退職した後に再就職をせず、無職のまま年を越した場合は年末調整を受けていません。そのため、確定申告をすることで、その年に払いすぎた分の税金が戻ってくるケースが多く見られます。このことは、退職した後に無職のまま年を越した場合だけに限りません。
今回は、なぜ確定申告をすることで税金が戻ってくるのか、確定申告が必要なケースとはどのようなケースかを解説するとともに、確定申告のやり方についてもお伝えします。
退職後確定申告が必要になるケースとは?
年の途中で退職し、年末までに再就職を行わず、結果として年末調整を受けられなかった場合などは、確定申告を行うことで払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。当てはまる場合は、必ず確定申告を行いましょう。
退職に伴い、退職金を受け取った場合は、勤務先に対して所定の手続きを行っておけば、源泉徴収で課税関係が終了するため、原則として確定申告の必要がありません。そもそも退職金は年末調整の対象ではないからです。
源泉徴収で退職金の課税関係を終了させるためには、退職金の支払を受けるときまでに「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払者に提出することが必要です。この申告書を提出している場合は、源泉徴収だけで所得税および復興特別所得税の課税関係が完了するため、原則として確定申告は不要です。また、退職所得に関しては分離課税の対象になることも覚えておきましょう。
また、年の途中で退職した場合でもその後年内に再就職したケースや、退職の理由が死亡によるものなど、年末調整の対象になった場合は、年末調整にて最終的な税金額が調整されるため、確定申告の必要はありません。
基本的に源泉徴収を受けている給与所得者で、年末調整を行った場合は、確定申告は必要ありません。一定以上の所得がある以下のような場合は確定申告が必要になるため、注意しておきましょう。
具体的には
・公的年金等の収入金額の合計額が400万円超の場合
・副業等で20万円超の雑所得などがある場合
・事業所得や不動産所得などがある場合
などが該当します。
退職金の確定申告をしたほうがいいケースとは?
上でも述べたとおり、退職金は原則として源泉徴収のみで課税関係が完結するため、確定申告の必要はありません。ただし、以下のような場合は、確定申告をすることで払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。
・年の前半で退職し、その後再就職しなかった場合など、退職年の給与所得がその前年に比べて大きく減少している場合
退職前に受け取った給与がその前年に比べて減少している場合は、所得税が本来よりも多く計算されている可能性があります。なぜなら、源泉徴収額は前年の給与を基に計算され、前年とほぼ同額の源泉徴収額になるからです。そうなると、特に年の前半で退職した場合は、その年の給与収入が当初の見込みよりも大きく下がります。このようなケースだと、源泉徴収で税金を納めすぎていることになりますので、確定申告をすることで、納め過ぎた税金の還付を受けられます。
また、社会保険料控除や生命保険料控除、医療費控除など、各種控除を受けられる場合も、確定申告をすることで、所得税の一部が還付されます。
ただし、勤続年数や退職金の額によっては、退職所得控除以下でそもそも税金がかかっていないケースも考えられます。まずは自分の退職金の源泉徴収票を確認し、源泉徴収されている税金額を確認してみましょう。
なぜ確定申告をすると税金が戻ってくるのか?
通常、退職までは毎月の給与から源泉徴収によって多めの税金を納めています。そのため、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除を適用することで課税所得金額が少なくなり、結果として払いすぎた税金が戻ってくるケースが多く見られます。
退職後に再就職しなかった方や退職所得がある方以外でも、総合課税の配当所得や雑所得がある方で、年間の所得が一定額以下になった場合や、給与所得者で所得控除や税額控除が受けられる場合、さらに、所得が公的年金等に係る雑所得のみの方で医療費控除や生命保険料控除などの各種控除を受けられる場合などは、確定申告をすることで納め過ぎた税金が戻ってきます。
ただし、いずれの場合も確定申告を行わなければ、納め過ぎた税金は戻ってきません。
該当する場合は、必ず確定申告を行うようにしましょう。
退職後の確定申告のやり方は?
ここでは退職後の確定申告(還付申告)のやり方について解説します。
使用する確定申告書は、白色になります。国税局のホームページに用意されている「確定申告書等作成コーナー」を利用すると便利です。入力の際には源泉徴収票に記載されている数値が必要ですので、あらかじめ準備しておきましょう。
還付申告のみであれば、指示にしたがって入力するだけですので、そこまで難しい作業ではありません。
ただ、どうしても入力および作成方法がわからない場合は、税務署にて相談を受け付けていますので、赴いてやり方を教えてもらいましょう。相談については事前に予約をしておいたほうが、待ち時間も少なくスムーズに完了します。
還付申告ができるのは、退職した翌年以降5年以内です。年明けの1月から申告を受け付けていますし、仮に翌年に確定申告を行うのを忘れていたとしても、翌年以降に5年前の分までさかのぼって申告可能です。
退職後の確定申告に必要な書類は?
退職後の確定申告に必要な書類は以下のとおりです。
・確定申告書:2022年(2021年申告分)までは確定申告書AとBに分かれていましたが、2023年(2022年申告分)より確定申告書Bと同等の新様式に統一されます。
・源泉徴収票
・所得控除を受ける場合は各種控除証明書、寄附金受領書など
・マイナンバーカード(表と裏両面の写し。マイナンバーカードを持っていない人は通知カードと本人確認書類が必要。)
・還付金の振込先として指定する本人名義の口座番号がわかるもの
確定申告書等作成コーナーで確定申告書を作成すると、持参物のチェック表も印刷されますので、活用しましょう。
また、控除に関する証明書は申告書類に貼付して提出する必要がありますので、もれのないように準備し、提出までに貼付しておきましょう。もし貼付していなくても、税務署の受付窓口で、ホチキスで留めるなどの対応を行ってもらえます。
まとめ
退職してその年のうちに再就職をしなかった場合は、確定申告をすることで、払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。
ただし、退職後に再就職をし、再就職先で年末まで勤務した場合や、死亡退職の場合など、年末調整の対象となった場合は、特に確定申告の必要はありません。
また退職後も一定額以上の年金収入や副業などの収入のほか、事業所得や不動産所得がある場合は、必ず確定申告をしなければなりません。
該当する場合は、忘れずに確定申告を行うようにしてください。