「団地」と聞くと、郊外の広い土地に統一された集合住宅が建ち並ぶ、おなじみの光景を思い浮かべるかもしれません。しかし、団地とはいったいどういうものか、詳しくは知らないという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、団地とはどのようなものなのか解説するとともに、マンションやアパートとの違いについても紹介していきます。
団地とは
多くの人が共通して持つイメージはありつつ、言葉の意味まで理解している人は少ないかもしれない「団地」とは、本来どのようなものを指すのでしょうか。
団地の定義
「団地」という言葉は、「一団の土地」という不動産用語が由来です。
一体で使われる土地のことを指すため、集団的に開発された区域であれば、住宅団地に限らず「団地」と呼ばれます。たとえば、工場が集団的に開発された区域は工業団地、倉庫が集団的に開発された区域は流通団地といった具合です。ただ、一般的には団地=住宅団地を指す場合が多くなっています。
総務省統計局が実施する「住宅・土地統計調査」では、同一の敷地内に2棟以上の共同住宅が集団的(おおむね50戸以上)、かつ計画的に建てられているものを「団地型」と定義しています。
出典:平成10年住宅・土地統計調査 用語の解説 ≪ 住宅 ≫
住宅公団の歴史
日本では1960〜70年代の高度経済成長期における人口増加への対応として、日本住宅公団や各地方公共団体の住宅供給公社によって、全国各地で多くの住宅団地が開発されました。
特に住宅公団が果たした役割は大きく、団地といえば公団による集合住宅群というイメージが根強く残っています。
そんな住宅公団の前身となったのが、関東大震災の復興計画の一環として1924年に設立された財団法人「同潤会」です。同潤会は、災害に強い不燃造の集合住宅(いわゆる「同潤会アパート」)を東京・横浜に次々と建設しました。
同潤会が担っていた業務は1941年に発足した「住宅営団」に引き継がれ、同潤会は解散。GHQによって戦後閉鎖された住宅営団を参考として、1955年に新たに設立されたのが「日本住宅公団」です。
日本住宅公団はその後「住宅・都市整備公団」「都市基盤整備公団」を経て、現在は「都市再生機構(UR)」となっています。
高齢化が社会問題に
高度経済成長期に集中して建設された団地では、入居者の多くが高齢者となり、全国的に高齢化の進行が問題になっています。
住民のいなくなった住戸に新たな入居者がつかず空室が増えているほか、子どもの減少によりエリア内に設置された学校が廃校になったり、センターに設けられた商店街がシャッター街化したりと、少子高齢化によるさまざまな問題が顕在化しています。
こうしたことから高度経済成長期に建設された多くの団地は、少子高齢化の進む日本の縮図ともいわれているのです。
数々の課題を解決するため、団地への子育て世帯の呼び込みやコミュニティの活性化といった取り組みが各地で行われています。
マンション・アパートとは
共同住宅としては団地以外にも、マンションやアパートなどがあります。団地・マンション・アパートにはどのような違いがあるのか見ていきましょう。
マンション
マンションとアパートについては、両者を区別する法律的な定義はありません。登記簿上も特に明確な区分はされておらず、あくまでも呼び方の違いでしかないというのが実情です。
一般的には、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリート造で建てられた3階建以上の共同住宅のことを「マンション」と呼ぶ場合が多くなっています。これを定義とするならば、大半の団地もマンションの一種と考えられるでしょう。
アパート
マンションとアパートは法律上の区別がないと紹介しましたが、一般的には、木造または軽量鉄骨・重量鉄骨造で建てられた2階建て以下の共同住宅をアパートと呼びます。
同じ共同住宅でもマンションのほうがアパートより大規模で、家賃もマンションのほうがアパートに比べて高くなる傾向にあります。また、アパートには通常マンションのような共用スペースは設けられていません。
団地・マンション・アパートの特徴
いずれも共同住宅である団地・マンション・アパートについて、それぞれの特徴を紹介していきます。
団地のメリット・デメリット
URや地方公共団体の住宅供給公社が運営する一般的な団地は、同じエリアのマンションなどに比べて家賃が安い傾向にあります。礼金・更新料・仲介手数料といった諸費用もかからないため、全体的にコストを抑えられるのがメリットです。
また、古くからの住民も多いため、住民同士のコミュニティがしっかりしているのも利点といえるでしょう。
一方、築年数が古い団地になるとエレベーターが付いていない物件も多く、4階や5階であっても階段で上り下りしなければならないのは団地のデメリットといえるでしょう。また、人によっては、コミュニティがわずらわしいと感じることもあるかもしれません。
マンションのメリット・デメリット
続いて、マンションのメリット・デメリットを見ていきましょう。
マンションは、一般的にロビーや宅配ボックス、ゲストルームなど共用施設が充実している物件が多く、住民であれば誰でも利用できる利便性が魅力です。なかにはエントランスや共用廊下に高級感を持たせたマンションもあります。
オートロックなどセキュリティがしっかりしているほか、防音性も優れており、快適性の高さが大きなメリットといえます。
マンションは施設が充実していて作りが頑丈な分、団地やアパートに比べて家賃が高いのがデメリットです。分譲の場合には、住宅ローン返済以外にも毎月の管理費や大規模修繕積立金の支払いが必要となり、居住にかかるコストは3つのなかで最も大きくなります。
アパートのメリット・デメリット
マンションよりも小規模で共用部も簡素なアパートは、比較的家賃が安いのが魅力です。学生街や郊外などを中心に物件数が多く、幅広い選択肢からチョイスできるのも、アパートのメリットといえるでしょう。
一方、アパートは木造や鉄骨造であるため、鉄筋造や鉄骨鉄筋コンクリート造の団地・マンションに比べ、遮音性・防音性・耐震性・耐火性などが劣る点はデメリットです。
また、密閉性が低い物件も多いため、冷暖房効率があまり良くない点も要注意です。部屋の規模に比べて、空調にかかる電気代が高くなってしまう可能性があります。
まとめ
同じ共同住宅である団地・マンション・アパートですが、それぞれに異なるメリット・デメリットがあります。
たとえば、3つのなかで最も家賃が高い傾向にあるマンションは、その分共用部が充実している、作りがしっかりしているといったメリットがあり、コスト相応の快適性が担保されています。
団地は、家賃や購入費用が比較的安いのが大きな魅力です。今後家選びをする際には、団地も一つの選択肢として検討してみるとよいのではないでしょうか。