【本当に住みやすい街大賞2023】第4位 保谷:都内でありながら自然豊かな環境で「子どもがど真ん中のまちづくり」を~西東京市 池澤隆史市長に聞く~

2022年12月15日に開催された「ARUHI presents 本当に住みやすい街大賞2023」。1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の中で「本当に住みやすい街」TOP10を発表するなか、東京都西東京市の保谷駅(西武池袋線)が第4位にランクインしました。そこで、西東京市の池澤隆史市長に、受賞した思いや保谷の魅力、行政としての取り組みなどについてお話を聞きました。

西東京市長 池澤 隆史(いけざわ たかし)さん
1959年生まれ。東京都西東京市出身。同志社大学法学部卒業後、1982年に旧保谷市役所へ入庁。西東京市教育部長などを経て、2013年に西東京市副市長に就任。2021年2月から現職。

※撮影時のみマスクを外しています

2年連続で西東京市がランクイン。市民による反響の大きさに喜び

池澤市長
「子どもの頃、保谷駅の北側は一面野原でほとんど何もなく、子どもにとっては絶好の遊び場でした。現在は再開発によりロータリーと都市計画道路、地元の方から土地の寄贈を受けたあらやしき公園などを整備し、住宅地が形成されています」

―まずは、今回の受賞に対する率直な感想をお聞かせください。

前回のランキングで西武池袋線の「ひばりが丘」がシニア編の1位にランクインしたのに続き、今回は「保谷」が総合で4位。西東京市として大変嬉しく思っています。市内で「保谷駅、入りましたね!」と何度も声をかけてもらいました。保谷駅の商店街の皆さんからは「若い子育て世代が増えたと感じる」との声も。西東京市では、宅地開発により戸建て住宅に住む若い世代が増えていることを、私も地元住民のひとりとして感じています。

ICT教育の推進や学校環境の改善、保護者の負担軽減も含めた子育て支援を

池澤市長
「タブレット端末を導入した数ヶ月後に視察したところ、小学生も中学生も、私たち大人よりよっぽど使いこなしていました。むしろ先生たちの方が、環境の変化に苦労したかもしれません」と池澤市長

―増加する若い世代が「住みやすい街」となるために、行政としての取り組みは?

これまで「子どもにやさしいまち」を政策として実行してきたのですが、私が市長になったタイミングで、これまでの政策を引き継ぎつつ「子どもがど真ん中のまちづくり」という政策に発展させました。具体的には、保育施設の整備を積極的に行って受け入れ態勢を整え、学校教育環境の向上に努めています。

―学校教育環境の向上とは?

市立小中学校の児童生徒全員に、タブレット端末を1人1台配布。学校にいても家庭にいても学校教育ができる環境を整えました。導入したのが2021年4月なのですが、偶然にも新型コロナウイルス感染症による学校休業が相次いだ時期と重なりました。1ヶ月以上の休業となっても、家でタブレット端末を使って学校と繋ぐことで、学習を継続することができました。
メリットは、家にいながら先生と子どもたちがやりとりをできることだけではありません。学校の先生は1人が教え、もう1人が画面で子どもたちの表情をタブレット越しにチェックすることができます。付いていくのが難しそうな生徒を見つけたらフォローする体制を取れるのも、この学習方法の特徴です。

環境面では、体育館に全校空調を設置。子どもたちにとってはもちろん、「地域に開かれた学校」として地域の集まりや災害時の避難場所などにも使用する場所のため、地域のみなさんにも好評です。要望が多かったトイレも全面リニューアルしてきれいになりました。
また、学校給食は食材費などの高騰が課題でしたが、補助金を出すことで給食費を上げず、保護者に負担がかからないようにしつつ、給食の質と量も維持しています。2023年4月からは、子どもの医療費助成の対象を現在の中学生から高校生までに拡大。医療費は無料で、通院費は受診1 回あたり200 円で受診できます。

―西東京市には高齢者も多く住んでいますが、シニア層に対する取り組みは?

