線の始発駅、終着駅のひとつだからです。その南栗橋駅近くで産官学が連携したまちづくりが進んでいます。

縄文時代から人が住んできた地域

南栗橋があるのは関東平野のほぼ中央、埼玉県の北東部にある久喜市。都内までは50キロメートル圏内にあります。久喜市には旧石器時代、縄文時代からの遺跡が残されていることから、古くから居住に適した土地だったと思われます。

江戸時代には主要な街道のひとつだった日光街道が通り、宿場町であった栗橋宿はおおいににぎわったそうです。明治時代以降はJR東北本線(宇都宮線)や東武伊勢崎線、東武日光線などが敷設され、駅を中心にした土地区画整理事業が進んで宅地開発が進みます。久喜市・菖蒲町・栗橋町・鷲宮町が合併し、現在の久喜市が誕生したのは2010年3月のことです。

分かりやすいホームページは一見の価値あり

首都圏の自治体として認知度が高いとは言いにくい久喜市ですが、市の魅力や歴史についてはホームページが充実しているので関心のある人には一読をおすすめします。「久喜の魅力」と題したページには自然の豊かさ、祭りの豊富さ、子育て環境の充実ぶりなどが分かりやすくまとめられていますし、「広報連載久喜歴史だより」を読めば長い歴史のある地域であることが一目瞭然です。

ここではそのうち、鉄道以外の交通利便性の高さを紹介しましょう。市内には東北道、圏央道、国道4号、国道122号といった広域幹線道路が整備されており、車での移動に便利です。さらに2015年に埼玉県内の圏央道が全線開通したことで久喜市から都心を経由せずに関越道、中央道、東名高速などにアクセスできるようになっています。2017年には茨城県の境古河インターチェンジとつくば中央インターチェンジ間が開通して、常磐道や成田空港へのアクセスも向上したとか。

鉄道利用での都心へのアクセスだけでなく、車を利用すれば日本の各地、世界へのアクセスも容易というわけです。

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今後の開発に期待が高まる南栗橋駅周辺

東京メトロ半蔵門線
東京メトロ半蔵門線を介して東急田園都市線とも繋がっているため、中央林間駅までも1本で行けます(筆者撮影)

さて、では、南栗橋駅周辺はどんな場所でしょう。筆者は東京メトロ半蔵門線で渋谷駅から向かいましたが、南栗橋駅行きは急行、準急の2種類があります。所要時間はいずれも約1時間40分。永田町や大手町などの都心部からなら、それより20分弱ほど短縮される計算です。

所要時間自体はそれなりにかかりますが、渋谷駅も南栗橋駅も始発があるので、座っていける確率が高いのはうれしいところです。また、必ずしも毎日通勤する必要がない人や自宅で作業ができる人であれば、都心までの距離は気にならないかもしれません。

南栗橋駅の改札
南栗橋駅の改札。大きな看板にはプロジェクトが始動したことが記されていました(筆者撮影)

南栗橋駅の副駅名は「BLP南栗橋スマートヴィラ」となっており、これが現在、進行しているまちづくりプロジェクトの名称。BLPは「BRIDGE LIFE Platform」の略です。電車を降りると改札口にはプロジェクト始動の掲示があり、地域を挙げての計画であることが分かります。

駅近くではマンション建設も進む

プロジェクトが行われているのは南栗橋駅の南西約500メートルに位置する、久喜市南栗橋8丁目及びその周辺。最寄りとなる駅西口のロータリーにも同じ掲示があります。

ロータリーは駅東口側にもありますが、現状、駅周辺には駐車場、駐輪場が広がり、建物はあまりない状態。これから開発されていく地域であるというわけです。

建設中のマンション
駅から歩いて3分ほどの場所にある建設中のマンション。プロジェクト建設地までは歩いて7分ほどなので、中間に近い場所に立地していることになります(筆者撮影)

