政府では以前から、住宅の窓の改修や天井・床・壁の断熱改修などを実施した場合の減税制度を用意していますが、省エネ化を加速するために補助金制度を拡充しました。今回は、2023年に利用できるリフォームの補助金について紹介していきます。
2023年は3省が連携して3つの補助金を用意
政府は、2020年10月に2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。そのため、政府はあらゆる場面で脱炭素の政策を採っていますが、住宅分野でも脱炭素化、つまり省エネ化に力を入れています。
住宅の中でも新築については、住宅に求める省エネ基準を引き上げるといった規制をかけることができますが、既存の住宅については、住宅の所有者に省エネ化を促すという形になります。そこで政府は、さまざまな優遇制度を用意して、省エネリフォームを実施した人に特典を与えるようしています。
縦割りと言われる省庁ですが、2023年は経済産業省、環境省、国土交通省の3省でトータル2,800億円の予算を確保し、3省で連携してワンストップで申請を受け付けたり手続きなどを一部簡略化したりする体制を取っています。具体的には、以下の画像のような補助金が用意されました。
いずれの場合も、リフォーム工事を行った事業者が補助金の申請をして、リフォーム工事を発注した住宅の所有者は工事事業者から補助額を還元される形になります。また、補助金の申請が予算枠に達した場合は申請ができなくなりますので、段取り良く進められるように注意しましょう。
それでは、それぞれの補助金制度について詳しく説明していきます。
窓の改修で最大200万円の補助!?「先進的窓リノベ事業」
最も補助金の上限額が大きいのが、「先進的窓リノベ事業」です。内窓を設置するか、外窓やガラスを断熱性の高いものに交換するかした場合、リフォーム工事の内容に応じた所定の補助額の合計金額について1戸当たり200万円を上限に還元する事業です。
補助金の適用を受けるには、住宅省エネ支援事業者に登録した事業者に工事請負契約書を交わしたうえでリフォーム工事を発注し、2023年12月31日までに工事が完了することなどが要件となります。
窓は住宅のなかでも熱が出入りしやすい部分です。資源エネルギー庁のサイトによると、冬の暖房時に室内から逃げ出す熱の約6割が窓などの開口部からだといいます。窓の省エネ性を高めることは、外気の寒暖の影響を受けにくくするだけでなく、冬の結露の抑制などの効果もあります。住みながら工事ができますし、工事期間も数日で済むことが多いので、気軽にリフォームに取り組めるのもお勧めしたいポイントです。
すべての窓をグレードの高いものに改修すれば、省エネ性は格段に高まります。1戸当たり200万円までの補助金をフルに活用して、2023年に窓の省エネ化を検討してはどうでしょう。なお、補助額の合計が5万円未満の場合は申請ができません。
省エネ効率の高い給湯器に補助金、「給湯省エネ事業」
住宅の省エネ性を高めるには、住宅の天井や床、壁を魔法瓶のように断熱材ですっぽり覆い、窓から出入りする熱を抑制することが求められます。加えて、エネルギーを使わない設備を使うことも有効です。特に給湯器は、エネルギーを多く使う設備なので、省エネ効率の高い給湯器を設置することが省エネ化に役立ちます。
新築住宅に⾼効率給湯器を設置したり、既存の住宅で⾼効率給湯器に交換したりした場合に、1台当たり5万円、または15万円の補助金が交付されるのが「給湯省エネ事業」です。
この事業の適用を受けるには、住宅省エネ支援事業者に登録した事業者と2023年12月31日までに工事請負契約を交わし、対象機器を導入するなどの要件があります。
子育て・若者夫婦世帯なら最大60万円を補助、「こどもエコすまい支援事業」
「こどもエコすまい支援事業」は、子育て世帯あるいは若者夫婦世帯が新築のZEH住宅を取得した場合に100万円の補助金が交付されますが、ここでは省エネリフォームの補助金について紹介します。
対象となるリフォーム工事と補助額は、次のようなものです。なお、適用を受けるには、住宅省エネ支援事業者に登録した事業者と工事請負契約を交わした後で工事に着手し、2023年12月31日までに工事が完了するなどの要件があります。
上限補助額は、1戸当たり30万円ですが、次の場合は上限額が上乗せされます。
・安心R住宅を購入※1し、リフォームを行う※2場合:上限45万円/戸
・子育て世帯・若者夫婦世帯※3がリフォームを行う場合:上限45万円/戸
・子育て世帯・若者夫婦世帯※3が既存住宅を購入※1し、リフォームを行う※2場合:上限60万円/戸
原則として1申請当たりの①~⑧の合計補助額が5万円未満の場合は申請できません。ただし、「先進的窓リノベ事業」や「給湯省エネ事業」で申請が受理される場合は例外措置があります。
こどもエコすまい支援事業は、いずれかの省エネ改修に加え、さまざまな改修に対しても補助が出るものなので、「先進的窓リノベ事業」や「給湯省エネ事業」と組み合わせて上手に活用することができます。
補助金を申請する事業者が大きなカギに
これらの補助金を申請するのは、リフォーム工事を依頼する事業者になります。一般の人では細かい適用要件を理解するのが難しいからでしょう。逆に言えば、事業者がそれぞれの補助事業の詳細を理解し、効率よく段取りをすることが求められます。
注意したいのは、補助事業について理解している住宅省エネ支援事業者のみ申請ができることです。補助金を活用したいなら、登録事業者かどうかを事前に確認し、どういったリフォームなら補助金の対象となるか細かく相談するとよいでしょう。
一方で、快適に暮らすためにリフォームをするのであって、補助金を多くもらうためにリフォームするわけではありません。補助金の対象になるからと、不必要なリフォームまで行うのは本末転倒です。費用面で断念していたリフォームが補助金によって実現できるというのが、理想的な活用の仕方だと思います。
○3省連携の3つの補助金制度について詳しくは「住宅省エネ2023キャンペーン」を参照
執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)