西東京市では「フレイル予防」に力を入れています。フレイルとは、健康な状態と介護状態の間、虚弱状態のこと。フレイルを早期に予防することで要介護状態になることを防ぎ、健康な状態の維持を目指す取り組みです。東京大学高齢社会総合研究機構と「連携協力に関する協定」を締結し、フレイル予防プログラムを実施しています。理学療法士など専門職の「フレイルトレーナー」が、市民が担う「フレイルサポーター」を指導し、高齢者のフレイルチェックを実施。市民が市民を支える構造を作ったこと、地域包括支援センターなどの職員が地域を巡り、高齢者に対し、積極的に声かけをする体制が奏功し、東京大学サイドからフレイル予防では「西東京市は東の横綱」と言われるほどに効果を発揮しています。フレイル予防に最も効果的なのは「社会参加」です。人と話し、様々な活動をすることにより、心も体も健康になるサポートを継続していきます。

心も、体も、まちも健康な西東京市を目指して

池澤市長
「西東京市へ転入した人に印象を問うと『緑が多い』『農地がある』『ホッとする』という声が多く、自然や農地を守っていきたい」と池澤市長

―今後、行政として取り組みたいことは?

西東京市は「健康都市連合」に加盟し、心も体もまちも健康な「健康応援都市」を目指しています。「まちの健康」には、都市基盤や環境、教育などすべての分野が当てはまります。例えば、田無駅南口は一部道路が狭く、駅前広場もありません。災害発生時に緊急車両が入れない問題を解決すべく、駅前広場の整備に向けて準備を進めています。このような問題を解決し、環境を改善してまちを健康にしていこうと尽力しています。

―西東京市で今一番の課題は?

力を入れている課題のひとつが、2022年2月に宣言した「ゼロカーボンシティ」への取り組みです。2050年に二酸化炭素(温室効果ガス)排出量を実質ゼロにする、脱炭素社会の実現を目指しています。その一環で、2022年には「第1回にしとうきょう環境アワード」の表彰式を開催。市民の方を表彰しました。宅地化されつつある生産緑地に関しては、都市農業を維持するための取り組みを進めていきます。高齢化により「農業の継続が難しい」「後継者がいない」といった問題を抱える農家を守るため、市民へ農地を貸し出す市民農園や、農家の人と一緒に農業を行う取り組みも活発です。農地を借り、農家のサポートを受けながら育てた作物を収穫。土と農作業に触れ合い、自分で育てた野菜や果物を食べる経験ができるとあって、以前から住んでいる人にも、高齢者にも、引っ越してきたばかりの子育て世代にも好評です。

西東京市は農業が盛んで多品種ですが、中でも甘いキャベツや保谷梨は代表的な農産物です。キャベツにちなんだ市の農産物キャラクター「めぐみちゃん」も人気。地産地消を推進し、農業を盛り上げていくため、小中学校の子どもたちが西東京市で獲れる農産物を使用したメニューを考え、市内の飲食店で販売するメニューを作って販売。また、学校給食でも飲食店が監修したメニューを提供する「めぐみちゃんメニュー事業」も実施しています。

自然豊かで農業体験もできる西東京市で、のびのびと子育てを

池澤市長
胸元のポケットチーフは、藍の生葉で染めたもの

―市民に人気のスポットを教えてください

西東京市で最大規模の公園「いこいの森公園」が、子どもが自由に遊べるスポットして人気です。夏には水遊びができる噴水やボール広場、スケート広場などがあり、手ぶらでBBQもできます。ちなみに、西東京市のマスコットキャラクター「いこいーな」は、西東京市のアニメ制作会社、シンエイ動画がデザインした、いこいの森公園の妖精。帽子に咲いているのは、園内にあるハンカチの木の花です。

―市長おすすめのスポットはありますか?

保谷駅北側にある、下保谷の特別緑地ですね。農家を囲うように高木を植え、防風・防塵などの役割を果たした「屋敷林」が当時のまま保全されています。一般開放日には、昔遊びや藍染め体験など、西東京市市民ボランティア、近隣の大学と西東京市が連携し、保谷地域の歴史や文化に触れることができるイベントを開催。年間を通して多くの人々が訪れます。私もイベントがあれば必ず足を運んでいる、お気に入りの場所です。
近所の小学生と一緒に藍を育てる取り組みも実施。藍の種撒きから栽培、収穫、乾燥して最後は藍染と、1年を通した体験が子どもたちにとって、大きな学びとなっています。

―最後に、引っ越し先を探している人や検討中の人に向けてメッセージをお願いします

2001年に田無市と保谷市が合併し、西東京市が誕生して22年になります。通勤・通学に便利な立地と静かで安心して暮らせる住環境で住みやすく、まだまだこれから発展していくまちです。これから引っ越しを考えているみなさんには是非、西東京市を選んでいただきたいですし、一緒にまちづくりを進めていただきたいですね。お待ちしています!

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