実際、駅とプロジェクトが進んでいる地域の間には現在、地上10階建て、総戸数107戸のマンションの建設が行われており、2023年4月下旬には完成予定。駅から歩いて約3分という恵まれた立地は、開発がこれからというまちならではです。都市部の新築マンションに比べると手頃に感じられる価格も魅力のひとつでしょう。

郊外の街のモデル事業が目標

パークプロムナード
駅から歩いていくと正面に広がるのがこの風景。2本の木の間が敷地内を貫く遊歩道、パークプロムナードで、その右側が戸建街区、左側が商業街区になります(筆者撮影)

まちづくりが行われている現場は、駅からまっすぐ歩いた突き当りにあります。面積は約16.7ヘクタール。埼玉県久喜市、東武鉄道株式会社、トヨタホーム株式会社、イオンリテール株式会社、早稲田大学大学院 環境・エネルギー研究科 小野田弘士研究室が連携してそれぞれの街区を造り、新しい技術の導入などを検討することになっており、郊外の街のモデル事業を目指しているそうです。

整然とした美しい戸建街区

駅と現地
久喜市のホームページ内にある駅と現地、現地内の区画の説明。公園は既存のものですが、その手前に住宅、商業施設を建設、公園も改修していくとされています(南栗橋8丁目周辺地区のまちづくり ~BRIDGE LIFE Platform構想~(久喜市)
各エリアの概要
各エリアの概要(南栗橋8丁目周辺地区のまちづくり ~BRIDGE LIFE Platform構想~ (久喜市)

対象エリアは大きく4つのエリアに分けられています。ひとつは戸建街区。駅から向かうと中央にある遊歩道の右手にあたり、ここには先進技術を取り入れたスマートホームが全172戸建てられる計画です。

パークプロムナード
パークプロムナード。右側が戸建街区。車が入ってこないので安心して歩けます(筆者撮影)

現場はパークプロムナード、ブロッサムプロムナードという2つの遊歩道に隣接しています。パークプロムナードは街区の中央を貫く遊歩道で、ところどころにベンチが用意され、水路沿いにあるブロッサムプロムナードではせせらぎも楽しめます。

ブロッサムプロムナード
ブロッサムプロムナード。右側が戸建街区です(筆者撮影)

ブロッサムプロムナードは広島落という、桜並木のある水路の両側の道で、春には花見を楽しむ散歩ができそうです。

戸建街区
敷地入口にあるポケットパークから戸建街区を見たところ。統一感のある街並みが続いています(筆者撮影)

敷地内には緩く弧を描く街路が造られており、小さな円形の広場、ベンチなども用意されています。公園に隣接しているだけでなく、敷地内にも公園のような雰囲気があるのです。すでに建物が建っているエリアには植栽が豊かに施されており、整然としたきれいな街並みが印象的です。電線が地中化されている点も新しく、計画的に整備されるまちならではでしょう。

ウェルカムプラザ
敷地入口にあるウェルカムプラザにはモデルハウスも用意されており、建物の特徴などについて詳しい説明が受けられます(筆者撮影)

住宅もZEH住宅というエネルギー収支をゼロ以下にする高性能な建物になります。ZEHとはNet Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、省エネ性能が高く、高気密高断熱、太陽光発電などでエネルギーを生み出す住宅のこと。光熱費が削減でき、外の暑さ寒さに影響されにくい快適な生活が送れるとされており、光熱費高騰の現在、気になる人も多いのではないでしょうか。

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ドッグランもある商業街区

イオンスタイル南栗橋
すでに開業しているイオンスタイル南栗橋。戸建街区からは建物裏手に通じる通路もできていました(筆者撮影)

戸建街区に隣接して商業街区があり、ここにはイオンスタイル南栗橋が2022年5月に開業しています。同店はフードマーケット館とヘルス&ウエルネス館の2棟からなっており、食料品以外に生活用品、化粧品やペットフードなど生活に必要な品がそろいます。美容室やクリーニング店も入っています。

ドッグラン
商業街区内のドッグラン。戸建てに住むならペットを、と考えている家庭には楽しみな施設かもしれません(筆者撮影)

