給与収入や事業収入等、一定以上の収入を得た場合には、所得税や住民税(市町村民税・道府県民税)が課されます。年末調整や確定申告で話題になることも多い所得税に比べ、住民税にはなじみがない方も多いようです。しかし、確定申告の義務がない方でも、住民税の申告が必要な場合もあります。住民税やその申告について確認しておきましょう。
そもそも住民税とは
個人が納める住民税(個人住民税)には、市町村民税と道府県民税があります※。住民税は私たちが日ごろの生活で利用している施設や学校教育、ごみ処理といった行政サービスの費用に充てる目的で、その地域の個人から徴収される地方税です。個人住民税は、1月1日時点で市町村(道府県)に住所がある方に対して、前年の個人の1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して、翌年度に課税されます。
※東京都の場合は、個人の都民税と区市町村民税をあわせて、一般に「個人住民税」と呼ばれています。
(東京都主税局ホームページ)
住民税の納税はまとめて各市町村に行い、各市町村によって道府県民税が道府県に払い込まれます。
個人住民税には、所得金額※に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。均等割は「『地域社会の会費』的なものであるとして負担を求める個人住民税の性格を反映したもの(総務省 個人住民税)」という位置づけです。
※所得金額…所得金額は、収入金額から必要経費等を引いたもの。個人住民税や所得税の税額は所得金額をもとに計算される。
所得割の税率は、所得に対して一律10%で、前年の1月1日から12月31日までの所得で計算されます。均等割は、個人住民税は通常5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)※と定められています。
※東日本大震災を踏まえ、地方団体が実施する防災費用を確保するため、2014(平成26)年度から2023(令和5)年度までの10年間、市町村民税・道府県民税ともに500円ずつ引き上げられています。(総務省ホームページ「個人住民税」)。また、均等割額が異なる地域もあります。
所得税と住民税は、どう違う?
なじみのある所得税と比較して、住民税についてもう少し詳しく確認してみましょう。
所得税も住民税も、税額計算の基となるのが、個人の1年間の収入であることは共通しており、所得税や所得割を計算する際は、所得金額から所得控除額を引いて、課税対象となる所得金額が求められます。
ただし、住民税には所得税にはない「均等割」があり、さらに、計算の仕方や適用される控除額などにも違い(表2参照)があるため、税額は所得税額とは異なります。
住民税の申告が不要な人
多くの人が支払っている住民税ですが、申告が必要な人は限られています。勤め先で年末調整を受けた方や所得税の確定申告を行った方は、同時に住民税の申告をしたものとみなされるので、あらためて市民税・県民税の申告をする必要はありません。
<住民税の申告が不要な人>
・勤務先で年末調整を受けた人
・所得税の確定申告を行った人
・収入が公的年金のみの人
会社員の方、自営業の方、年金生活者の方の多くは、「住民税の申告は不要」になりそうですね。
ただし、税務署へ所得税の確定申告書を提出しない人で、医療費控除や源泉徴収票に記載のない社会保険料控除などの各種控除を受ける場合は申告が必要になります。
住民税の申告が必要な人
住民税の申告が必要なのは、1月1日現在、その市区町村内に住所のあった人(1月2日以降に転出された人も含む)で、確定申告をしなかった場合などで「住民税算出に必要な収入等の情報が市町村の役場に伝わらない人」です。
収入が一定以下の場合などは確定申告をしなくてもよい(申告不要)とされていますが、収入等の情報がなければ、住民税額が計算できません。また、市町村民税・道府県民税の申告は、国民健康保険税(料)、後期高齢者医療保険料、介護保険料、市営・県営住宅の家賃、保育料などの算定基礎となっているため、収入等の情報が必要です。
したがって、「収入がゼロ」であっても、住民税の申告は必要なのです。
<住民税の申告が必要な人の例>
・公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の人
・1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得以外の所得(配当、不動産、雑所得など)の金額の合計額が20万円以下の人
・2か所以上から給与の支払を受けている人で、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得以外の各種の所得金額との合計額が20万円以下の人
・所得がなかった人(申告がない場合は、国民健康保険加入者の保険料の減額判定及び各種福祉関係の申請手続に影響がでる可能性があります。)
横浜市ホームページ「市民税・県民税の申告について」より
住民税申告は、市区町村役場で。インターネットでも
住民税の申告は、市区町村役場、役場の指定する公民館等で3月15日までに行います。郵送や電子申請サービスが利用できる市町村もあります。
また、申告には、次のような書類が必要です。申告の前にそろえておきましょう。
・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等)
・収入に関する書類、所得の証明書類、帳簿や領収書など(事業者の場合)
・各種控除(社会保険料控除等)に関する書類
このように、確定申告等を行わない方は、住民税の申告が必要になる場合があります。「もしかして、住民税の申告が必要?」と思ったら、各自治体のホームページや窓口で確認し、申告する場合の申告方法や必要書類なども早めに確認しておきましょう。申告期限は3月15日です。