天然ガスの輸入コスト高騰を受け、各電力会社やガス会社はガス代の値上げを相次いで発表しています。エネルギーは生活する上で必要なため、値上げされても使わざるを得ません。昨今の値上げがどのように影響するのか、今後どうなるのか気になる人も多いでしょう。そこでこの記事では、ガス代の値上がりについて特集します。
大手ガス会社各社は2023年1月からのガス料金を値上げ
東京ガス、大阪ガス、西部ガスの都市ガス3社では、2023年1月分の料金を値上げすると発表しました。2022年12月にも東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、西部ガスの4社が値上げしているため、2022年から値上げが続いている状況です。
原因として円安や供給量の激減により、液化天然ガスの価格が上昇している点があげられます。これはすぐに解消する問題とはいえず、今後もガス代が下がらない、さらに価格が上昇するといったこともあるでしょう。
大手4社の値上げ状況
次に、東京ガス、大阪ガス、西部ガス、東邦ガスの大手ガス会社4社の値上げ状況についてくわしく解説します。
東京ガス
東京ガスでは、2022年10月分から段階的なガス料金の引き上げを発表し、次のように値上げを行っています。
東京ガスが公表している標準家庭の使用量で考えると、2022年10月分は8月分に比べて約290円の値上がりとなりました。2023年1月使用分から値下げが行われるのは、政府の負担軽減策によりガス料金の補助がでるためです。
※参考
東京ガス・ニュース
NHK「東京ガス 10月分からガス料金段階的引き上げ 首都圏約840万件」
大阪ガス
2022年9月、大阪ガスでは2022年12月から2023年5月までの半年間で、段階的にガス料金を引き上げると発表しました。大阪ガスがガス料金の見直しを行うのは2019年3月分以来、3年半ぶりのことです。
平均的な家庭でいうと、2022年12月、2023年1月と約300円ずつガス代が上がっていく見込みです。ただし、やはり2023年2月には政府からの補助により、一般家庭の使用量でおよそ19円の値下がりとなります。
大阪ガスの値上げ額の推移は以下のとおりです。
※参考
NHK
「大阪ガス 燃料の調整額 12月分から段階的に上限引き上げ」
「大阪ガス 12月分のガス料金 300円以上値上がり」
「大阪ガス来年1月分料金 前月比300円超値上がりへ」
大阪ガス
「各月の原料費調整額一覧(2015年度以降)」
西部ガス
西部ガスでは、2022年9月分から料金を見直しました。また、プランによって上限価格を設けていましたが、その設定も廃止しました。福岡・北九州地区の値上げ額の推移は以下のとおりです。
※参考
讀賣新聞オンライン「西部ガスの電気、9月分から値上げへ 燃料費高騰で上限廃止」
西部ガスホールディングス「プレスリリース2022年度」
東邦ガス
東邦ガスは2023年1月に、4月から燃料価格の変動をガス料金に反映させる燃料費調整制度の上限を撤廃すると発表しています。これにより、ガス料金の大幅な引き上げも可能となりました。ただ、経過措置として8月までは、料金に反映させるのは上限超過分の半額までとしています。
東邦ガスも、2022月12月時点で値上げが連続している状態です。ガス料金値上げの推移は以下のとおりです。
※参考
NHK
「ガス料金も値上げに 東邦ガスが原料価格転嫁の上限廃止へ」
「東邦ガス 11月の料金値上げ LNG↑で15か月連続値上げ」
東邦ガス「プレスリリース2022年度」
大手ガス会社がガス料金を値上げした理由
なぜ各ガス会社は、ガス料金の値上げを続けているのでしょうか。その理由について解説します。
ロシアとウクライナの不安定な情勢
日本では、LNG(液化天然ガス)の供給はほぼ輸入に頼っています。そのため国内のガス料金は、海外の情勢による液化天然ガスの輸入価格に左右されやすい状況です。
液化天然ガスの輸出国として知られ、日本の主な輸入先の1つであるロシアは、現在ウクライナと戦争状態です。不安定な情勢のなか、ロシアでは燃料の輸出を制限しており、液化天然ガスの価格の高騰につながっています。
続く円安
先ほど説明したとおり、日本では液化天然ガスのほとんどを海外から輸入しています。そのため、円安になると日本が支払うコストも増大します。
2022年には歴史的な円安が起こり、一時は1ドル151円台に下がりました。その後は130円台まで落ち着いてきましたが、高水準であることに変わりありません。ガス会社としても円安によるコスト増により、経営が厳しくなっています。
使用状況の変化によるガス代高騰にも注意
ガスの単価や基本料金による値上がりについては、消費者はどうすることもできません。しかし、ガスの使用量が増えたことにより、支払うガス代がかさむこともあります。一般家庭で起こりやすい、ガス代高騰の理由について解説します。
ガス機器の導入や買い替え
ガスファンヒーターやガスストーブなど、ガスを多く使用する機器を導入すると、急激にガス代が上がる可能性があります。
また、給湯器のサイズを大きくすると、一度に多くのお湯を沸かせるようになりますが、その分使用するガス量も増加します。そのため、ガスの使用効率がよい最新機器に変えたにもかかわらず、以前よりもガス代が上がるということもあるでしょう。
厳冬によるガス代向上
お湯をガスで沸かす場合、水温と設定温度の差が大きいほど必要なガスの量も増えます。そのため、同じ設定温度でも水温が高い夏場より、低い冬場のほうが、より多くのガスを使用することになります。
前年の冬と同じように使用しているのに、ガス使用量が多いと感じるときは、厳冬で水温が例年より低いのかもしれません。ガス代節約のためには、お湯の設定温度を下げるなど、水温と設定温度の差を小さくしてみるとよいでしょう。
まとめ
2022年9~12月ごろから、各ガス会社はガス料金の値上げを続けています。2023年1月使用分からは政府の補助があり、値下げが行われていますが、補助が終了すれば再度値上げが起こる可能性もあるでしょう。
国内で使用する液化天然ガスのほとんどを輸入に頼っている日本では、海外の情勢やドル円相場にガス料金が左右されやすい状況です。ガス代の値上がりで支払いが大変になるときには、お湯の温度設定を下げるなど、各家庭でできる対策を行いましょう。