おもしろいのは敷地内にドッグランがあること。利用には一定の要件はあるものの、無料で利用できるのはうれしいところ。ペットを介して地元にコミュニティーが生まれていくかもしれません。

道を挟んでスーパー
商業街区と隣り合ってドラッグストア、道を挟んでスーパーもありました(筆者撮影)

また、道路を挟んだところには地元スーパーがあり、イオンスタイルの敷地並びにはドラッグストアもあるので、生活に不便は感じないはずです。

公園は今後改修予定

南栗橋市スポーツ広場
南栗橋近隣公園から南栗橋市スポーツ広場を見たところ。野球の練習が行われていました(筆者撮影)

戸建街区、商業街区の南西側にはブロッサムプロムナードを挟んで公園があります。敷地内の遊歩道と公園は久喜市によって、2023年以降改修が行われる予定になっています。現在は半分が野球場のある南栗橋スポーツ広場、残りが芝生、梅林、テニスコートなどがある南栗橋近隣公園となっています。

散策
健康を考えると散策の楽しい場所が身近にあるのはありがたいところ。公園内には梅林などもありました(筆者撮影)

これらの公園、遊歩道は現状でも広々としていて気持ちよく、子どもを連れて遊んでいる家族、犬と散歩をしている人たち、練習をしている野球少年たちを見かけました。今後、南栗橋近隣公園は気軽に集まり交流できる場所として、また、ピクニックもできる場として改修されていく予定。より使いやすくなることを期待したいものです。

保育園、老人ホームに今後医療モールの予定も

南栗橋保育園
手前が南栗橋保育園、その先に見えているのが介護付き有料老人ホーム。今後、医療モールが建設される予定があります(筆者撮影)

戸建街区の北側には生活利便街区と名付けられたエリアもあります。ここはさまざまなライフステージの人たちの活動を支援する施設を配する一画とされており、現在は南栗橋保育園、介護付き有料老人ホームが建てられています。今後は医療モールが予定されているとのことです。

もうひとつ、敷地内でこれから予定されているのは自動配送ロボットの実証実験、地域住民向けのアプリ、太陽光発電、小型水力発電など。さまざまな次世代技術を取りいれたまちを模索していることから、久喜市はこのプロジェクトで埼玉県が行っている「埼玉版スーパー・シティプロジェクト」にエントリーしています。

埼玉版スーパー・シティプロジェクト
埼玉版スーパー・シティプロジェクトに参画している自治体を図化したもの。埼玉県としては最終的には全市町の参加を考えているようです(埼玉版スーパー・シティプロジェクトについて(埼玉県)

同プロジェクトはこれからの都市に求められる「コンパクト」「スマート」「レジリエント」の3つの要素を併せ持つ、持続可能なまちづくりに取り組もうというもの。ちょっと脱線しますが、埼玉県内では29市町が参加しており、こうした取り組みがあるかどうかも転居先を検討する際に参考にしても良いのではないかと思います。

2023年3月には特急停車駅に

そして、今後という意味ではもうひとつ、大きな変化が予定されています。それが2023年3月のダイヤ改正で南栗橋駅に東武鉄道の特急列車が停車するようになる点。朝の時間帯で上り3本、夕方時間帯で下り6本が停車することになっており、これを利用すれば確実かつ快適に座れるようになります。Wi-Fi、コンセントの付いた車両に座れるなら、通勤時間も無駄にはならないというものです。

また、これに対し、久喜市では市外からの移住者を対象とした特急券の購入補助制度の創設を検討しているそうで、そうなれば安価で快適な通勤が実現することになります。

現地
現地には小さな子どもを抱いた夫婦などが見学に訪れていました(筆者撮影)

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現時点ではいささか寂しく見える駅前とその周辺ですが、今後、住宅が完成、人口が増えればそれに応じて商業施設なども増えてくるはず。自然の多い環境でのんびりした暮らしを考えている人なら、検討してみても良い場所かもしれません。

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